考古学のおやつ

お砂糖の考古学・前篇

萬維網考古夜話 第61話 22/Aug/2000

お晩です。みなさんお元気ですか。考古学のお勉強してますか?

いきなりで恐縮ですが,日本語で難しいのは,やはり敬語。特に尊敬語謙譲語の使い分けです。これらがぐちゃぐちゃになっている人も多く,かくいう私も,心許なかったりします。

簡単そうで,それでいて難しいのが,接頭語の「お」と「ご」。相手側のモノとか状況に「お」「ご」を使うと尊敬語になって,自分側について使うと謙譲語になるとか。う〜ん。単なる丁寧語だと思ってたのに,奥が深いぞ。

「手元」という言葉は,相手側については「お」をつけて「手元」と言えますが,自分について「私の手元」とは(多分)言いませんね。もし,「お」が丁寧語なら,どちらにでもつけられるはずです。……と言う説明で,いいのかな(^^;?
(←だったらアレか?「お気に入り」ってのは,Microsoft Internet Explorer が,ユーザーに尊敬語使ってるってのか?)

ともかく(^^;(←あ,ごまかしたな),敬語って難しいですね。このサイトも(一応)敬語体だらけですが,大丈夫なんでしょうか。

尊敬語謙譲語か,よりも,もっと低レベルな敬語の悩みは,「お」を使うのか,「ご」を使うのか,どっちかわからない場合です。聞くところによると,後に続く漢語が音読みなら「」,訓読みなら「」なんだそうです。なるほど,音読み同士と訓読み同士,それぞれつながるってわけですね。

ところが,すぐに例外に気づくことでしょう。今回の本文の一行目,「バン」(晩)も「ゲンキ」(元気)も「ベンキョウ」(勉強)も,み〜んな音読みじゃないですか。以前,お砂糖だけが例外だと聞いた気がしたのに,けっこう例あるなぁ。

そこで,今回は「」の後に砂糖のような音読みの漢語が続く言葉を「お砂糖ことば」と呼ぶことにして,色を変えて表示します。


この,お砂糖ことば,どんな場合に多いのでしょうか。まず,気づくのはお砂糖お豆腐お肉など,お料理関係の言葉です。

ご飯も赤くなればお赤飯ですし,お味噌お醤油はお台所(←これは重箱読み)に欠かせません。そう言えば,胡椒も欠かせないと思うんですが,胡椒には「お」と「ご」,どっちをつけるのでしょうか?お胡椒?変ですよね。じゃぁ,ご胡椒?これじゃ,なんだか盛大に壊れてるみたいで,いただけません。胡椒の立場はどうなるんでしょう。

お野菜ではなんと言ってもお大根がありますが,ニンジンに「お」や「ご」を着けたのはあまり聞いたことがないし,ゴボウ(牛蒡)に至っては,おゴボウじゃしっくりこないしごゴボウじゃ,もう何だかわかりません。お大根は特別なんでしょうか。

そう言えば,スーパーのお徳用のウィンナーは,タコやカニの形になって,お弁当に入ってます。でも,たまには出来合いのパック入りお惣菜でごまかされたり(^^;。

こうしてできたお料理は,お膳お碗に載ってます。

お菓子なら,お煎餅お饅頭
お茶で言うと,お抹茶お紅茶。これまた緑茶玄米茶・麦茶・ウーロン茶には「お」や「ご」がつかないような気がします。訪問先で麦茶が出てきたら,敬意を払われてないってことかな?
お酒関係では,お銚子とかお酌を挙げておきましょう。

こんなこと考えてたら,お気楽お食事もしてられません(^^;ゞ。


お料理関係以外では,お掃除お洗濯お裁縫……,なんだか古風な女性像のようになってきました。ひょっとして,お砂糖ことばの源流は,家庭にいてお財布の紐もしっかり握った封建的女性像にあるのでしょうか。そういや,お産も女性の特権ですね。

結論を急がず,別の方面を見ると,お遊戯を初めとして,子供の教育に関するお砂糖ことばがあります。
最近はお受験最優先でそれどころではなさそうですが,古くはお稽古ごとというと,算盤(これは「お」や「ご」がつかないのかな?)とかお習字が定番でした。お行儀よくしておかないと,熱いお灸をすえられたりして。


お洒落関係(どっかのTV番組みたいだ)では,お洋服お砂糖ことばですが,和服呉服はどうするんでしょう。お和服は発音しにくいし,ご和服じゃごわごわして着てられなさそう。お呉服も変だしご呉服は論外。お洋服だけ特別とみた。(お着物という表現があるから,必要ないんでしょう)

年中行事関係では,お盆お正月お砂糖ことばです。お年賀お歳暮お中元は欠かせませんね(自分のことは棚に上げて言ってます(^^;ゞ)。

これといくぶん重複するかもしれませんが,宗教関係にもお砂糖ことばがあります。
お釈迦さまから始まって,お地蔵さまにお坊さん。お経お題目お線香お堂お棺お葬式お式という言い方もありますね)。お百度参りにお布施お賽銭……ん?キリスト教やイスラム教にはお砂糖ことばがないのかな?

神仏がらみのお砂糖ことばは,中世以降の民衆への布教・浸透から生じたのでしょうか。


しかし,現代のビジネスマンにもお砂糖ことばは生きています。……と言うところで,10キロバイトを越えてしまいました。一向に考古学の話にならないような気もしますが,ビジネス用語のお砂糖ことば以降は,後篇に譲ります。

え?最近は後篇で待たされるパターンが多いって?た,確かに……(^^;。でも,今回は1週間後に後篇が出る予定ですから,それまでご利口さまに……じゃなかった,お利口さんにして待ってるんですよ(^^。


[第60話 頭突き兄弟|第62話 お砂糖の考古学・後篇|編年表]
白井克也 Copyright © SHIRAI Katsuya 2000. All rights reserved.