4.霞ヶ関での日常

1.役人の仕事でよく言われていることと真実

 霞ヶ関の日常については、よく新聞などにも出ておりますがいったい何しているのかわからない。「お役所の掟」にも言われているように「ここの「は」は「が」の方がいいんではないか?」などと言う「くだらないこと」を言い合って毎日を過ごしているのでしょうか。

 また、他省庁ともいつもケンカで、「省あって国なし」などというのは本当なのでしょうか。今回はこの辺りを書いてみたいと思います。

2.業務分担とたらい回し

 一般には、役所は「局」があり、その下に「部」(これはない場合も多いです)、そして総務課などのとりまとめ課(庶務課といいます)、さらにその下に課や室があります。 
 また、課や室の中は課長補佐及び係長で一つのグループ(「」と言われる場合もあります)を作り、それぞれ担当業務を持っています。

 ですから、省庁が大きくなればなるほど、また、現代のように業務が専門的になればなるほど他の課の仕事がわからなくなるのです。いや、正確に言うと同じ課でも他のグループの仕事はわかりません。
 そのため、各省では各課に課の業務の重要な部分だけ把握し、専門化すれば各グループにまわすという「総括」担当がいます。
 ちなみに総括の課長補佐はその課の筆頭課長補佐であり、事実上実権を握っている政策立案者でもあります。

 ですから、1種は総括係長、その後筆頭課長補佐を経験し、全体のバランス感覚を養い、その中でも優秀な人は総務課の筆頭課長補佐を経験し、出世街道を歩んでいきます。

 なお、誤解のないように先に申し上げておくと、この筆頭課長補佐というのは非常に激務で、人によっては耐えられない場合もあり、単に「権力を握っている」という事ではないのです(実際権力はありますが)。
 昔はわかりませんが、今は権力云々と言うより、純粋に国民のために、と思っている方が多く、決してマスコミで言われているような権力主義者や接待魔人などは例外です。

 ただ、問題なのは「そうではない人」をどうにもできないという組織の問題です。「そうではない人」が筆頭課長補佐の課は悲劇です。結果、とんでもないことになるか、課員が耐えるという状況になります。

 さて、ここでよく言われる「電話のたらい回し」について弁明させていただきます。
 この「たらい回し」は、役所に問い合わせるとき、「それは○○課だと思うので、お回しします」「それは○○課です」とさんざん回った結果、結局もとのところに戻ったり、あるいは3回くらい回されて怒られるというものです。
 しかし、です。例えば、「環境」と言うことだけでも、環境庁、厚生省、通産省他数々の省庁が関係しており、また、実際環境庁はあれだけの問題を抱えつつ職員が1000人以下という現状だと、どうしても職員または前述の「グループ」は自分のやっている仕事だけで精一杯です。

 これはどの省庁も似たり寄ったりで、業務に余裕があれば他課の仕事も勉強できるのですが、なかなか現実は難しいです。
 今はそれほど業務が細分化しているのです。にもかかわらず行政改革の人員削減で担当は課長補佐と係長の2人だけという実態があるのです。

 一応これまでの経験からあの課ではないか、という目星のつくものは良いのですが、「○○という良い融資があるときいたのですが」と政府系特殊法人やあるいは民間でやっているものを勘違いされて電話された場合はお手上げです。
 また、他省庁でやっている可能性のあるもので、自分のとこでやっていないものもお手上げです。

 典型的なパターンが、電話で「国がやっていると聞いた」といわれれば、「そうかな?」と思いつつ「おっしゃることの通りだとすれば○○省ではないでしょうか?少なくとも当省ではないのですが?」と言ってしまいます。で、某マスコミが叩いていたように「他省庁からも同じこと言われた。結局おたくの課ではないか」(事実はどこもやっていない)と怒られるのです。

 逆に「当省ではありません」のみだと「役所仕事の切り口上だ。暖かみも何もない」と怒られ・・。

 このような感じで、「たらい回し」の原因には多かれ少なかれ、「これは国でやっていることだ」という誤解による質問と、公務員は人数が多いからすぐ担当へ回せるはずだ、また担当も人数が多いはずだ、という誤解があります。

 各省の代表電話のオペレーターは10人くらいですし、また実際にいろいろ変わっていく世の中でそこまで把握しきれるものではありません。結果、役所は不親切、と言うことになるのです。

 しかし、このような状態なので、大変申し訳ないのですが、霞ヶ関に直接電話をかけられる場合は数カ所のたらい回しは承知していただきたいと思います。

 悪意ではなく、仕方ないのです。実際私自身、他省庁の窓口課を何度も紹介したことがあります。
 

3.通常業務

 通常業務としては、部署によってもちろん異なり、これから書くような業務をしない部署もありますが(例えば国際関係では国会業務はきわめて少ないです・・総括の「待機」を除いて)、大きく分けて次のような感じでしょうか。
・予算関連業務
・法律関係業務
・国会対応業務
・「先生」案件の対応
・幹部説明用資料業務
・「ルーチン」業務
・起案作成業務
・対外折衝業務
・会議出席業務
・電話の対応
・雑用
・・などなど。

 資料一つ作るのに少なくとも1〜2時間はかかりますから、こう並べるだけでも結構な業務量であることがわかっていただけると思います。また、実際にはそれ以外に「資料を読む」という重要な仕事・・資料を読まないと政策立案できないのです。・・があるので、それが英語だとしたら大変な時間がかかります。

 ちなみに、某雑誌や新聞などで、役所は紙の資料が多すぎる、無駄だ、と言うのがありました、その通りです。
 しかし、多忙で人が足りないため、口頭で伝えるのは極めて非効率的なのです。 つまり、上司も部下も多忙なため、仕事は同時並行でやるしかないのです。お互いが資料を読んで、それを前提に議論をする、という感じです。

 もちろん現在は電子メールを活用していますので、昔に比べたら資料は減ってきましたが、他省庁とのやりとり、外国とのやりとりはやはり「公的文書」というのが重要なため、紙が使われます。

 正直、自分で読むより他人から要点を聞いた方が楽なので、人さえいればそうしたいものです。

 話がそれましたが、その後読んだ資料をふまえて、「考え、理論武装した上で」政策を立案します。
 そのため、休み中もあれこれ考えてしまうことになるのです。

 ですから、「お気楽な公務員」とはほど遠く、休みも仕事のことを考えないといけないのです。

 また、国際会議があると、いざというときに備えて、留守番隊は待機してます。欧州なら時差9から7なので夜11頃には大勢が見えてくるので待機が「解除」され、帰れる場合があるのですが(とはいえもめたら帰れません)、米国の場合は最悪です。

 また国会業務も最悪で、あほな「先生」の場合は持ち時間が40分なのに20問も質問の答弁を作らせる人もいて、結果担当課は残らざるを得なくなります。しかもそれが大抵前日の夜遅くになって知らされるのです。

 結果タクシー帰りとなり、国民の血税を浪費します。国会議員はそれを承知でこういうことをやらせるんですね。やめてくれ、と。

 その他いろいろありますが・・・。いずれにしても、一日ぼーっとして、5時に帰るなんてとんでもない、という業務内容です。

 ちなみに例外的にそのような人がいますが、そういう人は結局人数は1人とカウントされるので、さらに真面目に働いている人に負担がかかることになります。

 ですから、そういう人をとらえて、マスコミは批判をしないで欲しいものです。

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