考古学のおやつ

ノストラダムスの日本書紀

萬維網考古夜話 第32話 30/Jun/1999

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当サイトへのアクセスが6月29日に10000に達しました。皆さん,ありがとうございました。

最近では,ネタにされると喜ぶ方もおられるようです。かつては登場すると恥だと言われましたし,リンク集に入れてもらおうと思って連絡しても相手にしてもらえなかったりしたんですが,世の中変わっちゃったんですかねぇ。

今後も最悪の考古学サイトを目指してがんばることとしましょう。

なお,大学の先生などで,「学生が『考古学のおやつ』を覗いて困る」という方は,最新テクノロジーのPC用ソフトウェア型Vチップを研究室のパソコンにインストールするといいですよ。学生に見させたくないページを指定しておくと,そこにアクセスできなくなります(できれば当サイトは指定しないでもらいたいのですが(^^))。なお,アダルトサイトは無条件で見られなくなりますので,ご了承ください。

せっかくなので,このページからダウンロードできるようにしておきましょう。下のボタンをクリックしてみてください。


今回は考古学者にお薦めの本を紹介しましょう。タイトルにもありますが,『日本書紀』です。え,あんなの,どこまでホントのことが書いてあるかわからないって。それはその通り。でも,そんな理由で読まないなんて,損してますよ。

この数年というもの,『日本書紀』に接する機会が多くなりました。7世紀関係の資料を扱うことが多くなったせいです。もっと古い時期なら別でしょうが,7世紀を扱うには,『日本書紀』も無視できません。それまで,なんだか取っつきにくそうだし,内容の信憑性も???なので,あまり見てなかったのですが……。

むむむ?なにこれ,面白いじゃないですか。こんな面白い本,どうして今まで気づかなかったんでしょう。

何が面白いって,何と言っても,この記述の不統一性です。もう少し,編集というものはないのでしょうか。というより,こんな編集相手に虚構がどうのこうのと言ってもしかたないほどです。

はっきり言って,ストーリーとか整合性とかは,(部分的にはあるかも知れませんが)期待できないと言うか,口数が多すぎてハチャメチャとしか言いようがありません(←人のこと言うな(^^;)。『日本書紀』の前には,どうみても舌っ足らずな『魏志倭人伝』などかすんで見えてしまいます。

いったい,この書物は何人で書いたのでしょうか(いくつの原史料があったのでしょうか……でも可)。

一連の記事がバラされて編年体で配列されている(多分)ので,記事と記事の間の因果関係がわかりにくくなっています。どれとどれがつながりのある記事なのか,そのつなげ方次第で,何種類ものストーリーが作れるでしょう。その中のどれかが原史料の姿に近いのかな(それでも史実とは限らない)。

よく読むと,こことここは言い回しがそっくりだ,こことここは内容が似ているのに言い回しが全然違う,といったところがいくつも見つかります。人の名前などの固有名詞も,場所によって文字が違っていたり,同一人物にさまざまな名前があったり,……ひょっとして,同じ原史料を用いたのではないか,あるいは,同じ記事の重出ではないのか,などと勘ぐりたくなるところが頻出します。それで,「あ,この言い回しはさっき見たな」とか,「この記事,言い方が違うだけで,こちらの記事と似た出来事だな」と思って,何ページか前に戻ったり,全く飽きることがありません。

なんて面白いんでしょう。

一度この楽しみを知ってしまうと,「『日本書紀』は信憑性が疑わしいから」と言って頭っから相手にしない考古学者や,逆に,自説に都合がいい記事だけを無批判に抜き書きして喜んでいる考古学者(だ,誰(^^;?)のことが,かわいそうになってきます。『日本書紀』こそ,その天然のボケにいろんなツッコミを入れつつ読むべき娯楽作品だったのです。それを思えば,個別の記事が史実かどうかなんて,(とりあえず)どーでもいいというか,『日本書紀』の面白さとは別問題なのです(いーのか,そんなこと言って)。

ん〜。そうか。これまで文献史学の人の論文を読むだけじゃ,気づかなかったな。もちろん,学問的な成果を吸収するには文献のプロの書いた物を参照した方がいいけど,やっぱり『日本書紀』を楽しむには原文を読まなきゃ。
いや待てよ。ひょっとして,文献史学の論文がやたら難解なのは,この原文の楽しさを外部に知れないようにするためじゃないのかな(邪推)。そうか,こうして『日本書紀』の真実は隠蔽されているんだな(笑)。

この論理で行くと,考古学者の文章が,能動態だか受動態だかわからなくなっていたり,「てにおは」がデタラメだったり,同音(字まで同じ)異義語が頻発したり,表記だけで読み方の(わから)ない言葉があったり,出典を明示しないまま他人の著作を引用してたりするのも,考古学の面白さを業界の外に知らせないようにするための陰謀だったりして。いやー,気づかなかったなぁ,そーなんですか。(←こんな注釈つけたら,また敵を増やすだろ(^^;)

ところが,こんなこと言ってる場合ではないのでした。だって,この愉しい読書の時間を打ち切って,原稿書かなきゃいけないんですから。

なんと,もったいないことです(高校の時の,古文の授業の現代語訳みたいだな(^^;)。論文に書くには,「『日本書紀』にはこれこれという記事があって,考古資料と一致してるのさ」(口調はデフォルメ(^^;)みたいな言い方にしなきゃいけませんよね。でも,正直そんなもんじゃないし,そんな表現では間に合わない面白さを知ってしまったので,名残惜しかったんです。

今回お話ししているような意味合いで『日本書紀』が「面白い」と言うことは,読む人の主観でそこから好き勝手な世界を読みとることも可能ということです。ですからなおさら,『日本書紀』の中に見出したストーリーを安直に史実とみなすわけにはいきませんね。文献のプロのアドヴァイスを受けましょう。(←明らかに,自分がしたことと矛盾したこと言ってますね(^^;)

そんなわけですので,皆さん,『日本書紀』を読みましょう。あ〜,そこ,そこ。また読みもしないで理屈だけ言わないの!


上の方で,「Download!」のボタンをクリックしなかった方のために申し上げておきますと,「最新テクノロジーのPC用ソフトウェア型Vチップ」は架空のソフトであり,ボタンを押してもダウンロードできません。悪しからずm(_ _)m。

もし,実在のそのようなソフトをご存じでしたら,こっそり教えてくださいね。

(6/Jul/1999補足)教育機関用に,サーバに用いるフィルタリングソフトが実際あるみたいですね。

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