8.審議会の実態

1.審議会って何?

 審議会とは、行政に対する「政策提言機関」です。
 この政策提言とは何かと言いますと、ある問題に対し、総理大臣なり、大臣なりが「○○についての考え方いかん。」と「諮問」を行い、それに対し報告書などで「答申」することです。この「答申」がいわば「政策提言」なのです。

※余談ですが、古い「如何」という言葉はともかく、何故「いかん」とひらがなで、さらに最  後に読点がついてないとないと「いけない」のか理解できません。(笑)

 通常、審議会は○○審議会という本体の下に、「○○部会」「○○小委員会」「○○分科会」など、下部組織があります(○○審議会○○小委員会といった感じです)。

 今の世の中、様々な専門的な問題があります。例えば「産業構造審議会」などで産業全てのことを審議するのは限界があります。このような場合、専門的な事項は小委員会などで議論され、結論を出し、その結論を本体の審議会で承認を得るという形を取ります。
 その方がより問題の本質について具体的に審議できるわけです。

 そのため、こういった分科会などについてはその方面に造詣の深い「専門委員」を多く任命して審議をお願いするということになります。

 では結局強制力はない(「答申」の内容を無視しても良い)んだな?と問われれば、極論すれば「その通り」と言わざるを得ません

 しかし、一般論として、この審議会は、消費者代表や業界代表、学者先生など様々な、分野の委員が討議して結論として承認した「政策提言」です。いわば「国民代表」からの提言といっても過言ではありません。

 これを無視できるはずがありません。もっと言えば、仮に無視して政策を立案した場合、その根拠が問われます。その「政策提言」がよほどむちゃくちゃでない限り、役人が根拠を作ることは難しいでしょう。

 ですから、結果として、審議会の答申に応じ、政策を立案するわけです。
 

2.他の「会」との違い

 役所にはいろんな会合があります。例えば「○○懇談会」などです。
 これは、指定職クラスの役人(民間で言えば部長や取締役)が「私的」に有識者を集めて開く単発的な勉強会です。もちろん、「私的に」といっても業務上必要でなければなりません。

 この「私的」というのは法的根拠がないという意味であって、「個人的に」という意味ではありません。というのも、この勉強会は、たいていの場合直面した問題が難しいため、審議会など政策立案の前に実務担当者などが現場の実態などを聞いて、それを政策にうまく取り入れるために行います。

 審議会の委員は限られている上、現場の話などはなかなか出にくいのです。

 ですから、ここでは係長クラスの担当者なんかも聞きたいことなどを課長や筆頭課長補佐の口を借りて聞いたりします。
 こういう性質なので、その政策の立案のための資料がそろえばこの会はそれで終わりです。

 こうしてみると、政策の細部は役所の担当者の勉強などで準備され、審議会は「儀式」的ではないか、と思われるでしょう。ここが「審議会不要」と誤解され、マスコミや反政府的国会議員などが騒ぐ点なのですが、では何故、審議会が不要でなく、「不要論」が誤解なのかを以下で順にで述べたいと思います。
 

3.開催の理由

 審議会を開催する理由は一義的には法律改正の場合は審議会の意見を聞く必要がある、と法律に書かれている場合がほとんどです。
 では何故そのように法律に明記しているのでしょうか。

 これは言うまでもなく国民不在の政策は無意味だから、いやそれどころか害を及ぼすからです。特に国民に不利益な決断をする場合誤解されやすいのですが、例えば消費税を上げたらそれを立案した役人も一国民として適用を受けるわけです。結果としてどうしても必要だから苦渋の決断をするわけです。

 そういった決断をするための「了承を得るための機関」が審議会なのです。

 そしてこの審議会は必要性に迫られてやることになります。総理が出るような大きな審議会は年1回必ず開く、という審議会もありますが、多くの審議会は必要に応じ開催します。
 個人的には、時代の要請さえなければ、審議会は次に述べるアポ取りや資料づくりで仕事が増えるだけなのでごめんです。はっきり言って。

 よく役人は「仕事を作るために法律を作り、その言い訳に審議会を開催する」なんて言っている人がいますが、そういう人は噂をもとにきっとそう思いこんでいるのでしょう。

 審議会はそんな軽いものではありません。そもそも委員の方も本業があるわけですから、忙しい方々に出席をお願いするには、それ相応の理由が必要です。お手盛りのいい加減な審議会など開催できるはずがありません。時代の要請で必要だから開催するのです。
 

4.委員の人選

 委員の人選は実は割と貧困です。
※私の知っている範囲なので、それぞれの審議会で異なっている事もありますのでご了承下さい。
 私の経験の範囲内では、基本的な考え方はこういう大括りです。
・座長
・流通(卸)の代表者(利害関係者に応じた数)
・製造者関係者(利害関係者に応じた数)
・消費者代表者(利害関係者に応じ2名程度)
・大学教授など学識経験者(専門性に応じ2〜5名)
・プレス関係者(1名)
・その他
 委員人選のポイントは「利害関係者の代表を集め、学識経験者を入れ、マスコミ関係者を入れる」という点に尽きるわけです。
 おおむねどこからも文句言われないように人を選ぶ、と言うことでしょうね。

 もちろん委員には○○寄りなどそれぞれの考え方の違いもあります。
 しかし、それぞれの立場から、業界などを代表してやっているわけですからまじめに考えています。
 「役人の都合のいいようにOBを中心に委員を選び、役人の考え方を植え付けている」などと言っている人がいますが、これは、全く事情を知らない上に、「役人を批判するために委員を馬鹿にしている」と言えましょう。

 なぜならばそもそも、役人に都合のいい業界や人だけ選んでいたら審議会が成り立ちません政策立案時で反対が続出したら目も当てられず、審議会の結論がひっくり返ってしまうかもしれないからです)。さらに、委員が役人OBだったとしても今はその業界の意見の代表者です。そのOBがその業界に不利になるようなことを言うことができるわけありません。むしろ、役人OBだけに、間をすっ飛ばして幹部に陳情に来たりやっかいなことになることもあるのです。
 
 ただし、結果として役所に近い人やOBが選ばれる理由としては
1.業界団体にOBが多い→これは天下りのせいですね。
2.課長や課長補佐個人の”つて”や業界の紹介により委員を決めるしかないので結局範囲が限られる
などが挙げられます。

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