10.いざ、海外出張!

4.海外での様子

 さて、英文資料の読み残しを(私なら)辞書を片手に飛行機の中で読んだ後はホテルに向かいます。

 多くの場合、ついた日は日本代表団ということで懇親を深めることも兼ねて一緒に晩飯を食います。各省庁からの混成軍ですといろいろお話が聞けて面白いですよ。
 でも、係長が一人で行った場合などはそんなの(当然)ありませんから、お店探すのが面倒なので、マクドナルドなどのファストフードや、コンビニで軽食を買ってホテルの部屋で済ませる場合が多いですね。

 翌日は、代表団として何人もいる会議ならたいてい大使館の方が代表団を車で「回収」して会議場まで運んでくれます。ちなみに、運んでくれる場合は大使館の方がそのままその会議に出席するケースがほとんどです(要するに拾ってくれるわけです)。
 もちろん、少人数の場合は会議場まで自力で出かけます。

 会議が始まると、メモを取ります。というのも、「公電」で会議の内容を日本に送らなければならないからです。また、それとは別に帰国後の初出勤日に、自分の上司に出張報告をしなくてはなりませんから。
 これは原則英語なので、英語が堪能でないものにはすべてをメモることは不可能です。ですから私のように英語が出来ない者は英語が堪能な出張者(課長など)に後で「取材」するケースが多いです。
 正直言えば私は今まで公電ではあまり戦力になれなくて、課長や他の省の出張者に迷惑をかけていたような・・。がっくし。

 でも不思議なのは、海外の出席者でこういうことをやっている人はいないので、「議事録」は日本特有のものなのかも知れません。

 会議は、やはりチェアパーソン(議長)の力量がすべてで、その人がうまければさくさく進みます。あと不思議なのは、外人は(発言を求められる)メインテーブルでも会議場でノートパソコンをたかたか叩いてるんですね。発言すべてを打てるとはとても思えないのですが・・。

 いずれにせよ会議は朝から晩までのケースが多く、食事なども会議場内あるいはその近辺で食べます。今までの昼飯で面白かったのはやはりロシアでの某会議。近所にマーケット(繁華街)がないので会議場の職員食堂で食べたんですがボルシチが美味しかった?。で、なんと日本円で20円(だったと思います・・200円かな?でも破格の安さ)。んー、よかったっす。社員でないので心苦しかったのですが・・。
 つらかったのはパリ。会議場近くに食べる場所がなかなか見つからず、結局カフェを見つけサンドイッチをパクつきました。日本ならいっぱいお店があるのに・・。

 会議(1日の会議もあれば1週間の会議もあり・・)が終わればわれわれ下っ端は公電書きです。たいていは会議終了時は「お疲れさん」ということで出張者で打ち上げ会食を行うので、その後われわれは徹夜で報告を仕上げることになります。
 

 この公電が問題で、英語が堪能であれば楽なんでしょうが、私のように英語が出来ないと・・。

 いずれにせよ、この公電を徹夜で仕上げることで、「お楽しみ」が待っているのです(さらっと書いてますがこれがしんどいんですよ、上司のクリアも必要ですし)。

 ちなみに大きな会議ですと、途中で公使や大使主催の晩餐会が開かれるケースもあるようですが、我々のような者にはほとんど関係ありません。
 その代わり、現地に出向している同じ省の方と食事を共にする機会がある場合があります。
 日本では、戻ってきたら課長や室長といったクラスの方との会食なので、日本ではあまりあり得ないので不思議な感じです(民間でも別の課の課長と食事する機会はあまりないのではないでしょうか?)

5.お楽しみ

 会議が終わって徹夜でへろへろになっても公電さえ上げてしまえば飛行機の便の時間までは自由時間です。
 そうです。観光です(もちろん自腹)。

 せっかく来たし、もう来ないかもしれないから、ということで私はこの「お楽しみ」の時間が好きです。

 仕事が終わったと言う開放感もありますし。ちなみにこれまででは、休日だったこともあり、わざわざ大使館の方が2時間だけ付き合ってくださったこともありました(ま、テロが起きていた時期というのもあったようですが)。おかげで良いおみやげやさんがわかりました・・ありがとうございます。

 とはいえそういうケースは希で、当然単騎の行動です。同行者がいれば、「○時にホテル」なんて約束だけして、出撃です。ルーブル2時間とか、クレムリン30分とか見たいものだけ見て次行きましょ?、てな感じです(良かったら今度個人でゆっくり・・)。
 でも、そういう時間は徹夜明けや睡眠不足でへろへろでもアドレナリン出しっぱなしなので楽しかったです(とはいえ、もう若くないので、無理かも)。

 この疲れはたいてい空港待ち時間にきますが、そのときは酒の力でごまかして飛行機の中でぼろきれになります、はい。

6.あとしまつ

 実は、公電さえ書いてしまえば、その要約で出張報告書もある程度出来ているので、出張の後始末自体はあまりありません。むしろ留守中の案件の処理や出張の結果の上司への報告、出張費の精算など事務的なものが大きいです。
 一番大変なのは、緊張しっぱなしの出張中の疲れや時差ボケをとることかも知れません。

7.つれずれ

 国際会議をいくつも見て思うことは、日本の「頭の重さ」です。
 海外の代表はたいてい一人なのです。

 海外は、専門官を尊重し、「課長」とかの役職にこだわっていないところにあります。
 割と有名な話としては、USTRのカンター代表と日本の橋本通産相(当時)が会談した際、カンターさんは一人でいろいろやってましたが、橋本さんには多数のお付が毎回へばりついていたそうです。

 よく「官僚主導」といわれて批判されますが、ではなにも知らないころころ変わる大臣を海外はどう思っているのか。こういうあたりもマスコミはきちんと報道して欲しいものです。 議員に専門家が少ないという最大の問題点解決についてよく考えてもらいたいものです。これを補うのが「官僚機構」という組織なのです。

 このあたり、テレビに出てくる政治家が経済でも軍事でもいつも同じ顔ぶれであるところでもわかります。その方々は専門家なのではなく、単に議論をおもしろくするためだけに起用されているのです。日本では口が達者なら、浅薄な知識でもかまわないのです。しかしそれは国策を誤ると思います。
 
 そのような議論だけの政治家がいなくなれば、もっと日本が良くなるのではないか、と思います。もちろんそうした場合、役所との関係がある「族議員」化しないようにするのも重要ではありますが。

 いずれにせよ「顔が見えない日本」なのは当たり前です。「顔」ではなく「組織」で勝負しているわけですから。しかし、外交に置いてはそれは大きなマイナスにしかならないと思います。

 外国では日本の大臣を「棒読みする人」「お土産(お金=我々の税金)を持ってくる人」としか見ていないのではないでしょうか。
 そして事務方も2年で担当者が変わってしまうので、このあたりにも不信感を抱かれています。

 まともに外交を考えるのならば「専門官」への業務の委任、そして専門官の育成を考え
るべきです。

 もうひとつ。これだけは絶対にいいたいのですが、「偉い人がすべてを他人に任せるな
ということです。大臣クラスでのスケジュール管理は必要ですが、だからといって同行する家族のお世話や飲み物の好み(例:大臣はウーロン茶をお好みなので準備すること)など一から百までのお世話は国家公務員がやることではないと思います。車が少し遅れて待たされたくらいで怒るな、と。

 こういった「ロジ」の世話は実は日本(韓国も同じのようです)特有のもののようです。

 このあたり、「あごあしつき」という古い風習が早くなくならないかな、と思います。

 ましてや「行革」「公務員の無駄」を主張する政治家達、あなた達へのお世話が一番無駄なんですよ、と言いたいです。

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