米中枢同時テロへの米軍の報復攻撃について、問題点や今後の展望、日本に求められる役割など鹿児島大学法文学部の木村朗教授(四七)-国際関係論・平和研究-に聞いた。
報復攻撃は、非常に残念で怒りを覚える。憎しみの連鎖は、何の解決にもならない。報復攻撃は長期化が予想されており、政情悪化でアフガニスタン難民の多くがより厳しい生活を余儀なくされる恐れがある。
テロがビンラディン氏の犯行という証拠は、一部の同盟国には示されているが、国際社会を納得させる明確な説明はなく、米軍の攻撃には根拠がない。国連憲章や国際法上も問題がある。正義という大義名分を掲げたテロ報復は実は米国による国家テロともいえる。
テロは、米国の独善的で偏った中東政策が招いた。経済制裁で飢餓や貧困をもたらした最大の責任者として、外交政策の見直しを図り、平和的な難民問題解決へのイニシアチブを執るべきだ。根本的な問題を解消しなければ、ビンラディン氏を拘束してもテロはなくならない。
日本の対応も問題が多い。テロ報復支援に乗じて、自衛隊の武器使用条件の緩和や支援地域の拡大を進めることは、憲法が死文化しているといえる。在日米軍基地を考えると、日本は米国の最大の協力者で、自衛隊派遣などが実施されればテロの標的になりうる。
自衛隊派遣ではなく、紛争地域の難民支援や経済再建、平和復興など、日本がすべき貢献策は多い。湾岸戦争のトラウマから、米国に協力することで国際社会からの孤立を避ける考えのようだが、米国の攻撃がエスカレートしていくことを考えると、米国への支援はかえって孤立を招くことになるのではないか。アジア諸国民が自衛隊派遣への警戒、反発を強めていることも忘れてはならない。(談)
『南日本新聞』(2001年10月9日付朝刊)
※ 今回のコラムは、地元の『南日本新聞』のインタビュ−を「識者談話」という形でまとめていただいたものです。分量の制約もあり、わたしの真意をすべて言い表せたものではありませんが、最低限重要と思われるポイントには触れていただいたように思います。あまり遠くない時期に、「米国同時多発テロ」事件をテ−マにした自分自身のコラムを書きたいと思っています。
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