木村朗国際関係論研究室
コラム・バックナンバー

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No.23

 

TITLE:「普天間基地の沖縄県内移設に異論ありー問題のすり替えと責任の押し付けを許すな!」 DATE:8 Dec 1999 09:45:36

    

    沖縄県の稲嶺恵一知事は、11月22日に普天間基地の移設候補地として名護市辺野古地区のキャンプ・シュワブ周辺を決定し、岸本建男名護市長にその受け入れを要請した。この稲嶺沖縄県知事による県内移設『容認』の意見表明によって後は岸本建男名護市長による移設受け入れの『苦渋の決断』(稲嶺知事の言葉!)を待つばかりという報道が一方的になされ、普天間基地問題はあたかも名護市を含む沖縄県民の選択・責任の問題であるかのような雰囲気が意図的に作り出されようとしている。しかし、こうした動きは明らかに問題のすり替えであり、日本政府の責任の放棄であるといわざるを得ない。

  人口が密集する宜野湾市のど真ん中にある普天間基地問題は、沖縄が『アメリカの植民地』でかつ『日本(本土)の国内植民地』であることを象徴する問題であり、本来ならば95年の少女暴行事件が起こる以前に『無条件・全面返還』という形でとっくに解決されていなければならない性質の問題であった。だが、日米両政府はこのような人権無視のきわめて危険な米軍基地(基地周辺の騒音被害・環境破壊の実態や米兵・米軍による犯罪・事故の数々を見よ!)をこれまで長年放置しつづけたばかりでなく、少女暴行事件を契機に燃え上がった沖縄県民の憤りを一時的に静めるために提起した解決策が、沖縄県民が心から望んでいる不平等な日米地位協定の『改正』ではなく『運営の改善』を、普天間基地の『無条件・全面返還』ではなく『移設条件付不完全“返還”』であった。これに対して、大田昌秀(元)知事をはじめとする多くの沖縄県民が、『県内移設の基地たらい回しを断固拒否し、『(グアム・ハワイなどへの)海外撤去』や『日本本土への移転』を要求したのは当然であったといえよう。

  今回の候補地決定のやり方は、第一に、国が行うべき責任(『海外撤去』や『本土移転』、あるいは嘉手納基地など『既存基地への統合』の検討)を最初から放棄して、基地移設の決定・責任を沖縄県へ、さらに名護市へと転嫁するものであること、第二に、本来基地問題とは切り離して独自に行うべき国の経済振興策・不況対策を基地受け入れやサミット招致とセットにして提起していること、第三に、国会審議も不十分で地元沖縄の声
を十分に聞くことなく『アメリカの圧力』(サミット前に解決の目途を立よ!)や『大手ゼネコン・建築業者の要求』にのみ目を向けた対応であること、等の点で大きな問題があると指摘できる。

  今必要なことは、名護市辺野古地区のキャンプ・シュワブ周辺に大体ヘリポートを建設すること(一度は名護市民の住民投票に寄って明確に『拒否』された海上ヘリポート案も含む)を前提に『軍民共用』や『15年期限の使用』だけを問題にするのではなく、もう一度沖縄問題の原点(0.6%の領土に75%の米軍基地が集中するという、信じられないほどの過重負担の押し付け!)にもどって再検討を行うことが求められているといえよう。今
朝(12月7日)の朝日新聞が沖縄タイムスと共同で行った世論調査の結果(反対45%、賛成32%)でもわかるように、沖縄県民は決して新たな基地建設(しかも大幅な基地機能の強化をともなうものである!)を望んではいないのである。わたしたちは、沖縄県民に『基地と経済』の二者択一という形でふたたび分裂と混乱を呼び込む過ちを二度と繰り返してはならない。

1999年12月7日
                                木村 朗

 

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Composed by Katsuyoshi Kawano ( heiwa@ops.dti.ne.jp )