(5)雇用対策4法(平成20年) 2)派遣労働者等の解雇の防止に関する緊急措置法(案) 「原則」6ヶ月の暫定法です。 私は、景気対策などのために一定期間内に限った措置法はよいと思います。 その点については賛成ですが・・。
目的条文を詰める必要は普通はないのですが・・。 役所で一般的に詰められるのは「等」という単語です。 この「等」というのは、きちんと詰めておかないと、何でも入ってしまいますので、法律の対象という意味で問題が生じます。 よって普通の法令ではどこかに必ず「等」の定義があります。 たがが「等」ですが、法律の「対象範囲」を決める重要な一語なのです。 そういう意味で、安易に「雇用労働者等」と使用しているのが驚きで、参議院の法制局審査はどうなっているのか、と思います。
この法律は実質2条しかなく、第2条が長いので分割してみます。 さて、雇用保険法第62条は次のようになっています。 第六十二条 政府は、被保険者、被保険者であつた者及び被保険者になろうとする者(以下この章において「被保険者等」という。)に関し、失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大その他雇用の安定を図るため、雇用安定事業として、次の事業を行うことができる。 当たり前の話ですが、保険制度は保険金を払ったものが将来の不幸(保険支払い事由)について保険金の支払いを受けるものです。 逆に言えば、雇用保険払ってないし、すぐに払う可能性のない方はそもそも対象になるはずもないのです。 これを報道しない時点で以下にマスコミが民主党に偏向した危険な報道に終始しているか(あるいは勉強不足か)がわかります。 例えば、契約書をよくチェックせずに、「1年以上雇用されていない」ため、雇用保険制度の適用外になってしまった方も対象になりません。 具体的には、派遣先の変更時に「退職扱い」となったケースです。 このあたりは、派遣職員はプロ野球選手と同じで契約書をきちっと見ないとそれは仕方がないと思います。派遣職員も「プロ」なのですから、社会人として契約書精査しないのは「よくわからない」では済まないでしょう。 もちろん、派遣元の問題もあるでしょう。仮にそうならばマスコミはその問題(結果的に退職に追い込み事業者負担を避ける)を厳しく糾弾すべきだと思います。 ます、そこから報道して欲しいものです。
第2条の第1号です。 わかりにくい定義の部分をカットするとこうなります。 ・労働者派遣の役務の提供を受けている者が景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合において、 ・当該労働者派遣に係る派遣労働者であって継続して雇用していた期間が二月以上のものについて ・休業又は教育訓練を行う派遣元事業主その他当該労働者派遣に係る派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずる派遣元事業主に対して、必要な助成及び援助を行うこと。 要は派遣元に努力させ、努力した派遣元には必要な助成・援助をすると。。。 一方、派遣業法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律)では次のような規定があります。 (派遣労働者等の福祉の増進) 第三十条 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者について、各人の希望及び能力に応じた就業の機会及び教育訓練の機会の確保、労働条件の向上その他雇用の安定を図るために必要な措置を講ずることにより、これらの者の福祉の増進を図るように努めなければならない。 派遣会社がばたばた潰れているのならまだわかります。しかし、そうではない現状なら、本来はこの派遣業法の条文を適用し、「雇用その他の安定を図るべき」とまずは、厳しく派遣業者に「務めさせる」のが筋ではないですか。 助成や援助はその後。 問題は、派遣業者側が何をやっているのか全く報道がない点です。 静かにしていれば、行政や社会のせいにできるとする今の風潮こそが大問題でしょう。 派遣業界は地域のスタジアムなどに冠名を付けるなど、余裕があるではないですか。 まずは、その金を自らが契約している労働者支援に回すべきです。 雇用保険による特例支援はその後でしょう。
これもわかりにくい定義部分をカットするとこうなります。 ・景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合において、 ・期間を定めて雇用する労働者又は短時間労働者であって継続して雇用していた期間が二月以上のものについて ・休業等を行う事業主その他期間を定めて雇用する労働者又は短時間労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずる事業主に対して、必要な助成及び援助を行うこと。 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の対象は「パートタイマー」「アルバイト」に関するものです。 現実的には、労働時間を調整してパートとして採用された派遣社員がいることについての対応でしょう。 しかし、前述のように、雇用保険法の範疇での事業であれば、多分「1年以上」要件に引っかかって、多くのパート・アルバイトさんは雇用保険を払っていないと考えられるのではないでしょうか。さらに派遣社員ではなく、パート・アルバイトであれば、現実的に雇用保険料の支払いを嫌がる方もいらっしゃるわけで。 個人的にはほとんどカラ条文に近いのではないかと。
これすごくわかりにくい条文です。 要するに、 ・前述の1号、2号の助成については、休業等(休業または職業訓練)を開始する日として指定した日6ヶ月間であれば助成する。 ということです。 これは重大な瑕疵と思えます(「附則」のところで後述します)。
派遣業界に中小企業者ってどのくらいいるんでしょうか。 また、特別な配慮って何なんでしょう。 明らかにして欲しいものです。
「請求の円滑化のための必要な便宜」ですか。 はっきり言って派遣労働者支援のための法律ではなく、派遣会社支援法じゃないですか?これ。 だって、全部派遣元事業主への援助ばっかりじゃないですか。 マスコミは法律読んでるのか、と思います。 必要な便宜って何なんですかねぇ?
これが問題規定です。 「対象期間が終了していない」といつまでも支援を受けられるという点。 そして、「対象期間」は 第2条第2項で、「助成を受けようとする派遣元事業主等が当該助成に係る休業等を開始する日として指定した日から起算して六月の期間」とあります。 「指定した日」を「事業者等」がいつでも定められるのであれば、いつでも援助が受けられるわけで、この法律は永久に終わりません。 つまり、派遣労働者であれば、支援は6月で終わりますが、「派遣労働者を支援する派遣元事業主」が、別の派遣労働者を対象に、次々と日にちを指定すれば、その「対象期間」はいつになっても終わらないと言うわけです。 重大な瑕疵だと思います。 ちなみに、この法律の施行に伴い必要となる経費は、約三百億円といいますが、雇用保険加入の派遣社員、パートアルバイトの人数を把握した上で言っているのでしょうか。 根拠不明です。 そういう精査なくして、必要経費とかよく算出できるな、と正直思います。 |
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