九州平和教育協議会主催の「韓国・平和の旅」に参加して

                          木村 朗

 

 (2002年)9月27日朝に福岡空港を出発して30日午後に帰着するまでの3泊4日の韓国への「平和の旅」はわたしにとっていろんな意味で忘れられない旅となった。それは今回の旅が(後述するように)非常に内容の濃い充実したものであったばかりでなく、故鎌田定夫先生が会長をされていた九州平和教育協議会が企画した初めての「平和の旅」であり、自分が思いがけず後継の会長に推された経緯もあって参加させていただくことになったからだ。参加者は退職あるいは現役の小中高の教員の方々を中心に総勢17名で、今回の韓国旅行の企画・準備を主に担当された児玉哲郎事務局長と藤井正昭先生(佐賀)をはじめ、鎌田信子先生や安部陽子さん(福岡「非核自治体宣言をめざす会」でお世話になった安部光子さんのお嬢さんであることをあとから知って驚きました!)など個性豊かな多士済済の顔ぶれであった。

 韓国ではソウルを中心に、全教祖本部、西大門刑務所歴史館、安重根義士紀念館(第1日目、927日)、提岩教会跡、梅香里住民対策委員会(第2日目、928日)、江華島遺跡地、ナヌムの家(3日目、929)、仁寺洞、3・1運動遺跡地などを訪問・交流した。わたしにとって韓国は19993月以来2度目の訪問(釜山政治学会と九州地区政治学会との交流)であったが、ソウル近辺はいずれも初めての訪問であり、すべてのことが新鮮で印象深いものとなった。

 今回の平和の旅では、日本と韓国の過去と現在の関係、特に日本による植民地支配(「日帝36年」の「恨(ハン)」)の負の遺産の大きさと日韓両国の国民に共通する米軍基地の重さという問題を痛切に考えさせられた。ちょうど日本では、小泉首相の突然の北朝鮮訪問によって日朝国交正常化交渉が動き始め拉致問題を中心に世論の注目を集めていた時だけに、過去の日本の植民地支配と侵略戦争、戦後の南北分断と朝鮮戦争といった出来事を現地でより一層身近な問題として実感できたことは貴重な経験だったと思う。

もっとも印象的であったのは、「ナヌムの家」でのハルモニ(元日本軍「慰安婦」)たちと梅香里住民対策委員会の中心的活動家である全さんとの交流であった。「ナヌムの家」では多くのハルモニの方々がわたしたちとの交流に参加していただき(あとから前々から交流があった秋山哲郎先生などが前もってお話をしていただいていたことを知った)、直接に過去と現在の状況を切実に訴えられ、改めて日本の過去の罪の大きさと現在の日本政府の対応の冷淡さ、わたしたちの取り組み・努力の不十分さを思わずにはいられなかった(同様な思いは、西大門刑務所歴史館、安重根義士紀念館、提岩教会跡などを訪れたときにも強く感じた)。また、梅香里住民対策委員会の全委員長との交流では、当局による逮捕・投獄や懐柔、幼い子供2人を抱えながらの困難な生活状況にも負けずに不屈の闘志で闘い続ける姿に強い共感と感動を覚えずにはおられなかった。そして、梅香里での米軍射爆上の実態(土、日の2日を除き1日平均13時間以上の射撃訓練の実施、原爆投下模擬練習や劣化ウラン弾の使用など)と在日米軍基地以上の韓国での米軍の横暴ぶりを知るにつれ、米軍・米国政府に対する怒りと日韓両国の市民レベルでの基地反対闘争の連帯の必要性と可能性を考えさせられた。

最後に触れておきたいのは、今回の韓国への平和の旅で個人的にも大きかったのは、韓国の「平和市民連帯」のメンバーで今回の旅のコーディネーター・通訳もしていただいた伊さん、李さんとの出会いである。お二人とも日本語が達者であることは言うに及ばず、韓国の歴史や平和への真摯な情熱など非常に学ばせていただくことが大きかったと思う。すでに藤井先生や秋山先生などとの交流も長く、また日本のピースボート(わたしのゼミ出身の野平晋作君が事務局専従をしている)との交流が深いことを知り、すごく身近に感じられた。これを機会に今後ともこのような平和連帯の日韓交流を続けていただくことを強く望みたいと思う。

 今回の平和の旅に、鎌田定夫先生がもしご健在であればきっと参加されたであろうと思う。九州平和教育協議会がこの新たな企画の継続的実施も含めてより充実した形で今後とも存続・発展することを固く誓いながら、この旅行記を終わりたいと思う(

今回の旅の企画・準備をしていただいた児玉事務局長・藤井先生、貴重なビデオ・写真を撮って提供していただいた秋山先生・福田先生にここで改めてお礼を申し上げたい)。

      

 
 

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Composed by Katsuyoshi Kawano ( heiwa@ops.dti.ne.jp )