2.法律の作り方
はい、よく官僚の「支配」「権益拡大」のためといわれる法律についてです。
1.法律の作り方 法律は次のような手順で作られます。 @原案作成
一見簡単そうに見えます。しかし、これが非常に大変な作業なのです。私も、法律改正を担当しましたが、はっきり言って体力の限界に近い感じでした。おかげで、お正月はその反動(疲れ)が出て、風邪を引いてしまい、寝正月に終わりました。
2.原案の作成
さて、その原案ですが、そもそもの新法か、既にある法律を改正するものかで、作り方に違いが出ます。新法の場合は、まさによく考え、ニーズなどを調べた上で1から作成することになります。しかし、改正法の場合は、これまでの法律について、何故そのような規定となったか、また他省庁との関係は?などを調べ、その上で改正の理由やニーズなどを構築していくことになります。
3.省内説明 さて、古文書あさりや理論武装などで相当な時間を使って原案ができると次は省内の説明です。
ちなみにその法律案文のことを「マス目」と言います。文字一つ一つを原稿用紙の中の「マス目」に書いていたからだそうです。今はもうそういう用紙を使わなくなりましたが、「役所用語」としてはなお健在です。 法制局審査への前段階として、制度の内容説明から入り、法文の書きぶりまで細かい審査を受けます。具体的には、一回につき、4〜5時間、これをふまえて指摘事項の説明資料を作り、過去のデータを調べ、また審査、と言うことになります。この審査は通常1月以内に終わらせないと、後の法制局がつらくなるので担当者が少なければ少ないほど資料作成が大変になります。 4.法制局審査 ここでは、過去の他の法律に照らして、考え方をはじめ、言葉の解釈に間違いないか、用語等これでいいのか、徹底的な審査を受けます。 これまでの例を調べたり、考え方が他の法律に比して適切かなど、調べるのは大変です。また、条ごとにその条の考え方や解釈を記載した「逐条解説」を作るのもこのころです(というより無いと説明に困るので自然にできます)。 この審査は(審査する方も含め)過酷なもので、大抵4時間コース以上になり、時間は法制局の参事官(各省の総務課長クラス)が空いている時間であるため、深夜となることも珍しくありません。これは、参事官がいくつもの法律や政令を同時に審査しているためで、参事官の数が少ない以上は仕方のないことです。 急ぎの法案の時は審査後翌々日くらいにまた審査があるため、その間、つまり約48時間で資料を作って、また指摘により案文を直した上で総務課の了解をとる必要があります。大抵は調べものであるため、これもまた時間との争いです。 こうして、官房審査から法制局審査までで大変な労力を要することになります。私も約1ヶ月で残業時間は約200時間でした。肉体労働ではなく、「考える」部分も多いためつらかったですね(いうまでもなく残業代は200時間どころか100時間ですらつくはずありません)。
5.各省協議 法制局部長への説明が無事終わると、大抵その時点で微修正以外はなくなりますので、各省との協議に入ります。これはあくまでも「政府提出」であるため、政府全体の相違として提出する必要があり、そのため各省庁の合意を得なくてはなりません。これを各省協議と言います。 大抵1週間で、法律案に対する質問と意見が出されます。利害関係がない場合は関係ありませんが、利害関係が少しでもある場合は質問案が送られています。特に、相手の法案が自分の省庁の権益を侵すとその省が判断した場合は、最悪の場合「紙爆弾」攻撃を行います。
法律は大抵提出期限がありますので、これをやられて各省との折衝が解決しないと非常にまずいことになります。どうしようもない場合は政治の力を使うことになりますが、大抵はその前の両省課長以上の「覚書」によって双方の権益はこれまで通りと確認して終わります。
6.国会審議 国会審議の前に各議員に「根回し」が行われます。
実際に国会審議にはいるとまず「委員会」で審議されます。この後本会議へ出され、可決(否決)されます。これを衆参2セットやるわけです。
こうして、国会審議をクリアするとようやく法案成立となります。 7.成立 こうして国会を通ると成立です。
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