木村朗国際関係論研究室
コラム・バックナンバー

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No.22

 

TITLE:「米海軍イージス巡洋艦モービルベイの鹿児島港への寄港に断固抗議す
る!」
DATE:29 Oct 1999 19:38:52

    米海軍のイージス巡洋艦「モービルベイ」が昨日(28日)早朝に鹿児島市谷山地区の鹿児島港に入港した。わたしは、「かごしま平和ネットワーク」の仲間とともに抗議行動に参加してきた。今回は、その報告をかねて現在の状況や背景について考えてみたい。

    イージス巡洋艦「モービルベイ」は、米海軍横須賀基地を母港とする米空母「キティーホーク」の随伴艦で、全長72・9メートル、幅16・8メートル、乗組員358人、9700トン、核巡航ミサイルも搭載可能な艦船だ。1987年の就役で、91年に勃発した湾岸戦争に参戦したという戦歴を持っている。今回は、東ティモールに派遣されている多国籍軍に対する広報支援活動を終えてタイから横須賀基地にもどる途中の寄港で、入港目的はこれま
で通りの「乗組員の休養と親善訪問」であるという。

    県港湾課によれば、20日に鹿児島港の使用許可申請が出され、外務省に核搭載の有無を問い合わせたところ、「(核持込に必要な)事前協議がなかった」との回答で入港を許可したということである(『毎日新聞』10月23日)。

    米軍艦船の鹿児島港への入港は、1989年以降、今回で延べ21隻目、昨年9月のフリゲート艦「ヴァンデ・グリフト」および11月の揚陸輸送艦「ダビューク」以来のことである。また、新ガイドライン関連3法の成立(5月)および周辺事態法制定(8月)後初めての入港という意味でも注目される。

     ここ最近10年間で米軍艦船による鹿児島港への寄港が、九州・沖縄のなかで最も多く、全国でも3番目である。また同様に、九州・沖縄の民間空港のなかで、鹿児島県の奄美空港が、長崎空港、福岡空港についで米軍機の寄港回数が3番目に多く、それがそのまま全国での順位と重なっている。こうした事実は何を物語っているのであろうか。それは、対ソ抑止(「日本有事」、「国土防衛型」)から地域紛争対処型(「周辺有事」、「海外出
動型」)への冷戦後の日米安保体制の見直し「安保再定義」・「新ガイドライン」など)にともない、軍事的重点が東日本から西日本、とりわけ九州・沖縄地域に移動したことを明らかに物語っている。つまり、新しい日米安保体制のもとで、九州・沖縄は「最前線基地化」しつつあるということである。

     こうした文脈から、米軍艦船による鹿児島港への相次ぐ寄港が、「鹿児島港を“準軍港化”するための地ならし」であるという構図が浮かび上がってくるのである。米海軍が鹿児島港を重視する理由としては、@ 沖縄と佐世保、岩国、横須賀の各米軍基地を結ぶ中継地点にあること、A 米韓あるいは日米合同訓練を行う朝鮮半島沖や四国沖に近接していること(実際、今回のイージス巡洋艦「モービルベイ」入港に関しては、25日から始まっている米韓合同訓練『フォール・イーグル‘99』と連動したものであるという見方も出されている『西日本新聞』10月23日)、B 商業船・漁船が少なく入港がしやすいこと、C 県政および県民性が保守的で反対・抗議行動が比較的弱いこと、D 50万都市である鹿児島市中心部からあまり遠くなくて利便性が高いことなどが指摘できる。

     以上述べてきたような米海軍による鹿児島港の軍事利用の動きに、平和団体・市民の側はどのようにこれまで対応してきたのであろうか。イージス巡洋艦「モービルベイ」入港以前の対応としては、原水爆禁止県協議会のメンバーが県庁を22日に訪れ、「非核証明の提出がない以上、米軍艦船の入港を認めるべきではない」との要望書を手渡し、「非核の政府を求める鹿児島県民の会」も入港許可の取り消しを求める電報を県知事宛に送っていた。また、イージス巡洋艦「モービルベイ」入港当日に、県原水協・平和委員会、県平和運動センター・県憲法を守る会、鹿児島大学共通自治会など3つの団体・グループとならんで、わたしも事務局メンバーとして参加する「かごしま平和ネットワーク」が抗議活動を行った。「かごしま平和ネットワーク」では、県知事へ「周辺事態への自治体協力のあり方に関する公開質問状」を出して文書で回答を求めるとともに、11月14日に「周辺事態法と自治体協力のあり方を考える市民の集い」を開催するなどの活動を予定している。全国各地での平和・市民団体とも連携しながら、今後とも粘り強い反対・抗議運動を行っていく必要があると思われる。

1999年10月29日(イージス巡洋艦「モービルベイ」入港に反対して)
                              木村 朗
 

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Composed by Katsuyoshi Kawano ( heiwa@ops.dti.ne.jp )