木村朗国際関係論・平和学研究室
コラム・バックナンバー

Last Update :07/01/03

 

 

No.58

 

 

TITLE:「県警に思う 組織全体の暴走、猛省を

 

 

DATE:4 .8. 2007 

 

     

  志布志選挙買収捏造事件についての朝日新聞のインタビュー記事

  「県警に思う 組織全体の暴走、猛省を」(『朝日新聞』3月13日付』)

◇ 無罪が確定した03年県議選にからむ公職選挙法違反事件。県警への思いを木村 朗さん(鹿児島大学法文学部教授、平和学専攻)に語ってもらった。        

 

今回の事件は、普通の冤罪事件とは事情が違う。冤罪は見込み捜査などによる捜査機関の重大なミスだが、これは警察による悪質なでっち上げ事件の可能性がきわめて高い。つまり、警察権力による犯罪だ。

 なぜどういう風にして捜査が始まったのか。意図的に警察が犯罪を捏造したのだとしたら、恐るべき国家犯罪だ。そこを解明しないことには、再発防止は図れない。

 県警は、長期間の勾留による自白の強要など従来の捜査方法を見直すべきだ。自白を偏重するがあまり、「踏み字」のような封建的な、人権を無視したやり方が生じた。

 警察と検察はもちろん、逮捕状を出した鹿児島地裁の責任も大きい。その中で出た地裁の無罪判決はせめてもの救いだが、あえて言えば中途半端。捜査の違法性も指摘していなければ、でっちあげたというところまでは踏み込まなかった。

 知事や県議会、公安委員会も一体何をしていたのか。県民の人権が侵害されたのだ。県警や裁判所で真相解明できないなら、弁護士などで第三者機関の調査委員会を設置するべきだ。

 これらの問題を踏まえて、捜査の透明化・可視化を改めて考え直さなくてはならない。録音・録画以上に、弁護士の同席を認めるべきだと考える。取り調べがつらくて、自殺未遂者まで出した事実は重い。

 メディアにも反省を求めたい。警察発表をうのみにして、
人を犯人視した報道を繰り返した。一部のメディアが疑問を抱いて事件を追いかけ続けなければ、真相は解明されないままだったかもしれない。第4の権力というマイナスの側面と、権力の監視の二面性が改めて明らかになった。メディアには今後、捜査に携わった当時の署長や警部らを、実名報道してもらいたい。

 それにしても、関係者への処分が軽すぎるなど県警の「身びいき」には声もない。県民に対して誠意ある対応をするべきだということを認識していないのか。最初は個人の暴走だった志布志事件だが、いつの間にか今も続く県警組織全体の暴走となっている。県警には猛省を求めたい。


                        

 

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