第4日目(2月15日・金曜日)
7時に起きると、今朝も真っ暗だった。さすがに肌寒い。そのせいか、朝食バイキングのアツアツお粥とアツアツ米線がとてもおいしく感じるのが不思議である。ただし、一口目はそう感じるものの、それ以降はもうちょっと味がなんとかならんかな、などと思ってしまうのが 甚だ遺憾である。
この日は、大理の古城地区周辺観光からスタートである。まずは“三塔寺”と呼ばれる崇聖寺三塔(チョンションスーサンター)へ。遠くから見ても町のシンボル的存在なのだが、近くで見るとやはりそうだ。この辺りは地震多発地帯なので、小さい塔が傾いているのも気にかかるが・・・今のところは制限なく近付ける。しかし、傾いていない主塔よりも小さい塔の方が後世の建築というのが不思議だ。
小さい塔は、実は傾いているのです。わかりますか?
観光客でごった返す塔の直下から、ほど近い三塔投影公園へ。要するに池が鏡になって三塔を映してくれるというのだが・・・これはすごい。こっちに観光客が押し寄せてないのはなぜだろう?とにかく、行くなら観光客が出てくる前の朝イチがよろしいのではないだろうか。ごった返したら落ちついて鑑賞もできないだろう。
この旅、いちばんの自信作です。ハイ。
古城内に入った。三賀日は終わったとはいえ、1週間程度はお正月休みだということで、観光客から家族連れなどで大いに賑わっている。まだ朝の10時前だから、お土産もの屋さん(大理石製の灰皿や碁石など)は商品を並べている最中で、屋台(揚げじゃがいもやちまきなど)の方は絶好調営業中だ。商店が立ち並ぶ中を歩いてゆくと、ほどなく大理市博物館(ダーリーシーポーウーグアン)に到着した。さ、観光モードから勉強モードに切り替えねば。
勉強モードになる前に古城内の風景を。この人出!
大理市博物館は、大理国時代のモノがいろいろと収蔵されている。書くと長くなるので豪快に端折るのだが、中国の中でもへき地にあった国だから、中国の唐代や宋代とは似ていても違うことが多い。だが、僕は大理国のことを深く知らない。展示されている珍しいモノを見ても、どれが大理国の特徴でどれが中国の特徴でどれが他国の文化の影響を受けているのか、その判断がつかないのが悲しい。これらは追々勉強することになるだろうし、第一歩は往々にして分からないことだらけなのだが、何年も後になってから、実は貴重な経験をしていたということに気づいて愕然とするのだろう。未来が予測できるのだが、現在はどうにもしようがない。
墓誌銘のウラに「佛頂尊勝陀羅尼」。経題が漢字、本文はサンスクリット語。
オモテの墓誌に刻まれた人に対する供養の意味だそうです。
博物館でたっぷりと時間をとったので、出てきたときにはお昼に近かった。食べ物屋台は人が集まり、とてもおいしそうに見える。もうすぐ昼食なのだが、僕も湯気が上がっておいしそうなちまきを買ってみた。1元(16円)と安くてよいのだが、なぜか冷めている。あの湯気はなんだろう?味はどうってことなかった。
ちまき売りの親子。
お昼は、三塔寺から博物館への道中にあったレストランだった。入ってゆくと、満席だからダメだといきなり追い出されそうになる。え???だって座席はいっぱい空いてるぜ???ガイドの唐さんとウェイターが言い合いをして、席を確保できた。すると、待つほどなく料理が出てくるではないか。あの言い合いはなんだったのだろう?あんまり清潔な感じのしないレストランなので、味には全く期待していなかったものの、意外にもここの食事はおいしかった。チャーハンにはツヤがあるし、米線にはいつも感じる粉っぽさがない。実は、この旅で初めてチャーハンをうまいと思ったのが、この店だったのである。
午後は勉強のことを忘れ観光に専念(?)。まずは船旅である。大理はアル海(アルは“さんずい”に“耳”)という湖に面していて、大理の背後にある蒼山(ツァンシャン・4122m)とともに、町の象徴的風景をつくり出している。その湖の対岸にわたって、山と湖に挟まれた大理の町を遠望するのである。わずか15分ちょっとの船旅だ。船旅のお約束である“あくび指南”の一節を披露するほどでもない(またしてもわかった人だけ笑って下さい)。
船に乗る直前に、郊外の街角をちょっと撮ってみました。
対岸の“観音閣”は、お寺だか東屋だかなんなんだかわからないトコロなのだが、湖を挟んで山を背にした町が一望できるのがよい。湖の向こうに大理の町。そして背後の蒼山の高さに圧倒されそうになる。すぐ近くにある山だから、4100mという高さ以上の迫力を感じられ、さっき見上げた三塔寺がよけいにに小さく見えてしまう。
写ってる船はたまたま通りかかった船です。僕たちはキチンとした船を利用。
三塔寺が写真の中央に・・・わかりませんね。
しばし山を眺めただけで、ふたたび船着き場に戻る。到着したときは気づかなかったのだが、そこにウチワサボテンが並んでいた。強烈な直射日光と、日焼けした人々。季節で言えば冬なのだが、ここは熱帯なのだと言っていいのではないだろうか。現に、僕の目に見える蒼山(の東側)は緑におおわれているのに、僕の背後にある山(の西側)はろくに緑がなく、まっ茶色だ。要するに直射日光が当たるか否かの差だと思うのだが、そうだとしたら、太陽の力をまざまざと見せつけられているような気がする。
船とバスでそれぞれ15分ちょい。再び大理の古城地区を通り過ぎ、蒼山のふもとにやってきた。山の中腹に中和寺という道教の寺院があって、そこまでリフトで行けるという。スキー場にあるようなリフトで1.7km、25分!リフトにそんな長時間乗ったことなんかあるわけないのだが、晴れ渡った空の元、山の中腹から大理を見おろせたら気持ちいいだろう。一行で行ってみることにした。
松の林の中をリフトはしずしずとのぼってゆく。たまに風があって肌寒いのだが、そんなに大したことはない。足下の林の中から、時折カラコロと鈴の音が聞こえてくる。馬につけられた鈴だ。リフトでなければ馬という登山手段もあるようで、その馬が林の中を歩いているのである。しかし、木が比較的多いので、音はしても馬の姿がなかなか見えない。目をこらしていると、なんと林の中は墓地であることに気づいた。松の林の中に墓地があって、その上をリフトが通過している。その墓地というのがいつまでも続く広大なものなのだが、見下ろすのはあまりいい気分ではない。なんちゅうところを整備したんじゃ。
25分で一気に高度を稼いでしまった。きっと2500m以上はあるのではなかろうか。まさかとは思うが、念のため高山病への注意を払いながら行動する(ゆっくり歩くだけ)。といっても、すぐに景色のいい場所に着いてしまった。
延暦寺から坂本の町と琵琶湖を望む。
中和寺から大理古城地区北端とアル海北部を望む。
ここは中和寺の境内であるので、すぐ背後にある本堂にも行ってみた。長鬚の像が本尊さんだ。これまた僕は不勉強であるのだが、道教の有名な神様である玉皇上帝である由。その程度もわかんないのはさすがにマズいので、帰国したらちゃんと勉強しなきゃな、などと珍しいことを考えた。お寺にやってくると、不思議と自分の行動を反省させられるような気がする。・・・それほど反省することばっかりやっているわけなのだが。
再び絶景ポイントに戻ってしばし休憩。境内にはいろいろ露天が出ていて、そこで唐さんが中国みかんを買ってきてくれた。見た目は日本のみかんよりひとまわり大きく、皮も固そうなので、オレンジかいよかんのような印象だ。でも、皮は容易にむける。そして甘い。とにかく甘い。疲れをとるには甘いもの、とはよく言ったものだ。絶好のおやつを味わい、ホテルに戻ることにした。再びリフトをおりるのだが・・・実は地面からけっこう高いところにリフトが引かれていたのだ。スキー場ではなかなか味わえない高さなので、ちょっと恐い。
日のあるうちにホテルに戻ったのは、実は初めてである。さすがに今日はゆっくりしようと、部屋に蟄居して絵葉書を書いていた。すると、夕食に出かけますとのこと。しかもバスで移動だ。ホテルで食事じゃないのか。バスはさっきのリフト乗り場に向かって進んでゆく。どんどん走って、あと2分でリフト乗り場というところで止まった。さっき、この道を通ったんじゃないか。その道沿いにレストランである。
いつもながらの中国料理である。メニューもそんなに変らないのだが、このときは“冷し中華”が出てきた。タレはかかっていないのだが、米線の上に野菜や肉などがまぶしてあるのは、まさに冷し中華。酢をかけてみると、ホントに冷し中華。これがまた食が進む。ウヒウヒ言いながら食べていると、上海からこの旅に御一緒していただいた張さんとの、これが最後の晩さんだという。明日も昆明までは一緒なのだが、いよいよ旅も終わりに近づいてきたな、という気がした。一行で写真を撮りっこする。
満腹でホテルに戻った。今日はもうこれで・・・と思うのだが、夜遊びに出ようというお誘いがあると、断れないのは人情というもの。しかも、最後の花火大会をハデにやろうというお誘いだ。大都市では爆竹が禁止されているから、花火や爆竹をやるなら、この夜しかない。町中でゴッソリ買ってきて、ホテルの中庭でやればいいのである。よーし、いっちょやったるか。ホテルの玄関でタクシーを待っていると、すでに中国人親子が爆竹をやっていた。ホテルのスタッフも、時折ハデに爆竹をやってくれる。嫌が応でも気分が盛り上がってくるのが分かる。
前日の夜にぶらぶらした、古城地区のメインストリートへ。やっぱり活気のある町はいい。自然とあちこち覗きたくなってしまう。お土産用にとパッケージがきれいなたばこを衝動買いし(1つ28元=470円・・・高!)、他のお店も冷やかす。毛沢東主席の顔入りTシャツが欲しかったのだが、ボッタクリ価格(60元=1008円。本来なら高くとも40元がせいぜいでしょ)から値引きしてくれないので、手を出さない。
花火はそこらへんで売っていた。道ばたに花火を売る露天が出ているのである。これがまた、日本では当局の指導が必要であるモノスゴイのばかりだ。打ち上げ30連発・発煙筒サイズの爆竹・吹き上げ系もろもろ・トンボ系・・・種類こそ日本で売っているのと変らないが、打ち上げ系はどれもデカい。ダイナミックな花火大会になりそうだ。
花火を購入したそのままのテンションで、ちょっとキケンとは思ったのだが、道ばたのラーメン屋で“牛肉麺(ニューローメン)”に手を出してみた。要するに牛肉ラーメンを食べたのだ。やはり麺がやや粉っぽかったのだが、目の前で麺を打ってくれてそれを食べさせてくれるのだから、なぜかおいしく感じる。塩味のスープもさっぱりしていて飲み安く、食べていて飽きない。量も多すぎず少なすぎずだが、そんなにムリしなくとも2杯食べられるかも。それでお値段は驚異の4元(67円)!こういうところで食事した方がおもしろいと改めて思う。
ホテルの中庭で花火大会である。ここではホテルのスタッフが爆竹をやってるし、けっこう広いから花火の場所としては問題ない。いざ、着火!
・・・この後、僕の着火した打ち上げ花火は、夜空を焦がし、ホテルの外壁をも焦がした。