修理ノススメ
実践例題 7  掃除機


突然止まった

昨日まで問題なく動いていた掃除機が、突然動かなくなった。掃除機で一番壊れやすい部分といえば、コンセントの差し込みプラグの付け根だと思う。   しかし今回は違う。じゅうたんで使うパワーブラシも動くし、操作スイッチ付近のLEDも光る。

なぜかメインのモーターが回らず吸い込まない。

とりあえず分解

ねじを外して開けてみる。

僕が分解・組み立てをすると、必ずねじが余ってしまい、どこにあったねじなのかわからなくなる。   今回は組み立て時にねじの場所がわかるよう、全部ねじ穴に差し込んだままにしておくことにする。   ねじが少ない方が、工場での組み立て時間が短くなり、コスト削減になるので家電製品はねじが少なくなるように設計してある。   はめ込みになっていたり、複数の部品を1本のねじで共締めするなど、ねじを減らすための工夫がわかるので、分解は楽しい。

しかし、はめ込み式は、どこではまっているのかわからないと、下手にカバーを外そうとして、バキッと割ってしまうこともあるので注意が必要だ。 修理マニュアルなどもちろんないので、どんな構造になっているのか、よく観察して推理しながら分解する。これも結構、楽しめる。

そして掃除

掃除機は、毎日掃除をしているのに、自分自身を掃除してもらえることは少ない。こんなときくらい、徹底的に中まで綺麗にしてやりたい。

中に詰まったゴミが原因で、分解して組み立てるだけで直ってしまうこともあるので、機械を掃除することは修理の大切な作業の1つだと思う。 いくらフィルタなどで内部にゴミが入らないようにしてあるとはいえ、毎日家中のゴミと戦っているだけあって、細かいところまでホコリが入り込んでいる。 あっという間に手が真っ黒になる。

不良原因調査

AC100Vに注意して、分解したまま電源を入れてみる。するとモーターは回り出した。が、同時にすごい火花がモーターのブラシ付近から出てきた。 驚いてプラグを抜く。もう一度電源を入れてみるが、今度はモーターが回らない。コミュテータ(ブラシが接触する電極)が汚れていたので、これが原因かもしれない。 アルコールで拭いてから電源を入れてみる。

バリ! バリバリバリ!!! ギュイ〜ン バリ! バリ!

はっきり言って、この音にはかなりびびる。すごい音と火花を立ててモーターは周り、また止まった。モーターの端子電圧を測ってみると100Vが来ていたので、 制御回路ではなく、モーターがおかしいことがわかった。

この掃除機のモーターは、ローター(回転する部分)のコイルと界磁コイル(ローターの周囲にあるコイル)が直列つなぎになった、直巻きモーターを使っていた。 ローターには、コミュテータという電極がついていて、これにブラシが接触していて、このブラシから回転するローターに電流を流す。 ブラシはモーターの筐体に固定されていて、ローターと一緒にコミュテータも回転し、回転に合わせてブラシと接触するコミュテータの電極が切り替わるので、 ローターのコイルに流れる電流の向きが切り替わる。

文章にすると、面倒なのだが、マブチモーターを1つ分解すれば、ローターとコミュテータの仕組みは簡単にわかる。

ねじを1本外すだけで、ブラシを外すことができる。両極にあるブラシを外してみる。 片方が黒く変色し、コミュテータに接触する部分がブツブツと腐食したように変形していた。 バチバチと火花が散ったときに変形したのだろう。 おそらく、モーターが回らない原因は、このブラシだろう。
 
金色の突き出た部品がブラシで、この筒の中にバネと電極が入っている。

部品注文

いつも補修部品を調達するときには、メーカーのサービスセンターに直接注文していたが、今回は家電量販店のコジ○電気のサービスカウンターを利用してみた。 ここで部品注文などできるのだろうかと思ったのだが、メーカーに問い合わせてくれるようだ。 しかし、これが何処にある、何の部品なのか、カウンターのおねえちゃんに説明してもわかるはずもない。

「サービスセンターに『型番××のメインのモーターのブラシ』といって問い合わせれば、わかりますから」と説明する。 「モーター」と「ブラシ」の関係がわからないようで、「モーターの...ブラシですか?」と聞いてくるので、「ええ、まあ、この通り言えば絶対にわかりますから」と お願いする。

翌日、問い合わせた結果連絡がある。2つセットで860円! こんなに安いとは。。。 3日も経たずに部品が入荷する。 袋には「カーボンブラシ」と書かれていて、交換方法が図説された説明書まで添付されていた。

見てびっくり

外したブラシがこれ

そして新しいブラシがこれ

上に突き出ている部分が電極で、その下の銅でできた筒の中にはバネが入っていて、電極をコミュテータに押しつける構造になっているのだが、電極の減り具合にびっくり。 元々は、こんなに長かったとは。 8年でこんなに減るものなのか。

ねじ1本外すだけでモーターから外せるようになっていたのは、交換を前提にした設計だったのだ。

ブラシを交換したらモーターは、火花も出すことなく、静かに(といっても、いつもの音で)回った。

本体を修理したついでに、調子のわるかったパワーブラシのスイッチを直すことにした。 吸い込み口を分解

やはりここにもたくさんゴミが詰まっていたので、きれいにした。 この吸い込み口についているローラーが床に接触すると、マイクロスイッチがONして床に接触したことを感知し、 じゅうたんモードのときには赤いパワーブラシがモーターの力で回転する仕掛けになっている。

どうやらマイクロスイッチは壊れていないようなので、ゴミが詰まって動作が不安定になっていたようだ。

さらに、分解したついでに、コードの吸い込みが悪かったので、ゼンマイを多めに巻いておいた。 コードの吸い込みが悪かったのは、ゼンマイの巻きが緩かっただけでなく、コードのリールと本体ケースとの隙間がせまく、コードが一カ所に偏って巻かれるとケースに接触し、 リールが回転しなくなるという設計上の問題もあって、完全には解決できなかった。

このゼンマイは、コードを巻いた状態でさらに数回巻いておくとちょうどいい巻き取り具合になるのだが、手順をよく考えないとうまい具合に巻き取らなくなる。 そういえば小さい頃、掃除機を分解したことがあって、このゼンマイ部分がなかなか直せなくて悲鳴を上げたのを思いす。

全部組み立てて完成

今回は、ねじを迷子にすることなく組み立てることができたのだが、吸い込み口を分解したときにパチンコ玉のような玉が出てきて、それが何処に入っていたものなのか、 どうしてもわからなかった。たまたま吸い込んで入り込んだものなのか、それとも何かの部品なのか?  まあ、これがなくても大丈夫そうなので、良しとしよう。

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(C) Ishijima Seiichiro 2005
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