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第5日目(2月28日・日曜日)
目を覚ましたのは6:30くらいだっただろうか。もうDさんは起きていて、テラスの椅子に座ってマチャプチャレを眺めていた。昨日の雨のせいか視界はとてもクリア、マチャプチャレやアンナプルナを遮るものは何もない。僕達の部屋からは真正面に山が見えるので、窓枠が額縁のようである。まだ日は昇る直前のようだが、もう中庭に出ている人もいる。僕の胃はまだ本調子ではないが、とりあえずよく寝たので気分は悪くない。寝汗が気持ち悪かったのでシャワーを浴びると、気分は一層爽快だ。出てくるとDさんは外へ写真を撮りに行ったようで、いなかった。さっきまでDさんが座っていた椅子に座り、目の前にそびえるマチャプチャレを堪能した。
今日はカトマンドゥに戻るが、飛行機の便の都合(11:05発)でホテル出発は9:45の予定だ。ゆっくり朝食を楽しむ。さすがに食事はそんなに食べられないが、パンケーキや目玉焼き、紅茶がうまい。うっかり取ってしまった牛肉がだいぶ胃にこたえたが、なんとか飲み込んだ。食後は中庭で再びマチャプチャレを眺める。頼まれて別の観光客(関西の人)を写真に撮ってあげ、こちらはKさんのカメラで撮りっこだ。部屋に戻ってもしつこく山を眺める。そんな状態を、いきなりヘリコプターが壊した。ヘリはホテルの隣の空き地に着陸、20分ほど停まっていた。急患でも出たのだろうか?
こうしてホテルを後にした。空港では、飛行機の座席確保がまず問題だ。カトマンドゥへは東に向かうことになるから、山は左側に見える。ラビンさんはあっさりと左側の座席を確保してくれた。まだ時間があるからと屋上のカフェに行き、ヒマラヤン・ティーを飲む。天気がいいからぼーっとするには最適だが、突然ラビンさんが知恵の輪をいくつか取り出した。僕達どころか、カフェの従業員まで熱中した。もちろん、僕は日本人代表ダメ人間である。
例によって「ライターかくしてね」(ラビンさんより)を守り、ライターを靴下の中に隠す。気分はほとんど麻薬の密売人だ。搭乗手続き兼ボディ・チェックで、今回は「ライター?」と聞かれたが、もちろん僕の返事は「No」。それであっさりOKが出た。それさえ済めば、もう飛行機は目の前に停まっている。カトマンドゥ行きの3Z128便(228便かも知れない。搭乗券の数字がどっちかわからん)は、これまた例によって44人乗りのプロペラ機だった。
上空に多少雲はあるものの、とても視界はよい。もちろんヒマラヤは見放題だ。さっそく機内食が出てきたが、胃の調子を考えてさすがに断り、コーラだけもらって山を見る。僕は旅行には原則としてカメラを持っていかないのだが、その考えを改めようかと思ったくらいだ。ラビンさんも忙しく歩き回り、あの山が・・・と教えてくれる。こっちも一生懸命眺める。でもわずかにフライト時間は30分。みるみる高度が下がってきた。
なんだか、高度の下げ方がおかしい。いっぺんに高度を下げてすこし安定し、また一気に高度を下げる、といった具合だ。これは胃にくる。ほとんど乗り物酔いはしない(前日は特別)僕だが、かなり気持ちが悪い。いままでになかった乱暴な機長だ。だいぶ地面がせまってきて、この苦しさからやっと解放されることを喜んだら、突然左に旋回し始めた。なんだ?滑走路が混雑でもしてるのか?ともかく超低空飛行の旋回で、カトマンドゥの市内が見渡せたが、うれしくもなんともない。着陸も案の定乱暴だった。
ポカラという保養地から首都に戻ってくると、さすがにカトマンドゥは大都会だと思える。そんなカトマンドゥでの最初の目的地は「昼食」だ。11:40に到着したので、腹は若干空いている。でも僕の胃は本調子ではない。いくらも食べられないだろう。向かったのは和食の「田村」。まずそば茶が出てきたのがうれしい。不思議と胃が落ち着くのが分かった。和食(幕の内弁当)自体はあんまりおいしくない。そりゃ〜和食の国からやって来た人間が、外国の和食を食べてうまいと思うわけがない。ごはんはべチャッとしてるし、味噌汁はだしをとったのだろうか?だが、胃はどんどん落ち着いてくる。僕は食事に郷愁を覚えないはずなのだが、この時は和食がどんなに有り難かったことか!結局全体の7割を食べた。これだけ食べられれば十分だ。
こうして食事が終わり、ホテルに向かった。スーツケースを預けっぱなしの、ソルティ・クラウン・ホテルだ。13:20にチェック・イン、市内観光は15:00出発と決まった。また、この日の夕食はチベット料理の予定だったが、「ネパール料理を食べないでどうする」という全員の意見により、変更することになった。夕食の件はOKになったが、ラビンさんは昼食(手づかみで食事ができる、とうれしそう)と出張費の精算(?)のため、いったん会社に戻った。
さて、100分ほどの自由時間ができた。でも、この短時間に街に出るのは無茶だ。かと言って昨晩はさんざん寝たから、昼寝をしようという気が起きない。Dさんが梅干しを持ってきていたので1個もらった。梅干しは胃酸過多にいいはずだ。今度海外旅行をする機会があったら、梅干しは持っていくことにしよう。食い過ぎには何より効きそうだ。そんなときにIさんから内線で「カジノに行こう」と誘われた。このホテルにはカジノまであるのだ。カジノなんて行ったことないし、バカラはルールさえわからない。だがブラックジャックならできるぞ。どんなことになるかわからないが、Dさんと僕は部屋を出ることにした。Iさんと同室のHさんもやってきて、4人で勝負!
このホテルのカジノは私服でも気軽に入れる。入り口で「Good
Luck!」と声をかけられ、とりあえず500Rs(1000円)をチップに代える。ルーレットとスロットもあるが、実はそれも遊び方に自信がない。で、予定通り(?)ブラック・ジャックへ。初めてのカジノだが、ディーラーの姉ちゃんがへただ。と思ったらカジノのディーラーはころころ代わる(癖を見抜かれないため?)。なんやかやで、500Rsは消え去った。でも1時間楽しめたからいいや。1000円で1時間なら、日本のゲームセンターと変わらない。
市内観光には2・3日目にお世話になったおんぼろタウンエース(でもエアコンがあるのだから、高級車の部類だろう)で出発。最初はホテルの部屋からも見えて、小高い丘の上にあるスワヤンブナート(目玉寺院)に向かう。途中で断水してるとかで給水車が行く手を阻み、ちょっと時間がかかってしまったが、目玉寺院に無事着いた。ここは別名猿寺院というらしく、本当に猿だらけである。寺院にはブッダの智慧の目が描かれ、カトマンドゥの街を見渡している格好だ。寺院の中は広くないが、そこでお経を読んでいる坊さんはにこやかで、観光客慣れしてしまっているようである。周囲にはおみやげもの屋が並んでいる。僕はTシャツ2枚を買った。1枚250Rsと言うので、2枚買うから400Rsにしろと言ったらあっさり交渉成立。1枚200Rsなら相場どおりだから文句はない(刺繍ありなら200Rs、なしなら180Rsが相場。byラビンさん)が、もうすこし安くできたかもしれないと思うと、ちょっとくやしい。
ダルバール広場とクマリの館を見て(説明省略。『地球の歩き方』を見よ)、ごく近くのジャガナート寺院へ。以前にネパールに来たことがあるKさんが「エロ寺院」と言ってニヤニヤしている。ラビンさんもだ。何がエロかと言えば、屋根のほうにくっついている彫刻がエロなのである。なんでもセックスのエクスタシーに悟りを求めるとかで、こんな彫刻が残ったそうな。でも、日本なら猥褻物にあたるだろう。
ここは観光の中心だからだろうか、ともかく人が多い。物売りも多い。日本円をくれという子供も多い(あとでネパールルピーに交換してくれと言ってくる。しかも日本円をコレクションしてるんだと言ってこっちに来るから、騙されてはいけない)。ヒンドゥー教のニセ修行僧もいる(一緒に記念撮影をしようとか言って、金を要求する。本物は、こちらから頼まない限り一緒に写真に写ってくれないし、金も要求なんかしない。もし一緒に写真を撮ったらお布施をしましょう)。こんなごちゃごちゃのダルバール広場を抜け、片隅にある仏像・仏画を売る店に入った。17歳と言う店の少年と価格交渉だ(ボスはH先生らと交渉中)。仏像(ガーネーシャ)をまず買ったが、これはKさんと一体づつ買ったのでうまく値引きに成功、4200Rsが30米ドル(ネパール物価で考えると高いなあ)になった。それから曼陀羅を見ていたら、こちらもむしょうに欲しくなった。少年に聞くと、あれもこれも「Best Quarity」とこちらに見せる。いったいいくつBestなんだよ!思わずこれ(適当に指差した)もBestかと聞いたら、それはGood
Quarityだと言われたのには笑った。結局閻魔大王の曼陀羅を買ったが、350米ドルというモノを300米ドルで買えた(日本円でも高いなあ)。もっとも、カードをスーツケースの中に隠しておいたから持ち合わせがなく、Kさんに立て替えてもらったのはカッコ悪かったけど。
こうして大量の買い物を終え、ネパール料理屋『バンチャ・ガール』(台所の意)に向かった。注文はラビンさんに任せ、何が出てくるのか楽しみに待つ。まずはビール(Sun
Migerというフィリピンのビールだが、これが一番うまいとラビンさんが言う)を飲むが、さすがに酒はあんまり飲みたくない。さっさとミネラルウォーターをもらった。
出てきたネパール料理の最初は「モモ」。見た目も味も、見事に餃子(けっこう小さい)である。おつまみにはいい。そしてメインのネパール料理は、大皿にごはんをまず盛って、豆スープ(何の豆?)、ホウレン草(熱いよ)、猪(これはうまい)、鶏肉(小骨が多い)、卵(これはしょっぱかった)なんかを周囲にのせて食べる。と、いきなりDさんが「ネパール人の気分を味わいたいので、手づかみで食べたい」と宣言、Hさんが乗った。するとラビンさんが教えてあげると言い、3人はまず手を洗いにいった。戻ってくるなりラビンさんの手づかみ講座が始まったが、食べ物は熱い。日本人2人が熱くてなかなかつかめないのに、ラビンさんは平気で食べている。慣れとはすごいものだ。それから、ネパールの地酒・ロキシーを飲んだことも落とせない。この酒はアルコール度数が65度、もちろん火がつく。おちょこ1杯が限界だ。
そして男のみの集団は「おねーちゃんを見に行こう」ということになった。あやしい踊りが見られるという。あやしい踊り?うふっ。いいのかな?この店の4階がステージになっているそうな。わくわくさせながら階段を昇った。あやしい踊り・・・う〜ん、嘘ではない。女の子6人(みんな20歳くらい)の踊りは腰をくねらせてはいるが、これはむしろ美しい。服を脱ぐわけでもなく、全身から女性の美を感じた。周囲は外国人(白人)観光客だらけ、女性も多い。ポカラで見た民俗舞踊の延長のようだ。店の隅にはミス・ネパールがいた(ネパール美人の条件は、細身であって、あとは何でも大きいことだそうな)のだが、お高くて近寄る気にはならない。こんなステージを1時間ほど見た。ここのオーナーとラビンさんが知り合いとかで、ラビンさんがオーナーに無理に頼んで、僕達を踊り子さん達と踊らせてくれた。女の子は可愛いし、まだ酔いは醒めていない。大満足の夕食だった。
ホテルに戻り、カジノで再勝負!印象に残っているのはピーター・フランクルに似た男のディーラーで、カードさばきはものすごい。でも弱い。このギャップが面白かったが、気付くと500Rsが1100Rsになった。明日、何に使おう?
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