考古学のおやつ

お砂糖の考古学・後篇

萬維網考古夜話 第62話 29/Aug/2000

前篇では,音読みなのに接頭語の「お」がつく言葉をお砂糖ことばと呼んで,類例を集めてみましたが,遺漏がありました。数日前の長岡宮跡のニュースを聞いていて気づいたのですが,年中行事関係のところにお内裏さまが抜けてましたね。雛祭りなんて,いまだかつて縁がないので,すっかり頭から抜けてました(^^;ゞ。

さて,お題の意味がいつになってもわかりませんが,とりあえず前回の続きから始まります。今回は,私が勝手に作ったお砂糖ことばを説明なく挿入していますので,お気をつけて。


さて,ビジネス関係(だけでもないですが)のお砂糖ことばです。

お調子者であるだけで営業が勤まるはずもなく,お辞儀の角度やさまざまなお作法など,入社してすぐに接遇の研修を受けるというのもありがち。これでお給料もらってるんだから,気合も入ろうというもの。

その点,公務員は接遇ということば自体を知らなかったりするからなぁ(^^;。

お電話お得意さまを尋ねるお時間を打ち合わせて……,でも,ご時世のときは「ご」だなぁ。時計(変な読みかただ)のときはどうするんでしょう?

そうそう,御(おん)社ということばもお砂糖ことばでした。

お返事お名刺についてはご返事ご名刺と,どっちが一般的か……。ひょっとして,お砂糖ことばは増加の傾向にあるのでしょうか。そうすると,前篇でお話しした,お砂糖ことばと封建社会との関係,という話は成り立たなくなるのかな?


日常会話はお砂糖ことばだらけで,最近2000円も登場したお札(さつ)もそうです。でも,訓読みお札(ふだ)だと意味が変わるので,注意が必要です。

今回の冒頭で出て来たお元気お砂糖ことばですが,お病気とは言いません(いや,最近は言うかな?)。でも,ご病気のときは,お医者さまに見てもらわなきゃ。

お気楽お気軽お砂糖ことばですが,ご気分お気分とは……う〜ん。こんなことばっかり考えていると,なおさらわからなくなっていきます(^^;ゞ。

お見舞いに行ってお加減を伺ったら,おいとまの時には「お大事に」が定番ですね。

さらに,お礼お宅お世辞あたりを挙げておきましょう。


反語的,というか,人を揶揄(やゆ)するような場合にも,お上品お下劣お粗末とか……。まぁ,使う場面次第という気はするものの,やはりお砂糖ことばがあります。お砂糖ことばじゃないですが,お荷物(これも,考えてみると変な読み方)なんてのも,お揶揄な雰囲気が漂うでしょう。


う〜ん。何だか,お砂糖ことば古風な女性につながるとばかりも言えなくなってきた気がしますが,実は,前篇をサーバに転送する直前になって,私はある発見をしていたのです。それは親族呼称

お父さん,お母さん,お兄さん,お姉さん,お爺さん,お婆さん,お孫さん……。

伊勢物語内田美由紀さんのご指摘によると,「お母さんは「母上」と「おっかあ」の合成による明治期の造語ということです。ありがとうございますm(_ _)m。

そう,なぜかお婆さんだけがお砂糖ことばだったのです。これで,お砂糖ことばお婆さん→古風な女性の三段論法が完成だぁ\(^^)/。

御(おん)大将お公家さんお代官さまにお大尽……この辺も,決して現代的なものじゃありません。

そうか,ビジネス関係にお砂糖ことばが多いのは,日本のビジネスが封建的なのね(^^;。


お砂糖ことばを,まず使われる場面で分類してみましたが,別の見方もできないでしょうか。

「お」のつく音読みの漢語は,最初の子音に似たような発音が多い気がします。前回と今回登場するものと,それ以外も含めて約100個集めた(既存の)お砂糖ことばを見ると,[s]音(例:お賽銭)や[sh]音(例:お醤油),[j]音(例:お上手)で始まる漢語がお砂糖ことばになりやすいようですから,そこに何か,日本語の音韻との関連があるかもしれませんね。


さて,お察しの通り,長い前フリの後,短い本題が続くというお約束の展開になってきました(^^;。

わが考古学業界にはどんなお砂糖ことばがあるか……と考えると,これといって思いつかないんですよね。上で考えたお砂糖ことばの傾向から考えると,それらを欠く考古学は,(古風な)女性にはアピールしないし,子供には無関係で,民衆にも浸透していないし,現代ビジネスマンには見放されて,日本語の音韻にも沿わないということでしょうか(う〜ん,シャレで言ってるつもりなのに,けっこう当たってる気もする(^^;)。

というわけで,お節介かもしれませんが,お砂糖ことば満載の,みなさんにアピールする(?)考古学のお教室に,ちょっとお邪魔してみましょう。

ここではお嬢さまたちがお師匠さまのもとで考古学のお稽古をしています。

お発掘のとき,お現場(←これは重箱読み)でのお写真やら,おトラのすえっぷりも,なかなか堂に入ったものになってきました。

今日は土器のお実測で,それぞれがおナデおケズリお沈線を……

また,お莫迦なことを書いてしまった……。


[第61話 お砂糖の考古学・前篇|第63話 現説と試験の季節|編年表]
白井克也 Copyright © SHIRAI Katsuya 2000. All rights reserved.