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第2日目(2月25日・木曜日)
半分寝そうになりながら、なんとか5:30に起きる。同室のDさんも起きるが、2人ともシャワーを浴びる気にもなれず、朝食(バイキング)を取る。先に起きていたのは大学院生のHさんとIさん。タイ米のチャーハンはまあまあ、パイナップルとスイカはとてもうまかった。問題は、レストランやロビーが蚊だらけだったこと!マラリアになんかならないよな?たまらないので一旦部屋に戻ろうとしたところで、I先生とKさんが降りてきた。あれ?H先生は?1人で寝ているH先生の部屋をノックすると、まだ浴衣姿だった。
6:30にホテルを出発するが、まだ暗い。さすがに一応は冬だ、と思った(実は曇っていただけである)。もちろん道路は渋滞している。渋滞の原因がへんな車線割り(最大で片側10車線+高速道路)だということはもう書いたが、もう1つの原因は妙に長い信号だろう。計ったわけではないが、信号で止まったら、まず2分は信号がかわらない。だから、バンコク式の渋滞は極端に流れ、極端に止まる。日本みたいにダラダラ進むことはない。こうして、空港まで1時間かかってしまった。
空港ではDさんがさっそく両替、タイ・バーツ(1B=3.5円)を手にした。どうせ後日また来るのだから、無駄にはならない。なんせ、両替をしなければコーヒーも買えないのだ。そんなDさんに、紅茶をごちそうになった(15Bくらいだったと思う)。そして出国審査。これまた審査官の作業が遅い・・・と思ったら、隣の列は恐ろしく早い。僕とH先生が取り残された格好で、他の列に並んでいたみなさんはもう向こう側だ。この遅さの原因は、目の前のおばちゃん達だった。台湾人らしいが、1人につき審査に2分はかかる。おばちゃん達は「ここで立ち止まって下さい」を無視して並び、係官に戻されている。ざーけんな!でも、僕に順番が回ってきたら、わずか30秒で審査は終わった(もちろん何も聞かれない)。信頼のある(?)国の国民でよかった!
それにしても、この空港はだだっ広い。ターミナルの端から端まで、400mはあるだろう(誇大ではない。本当なんだ!)。そんなバンコク国際空港でショックを受けたのは、「喫煙コーナーがほとんどない」ことだ。さすがに外国は徹底している。ものすご〜く歩いた先に、わずか6畳ほどのガラス張りの部屋があって、そこが煙っている。そこにいた人は、ほとんどが日本人だった。もう1つのショックは、カトマンドゥ行きのロイヤルネパール(RA)機は、9:45発のはずが10:15発となっている。変更ではない。スケジュール通りと案内されてこの時間だから、そうなのだろう。ということは、もう30分も待ち時間が増えたのだ。だいぶ待ちくたびれてきたが、待つしかない。そんなRA408便がターミナルにやってきたのが、9:45だった。
NW機のB747と違い、RA機はB757だからずいぶん狭く感じる。通路を挟んで3列づつしかない。そんな機内を指定された席に移動すると、太ったおじさんが座っていた。?どーゆーことだ?とりあえず客室乗務員(おっ短く書けたぞ)にチケットを見せ、そこは僕たちの席なんだけど、という顔をすると、その客室乗務員は太ったおじさんを通路の反対の席に移動させた。え?それで終わり!?真相はいまだにわからない。
離陸時間が近づいた。僕は3列シートの中央。窓側がH先生で(写真を取ろうと、カメラを用意している)、通路側はネパール人(タイ人かもしれないが、ネパール人だと勝手に断定!)。飛行機がターミナルから動き出すと、隣席のネパール人がいきなり数珠を取り出し、ムニャムニャ言いながらお祈りを始めた。まさか、「墜ちませんように」と祈ってるのだろうか!?ネパール人はひたすら祈る。離陸の瞬間も祈っていた。まさか、カトマンドゥまで祈り続けるのか?俺はそれを聞き続けるのか?どーしよーと思いながらネパール人をちらっと見ると、ネパール人は数珠をじゃらじゃらやりながらあくびしていた。間もなくお祈りも終わった。
敬虔な人に見えたネパール人だが、機内食(僕が頼んだのは魚料理、けっこううまい白身魚の蒸し焼きだった。)が配られると、ビールをガンガン飲みだした。おい!まだ午前中だぜ!僕はコーヒーが飲みたかったのだが、コーヒーは食後とむげに断られ、仕方なくビールを飲んだ。あ〜あ、隣のネパール人と五十歩百歩だ。窓から外を見ると、陸地と水がむちゃくちゃに入り乱れている。これがバングラディッシュだろうか?ともかく水浸し。川が陸地を流れているのか、陸地が川を遮っているのか、とにかくよくわからん。こんなことを考えている間にも、ネパール人は飲み続けている。おいおい、今度はブランデーかよ!もうどうにでもしてくれ。しかも、ヤツは友達が多く、ひっきりなしに誰かが別の席からやってくる。もうドンチャン騒ぎだ。そうだ、先に時計を調整しておこう。ネパールは日本と3時間15分差だから、昨日2時間戻した時計の針を、さらに1時間15分戻す。しかし、15分てなんだ?
外の景色が、山だらけになってきた。飛行機の高度は下がっているはずだから外の標高はよくわからないが、そろそろ着陸しそうな雰囲気だ。カトマンドゥは盆地だから、山が切れた先に街が広がっているはずである。と、予習してはあるが、山の頂上がすぐそこに見える。危険でないの?墜ちない?大丈夫?不安は尽きないが、心配してもきりがない。だいぶ乱暴な高度の下げ方だが、山が切れて、民家が見えてきた。全体として風景は茶色い(乾期だからかな?)。区画なんてモノはないから、道がテキトーに走っていて、家が道ぞいにあって、あとは田んぼ。田んぼのかたちだって、いいかげんだ。日本だと見事に田舎の風景だが、飛行機は順調に高度を下げている。酔っぱらいネパール人も、再び「お祈り」を始めた。田んぼが少なくなり、民家が密集しはじめた。高層ビルはない。ほとんどが2階建てくらいにしか見えない。風景が民家だらけになったところで、RA408便はカトマンドゥ・トリブヴァン国際空港に着陸した。
飛行機は、一瞬平屋に見える2階建てのターミナルビルから100mくらいのところに停止した。わずかな距離だが、出迎えのバス(ただし、2台くらいしかない)がやってきてくれる。もちろん、いっぺんに大人数が乗れるわけではないので、ほとんど最後尾に乗っていた僕達は、だいぶ待たされた。そんな中、Kさんがきょろきょろしながら、酒がない、と言っている。成田の免税店で買った酒が3本入った袋が、見あたらないらしい。座席の下に入れていたのに、もしかしてパクられた!?怪しいのは、酔っぱらいネパール人の前に座っていた、ヤツのカミさんだ。カミさんなのに、どこかへ消えてしまっている。パクって逃げたのか!?その後入国審査とターン・テーブル前で本人を発見するのだが、残念ながら酒の行方はつかめなかった。
さて、カトマンドゥの気温は20度くらいだろうか、快適だ。そんな気候を味わうヒマもなく薄暗いターミナルに入り、まずは入国審査。人のよさそうな初老の男性が係官だ。予習してきたネパール語であいさつしてみよう。
「ナマステー」(合掌)
「オー、ナマステー、コニチハー、サヨナラー」
・・・日本語の中にも、万国共通語となった言葉はあるのだ。そんな係官が、なんか聞いてきた。何を言ってるかさっぱり分からない。英語っぽいけど・・・困った顔をしたら、僕のパスポートの「RA408」という字を指した。時を同じくして、タイ航空の便も着いたようなので、その区別をしたかったのだろう。うなづくと、もう通ってよい、ということになった。楽ちんだ。
問題は、ターン・テーブルでのスーツケースの受け取りだ。とにかく、荷物が出てこない。出てきたと思ったら、ほとんどの荷物を酔っぱらいネパール人御一行様(6人以上いた)が取ってしまう。あの荷物の量は、引っ越しではないか?よくチェック・インできたものだ。こうして、たかがスーツケース7個をせまっ苦しいターミナル内(大学の大教室くらいの広さ)で受け取るのに、30分以上かかった。
外に出ると、高校生くらいの少年が旅行会社のプラカードを持って立っていた。ついてゆくと、ボロいタウンエースが停まっていて、そこに現地ガイドのラビンドヤ・スレスタさんが待っていた。車が走り出すと、ラビンさんはさっそく「はい、ナマステ。こっちでは挨拶はみんなナマステ。ありがとうはダンニャバード」と説明が始まる。ラビンさんは現地のスルヤ(太陽の意)・トラベラーズの社員で、10年前に半年間大阪に住んでいた、とのこと。だから日本語もなかなかだ。「関西弁もいいね。先週は関西のお客さんだったから、関西弁で案内しました」。小柄で(ネワール民族は、みんな小柄である)浅黒く、やたら元気で、いつもニコニコしているなラビンさん(年は30くらい。聞いたけど忘れた)。そのラビンさんによると、ネパールでは標高4000m以下の山は山として認めてもらえず、「丘」と呼ぶそうである。地名に組み込まれてしまってるのだからしかたないが、ネパール人にかかれば富士山も「丘」扱いとなってしまうのだ。この話には、一同苦笑した。
カトマンドゥの日ざしはけっこう強い。しかし、ラビンさんは「今日は涼しい。先週は29度ありました」という。その日ざしの中を、おんぼろタウンエースは黒煙を上げて走る。ともかく、排ガス規制なんてモノは(たぶん)ないから、周りもヤクザな車(初代カローラや、ブルーバードなど。新しい車は韓国の現代自動車製が多い)ばかりだ。車の数はさして多くないが、それは東京を基準に考えているからだろう。メイン・ストリートはけっこう車が途切れずに走っているし、さらに原チャに荷台と屋根をくっつけたテンプー、もっとちゃっちいリクシャーが、車と並走している。どれからもすごい黒煙だ。トラックはインドのタータ自動車製。もちろん黒煙。つまり、とんでもない排ガスにさらされ、かなり臭いのだ。
<ネパールの交通ルール>
信号(大林組の仕事)はカトマンドゥに5ケ所しかないので、あまりみかけることはない。車は先に割り込んだ者優先だから、クラクションでせっせと相手を牽制している車ばかりで、町中とてもうるさい。車線も一応はあるが、特に守られていない(左側通行だから、みんななんとなく左側を走っている)。横断歩道はなく、道路を横断する人は一瞬のタイミングを逃さずにすかさず渡ろう。どのみち、クラクションは鳴らされるはめになるけれど。なお、バイクはヘルメット着用が義務だが、バイクの後ろに乗るのは、ヘルメット不要。本当は必要かも知れないが、誰もしている人はいなかったので。 (おしまい)
さて、メインストリート周辺は高層ビル・・・なんてことはなく、ネパール独特の民家(3階建て)が多く見られる。一方で、メイン・ストリートと交差する路地は鋪装されていないから、だいぶ砂が道に入りこんでしまい、街のほこりっぽさの原因となっている。そんな道を西へ15分ほど走ると、カトマンドゥでの宿泊先であるソルティ・クラウン・プラザ・ホテルズ・リゾートに着いた。このホテルは国内最高級の5ツ星ホテルで、ドア・ボーイが敬礼で迎えてくれる。お客さま担当責任者はスニタさんという、サリー姿もすばらしいきれいな女性で、日本語もできるから安心だ。しっかし、ふだんの旅行とはかけ離れたホテルだ。ツアーじゃなければ絶対に泊まらないよ。でも、くつろがなくては損だ。もちろんウェルカム・ドリンクもおいしくいただいた。明日のモーニング・コールは5:30と決まり、夕食はコンチネンタルのステーキを設定し、今日の予定はここまで。あとは自由行動だ。とりあえず部屋に向かおう。
部屋はなかなか広く、快適だ。テレヴィはインドの放送まで入る。バスルームも広いし、窓からは目玉寺院(5日目に行く予定)が見える。落ち着く間もなく、ドアをノックする音。ボーイがスーツケースを部屋に運んできてくれたのだが、チップをいくら渡していいのか分からない。僕達一行全部で7個もあるからと同室のDさんが言い、じゃあこんなもんで、と2人に2米ドルづつ渡す。すると、2人とも大喜びだ。渡し過ぎかな?両替をしにフロントにおりると、まだガイドのラビンさんがいて、チップの件を聞いた。そうしたら、ラビンさんはかなり困ったような表情だ。「2人で1米ドルで十分よ。渡し過ぎ」と言う。現地の物価に慣れるまでは、困惑することばかりだ。次回から気をつけよう。で、両替。20米ドルがたちまち1306Rsになる。いっぺんに大金持ちになった気分だ(でも実は2612円である)。
まだ午後の3時過ぎだ。疲れたと言う多数をホテルに残し、僕とDさんは街に出た。ホテルからメイン・ストリートまでまず5分歩く。バスの中で感じたように、やはり街はガス臭く、けっこうつらい。メイン・ストリートまで来ると、露天で売っているトマト(ピンポン玉サイズのミニトマト)やカリフラワー(バレーボールくらいの大きさ)がとても青臭く、こちらも物凄い匂いを放っている。それらの匂いが入り交じり、大変なことになっている。それが(ちょっと町外れだが)カトマンドゥのメイン・ストリートだ。活気はある。でも、15分も歩くとヤバい雰囲気の場所にやってきてしまった。露天もなくなったし、道の先の方には何があるか分からない。今のところ危険は感じないが・・・とりあえず、今来た道の道路の反対側をを引き返すことにした。すると「キットカット屋」を発見。店中キットカットしか置いていない。ものすごい迫力だ。
さて、買い物もしてみたい。現地通貨は持ってるし、ガイドブックで買い物の基本会話は覚えてきた。しかも、ネパールには「価格」というものがあまり意味をなさず、値段は交渉で決めるのが基本だそうな。これは楽しみだ。Dさんと何を買うか考え、無難なところで「たばこ」を買うことにした。これなら、買い物にしくじっても大した値段はするまい。勝手に値段を「10Rs以下」と想定し、目についた店の小学生くらいの少年に、たばこを指差しながら話しかけた。
「ヤスコ・カティ・パルチャ(いくらですか)?」
「シクスティーン・ルピー」
え?英語?いきなりペースを乱されてしまった。うーむ、楽と言えば楽だけど・・・とりあえず、数種類のたばこの値段を聞いてみた。ネパールの国産たばこは16〜24Rs(32〜48円)。外国たばこは高くて、マルボロが60Rs(120円)。でも、日本よりははるかに安い。そうだ、感心してないで買わなきゃ。とりあえず1番安かった「ククリ」(山刀の意)というたばこに照準を絞り、値段交渉。16Rsがいくらまで下がるだろう?
僕達は10Rsしか持ってないんだけど、と英語で言ってお札を見せた。すると、店先にいたおやじ(ヒマなおやじかと思っていたら、少年の父親みたい)が少年に何やら言った。たばこを出した少年。おっ、あっさり交渉成立か?ところが少年はおもむろに袋を破り、中身を引っこ抜きはじめた。え?バラ売り?少年は何度も何度も数え、11本を差し出した。おやじは11本で10Rsだ(推定)、と言っている。こうなったら(?)こっちも意地だ。セコく「More
two
please」と言って、指を2本突き出す。おやじはしょうがねえなあ(推定)と言い、もう2本くれた。たばこ13本、10Rs也。これが、記念すべきネパールでの初買い物である。Dさんと、おもしろかったねと言いながら、さっそくたばこを吸ってみた。・・・う〜ん、まずくはないが・・・と思ったのは僕1人で、ホテルに帰ってみなさんに勧めたところ、みなさんからはかなり不評だった(翌日、ラビンさんは「ククリは安いだけ。ポーターとかが吸うたばこね。おいしくない」と教えてくれた)。
一回りしてお茶を飲みたくなった。ホテルにとりあえず戻り、1階レストランに入る(実は、どこにあるかわからなかったので、スニタさんに聞いた)。Dさんはイラム・ティーを、僕はハーブ・ティーを飲んだ。どちらも75Rs、日本円にしたら150円だが、現地物価にしてみれば、安くはない。味はいいのだが、複雑な気分。
部屋でひと休みして(1回停電があった)、19:00から1階レストランで夕食。ステーキの肉(ビーフ?水牛?)が、妙に固い。ビール(確か、Tsuborgだったと思う)も飲んだ。けっこううまく、満足した。
夜は、荷物整理。明日からのポカラには、スーツケースを持っていかないようにしよう、とのこと。どうせまたこのホテルに泊まるのだから、預かってもらうらしい。いろいろ荷物整理をすると、さすがに眠くなった。でも、また寝つけなかった。
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