木村朗国際関係論研究室
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TITLE:錦江湾の人工島問題を考える−軍事利用を許すな! DATE:17 Feb 1999 14:15:48


 鹿児島県が鹿児島市宇宿沖を大規模に埋め立てて巨大な埠頭をもつ人工島を建設する計画が動き出している。この県の人工島建設計画に対しては、すでに「人工島を考える県民の会」(溝口貞雄・世話人)などから、環境アセスメントの不十分さ、従来型の公共事業費による税金の無駄使い、情報を全面公開しない県の姿勢などを指摘しつつ、おもに@ 環境問題への影響(錦江湾全体の環境悪化をもたらすこと)、A 財政問題への影響(1999年度末で県債残高1兆2千億円という県の厳しい財政事情をさらに悪化させること)、という二つの視点からの批判的な意見が出されているは周知の通りである。そこでここでは、これまであまり触れられてこなかった人工島問題の軍事的側面について「鹿児島港・錦江湾の非核・平和利用の徹底(軍事利用を許すな!)」という視点から考えてみたい。

 新ガイドライン(「日米防衛協力のための指針」、1997年9月)策定以来、米軍機・米艦船による民間空港・港湾の頻繁な利用や日米共同軍事訓練のあいつぐ実施という、新たな事態が全国各地で生じている。九州の民間港湾の中で1970年以降、米軍艦船の寄港数が最も多かったのは別府港の50回で、次いで鹿児島港48回、博多港15回と続く。90年以降では別府港5回、博多港5回に比べ、鹿児島港は13回と突出している。しかも、ここ数年に鹿児島港を訪れた米艦船は、一昨年に寄港した米海軍の強襲揚陸鑑ベローウッドも含めその多くが核積載可能艦船であることが判明している。

 このように鹿児島港が頻繁に利用される理由としては、@民間(貨物・客)船の利用が比較的少なくコンテナ施設などが整い出入港が容易なこと、A高知沖にある日米共同訓練海域への近さ、B海に面した50万都市の利便性、C旧海軍創設の伝統があり今なお保守的な県民性などが指摘されている。

 しかし、こうした米軍艦船による港湾利用による鹿児島港の「準軍港化」に対しては、県民の中からそれに抵抗する動きも生まれてきている。昨年7月に「錦江湾・鹿児島の海の非核化をめざす意見広告の会」が発足し、2,000人以上の県民や多くの平和・市民団体の賛同・協力を得て、地方紙(12月1日の「南日本新聞」および1月15日の「朝日新聞」)への意見広告)を実現した。また、この運動の最中に、鹿児島市議会は「鹿児島港における非核平和利用に関する決議」を採択している。

 鹿児島港への人工島の建設で問題となるのは、これまでの埠頭(水深10メートル)に代えて7万トン級の大型旅客船が寄港できるより巨大な埠頭(水深12メートル)の整備することを計画していることである。なぜなら、この巨大埠頭の建設により、大型旅客船(これまでほとんど来なかった!)ばかりでなく、4万トン級の米軍艦船(例えば、強襲揚陸鑑ベローウッドなど)の寄港がより容易になり、現在国会で審議中の「周辺事態法」などと合わせて、鹿児島港の「準軍港化」が一層強まることが確実だと思われるからである。

 以上のことから、わたしたちは、県民の命と安全を守る地方自治の本旨からいっても、鹿児島港への人工島建設に積極的に反対する必要があると思われる。

 1999年2月17日

   (「まちづくり県民会議」が発行する『まちづくり8・6ニュ−ス』への寄稿)

 

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