零戦21型 プロフィール機



設計
このプロフィール機は、空冷エンジンのプロペラ機の特徴である、円形の機首カウリングを立体的に表現しました。
空気抵抗が紙飛行機の飛行性能を悪化させるため、本来は平面にすべきところですが、
1/72スケールモデルのような楽しみ方もしたいので、あえてワンポイントだけ立体化しています。
胴体は軽量化のため、機首から水平尾翼前縁まで、中央を貫く棒状の主軸に全体の強度を持たせ、
実機と同じ外形の胴体は、左右の紙一枚ずつで主軸をはさむ構造にしました。
写真では薄い胴体の日の丸のあたりで、内部の主軸が透けて見えます。

立体化した機首カウリングは空気抵抗が増えないように、内部は空っぽです。

主翼は実機と同じ外形で、断面は「へ」の字に折り曲げてキャンバーを付け、揚力と強度を増しています。
「へ」の字の頂点の位置と高さは、翼弦長の前縁から40%の位置、翼弦長の3%の高さとしました。
- キャンバー=翼断面の上にふくらんだ湾曲
- 翼弦長=主翼の前縁から後縁までの長さ
水平尾翼は実機と同じ外形ですが、その面積は主翼面積の36%まで一回り大きくしており、それに伴い全長も延びました。
二宮氏の著作「日本で生まれ育った高性能化飛行機」の計算式より算出した水平尾翼容積比 Kh=0.83となり、
同じく最適な重心位置を求めるグラフより、主翼前縁からの重心位置 CG%=65%となりました。
二宮氏の著作で推奨されている、優れた滞空性能を得るための水平尾翼容積比と比べると、
このプロフィール機は主翼と水平尾翼の間隔、および水平尾翼面積が小さいことになりますが、
できるだけ実機に似せるため、それはやむを得ません。
最適な重心位置 CG%=65%をめやすとして、機体の製作と調整を進めました。
垂直尾翼は実機と同じ外形で、そのままでも拡大した水平尾翼の面積の1/4となり、一般的なめやすの通りになりました。

主翼の上反角は実機より大きめにとり、ローリングや横滑りに対する安定性を高めました。
主翼と水平尾翼の取付角度は、完成時には両方ともゼロですが、水平尾翼の前縁を少しねじり下げることで、
主翼の迎角よりも、水平尾翼の迎角が小さくなるように調整しました。
また、水平尾翼にもキャンバーを少しつけ、揚力尾翼として機体を浮揚させる役割を持たせています。
これらの調整により、テスト飛行における最終的な重心位置は、主翼前縁から60%の位置に合いました。
- 上反角=主翼の付け根から翼端に向かって上がる角度
- ローリング=機体の左右の傾き
- 取付角度=胴体の基準線に対する角度
- 迎角=機体の実際の進行方向に対する角度

空冷エンジンのプロペラ機は、実機の機首には重いエンジンがあるため、主翼中央で重心が合います。
しかし、紙飛行機にはエンジンがないため、そのままではテールヘビーになります。
重心を合わせるには、機首におもりを多く積み込む必要がありますが、機体が重くなってしまいます。
そこで、軽いおもりでも、てこの原理でバランスがとれるように、
飛行時のみ機首のプロペラスピナーを前方へ引き出すからくりにしました。
これは着地時のショックを和らげ、立体化した機首カウリングの破損を防ぐ効果もあります。
飛行時以外はプロペラスピナーをカウリング内部に押し込み、もとの実機に近い外見に戻します。

ディスプレイスタンドとして主脚、落下増槽も作りました。機体を乗せてプラモデルのように飾ることもできます。
飛行性能には影響しないため、胴体側タイヤカバーや空気取入口も加え、カウリング周辺をディティールアップしました。

PDFファイル:zero21.pdf
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図面は表計算ソフトのExcelで作りました。図形描画機能のフリーフォームで描いた図形をたくさん積み重ね、
部品ごとにグループ化しております。
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作り方
(機体)
- 主翼
主翼前縁から突き出ている部分を主翼下面の方へ折り、貼り合わせる。
続けて(2)胴体内側 主軸〜(12)垂直尾翼まで進み、その間は主翼を平らに置いて、のりをよく乾燥させる。
※(12)垂直尾翼を貼り付け後、主翼を(5)(6)胴体左右に貼り付ける。
まず、(5)(6)胴体左右の主翼のりしろの凹凸を、はさみの刃など固い道具でつぶし、平らにならす。
次に、主翼が歪んでいないことを確認し、主翼中央の青い実線に切れ目を入れる。
続けてキャンバーをつける。主翼中央から日の丸の手前まで、貼り合わせた主翼下面の後縁が、
そのままキャンバーの頂点と長さのガイドになる。定規をあてて弱い折り目をつける。
翼端はそのままでも失速を防ぐねじり下げの状態になる。
最後に青い点線に沿って上反角を付け、胴体の主翼のりしろ後ろ半分から先に貼り付ける。
主翼の中心線が胴体に沿って、キャンバーの折り目が胴体と直交するように、左右均等に貼り付ける。
上反角のめやすは、実機のイメージに合わせて最低限、翼端とキャノピーを同じ高さとするが、
紙飛行機のローリング安定性のためには、これよりも大きい方が望ましい。
上反角を決めたら、その角度のまま主翼のりしろ前半分も貼り付ける。
この時点で上反角は固定され、変更はきかなくなる。
※(13)主翼 下面補強へ進む。
- 胴体内側 主軸
点線に沿って2つに折り、貼り合わせる。
- 胴体内側 主翼取付け部
点線に沿って2つに折り、貼り合わせる。上下の向きは直線の側が上、主翼キャンバーに沿って細くなる側が下。
- 機首内側 主軸補強
点線に沿って3つに折り、貼り合わせる。続けて中央の点線で2つに折る。
(2)胴体内側 主軸の先端を補強するようにおおい、貼り付ける。
- 胴体左側面
機首の上下のカウリングのりしろ、中ほどの胴体のりしろ、胴体主軸の先端の間にある、4本の青い実線に切れ目を入れる。
続けて青い点線に沿って折り目をつける。
主翼のりしろ中ほどの青い実線に切れ目を入れる。
続けて主翼のりしろを「へ」の字のキャンバーに沿って、外側に向かって折り目をつける。
水平尾翼のりしろを、外側に向かって折り目をつける。
(2)胴体内側 主軸と(3)胴体内側 主翼取付け部を、
のりしろに干渉しないように、仮組みしてから貼り付ける。
(貼り付ける位置)
- (2)胴体内側 主軸:胴体先端から水平尾翼のりしろ折り目までを結ぶ線
- (3)胴体内側 主翼取付け部:胴体の主翼のりしろのキャンバー前半分の折り目に沿った線。
上下の向きに注意。
- 胴体右側面
機首の2本の青い点線に沿って折り目をつける。
主翼のりしろ中ほどの青い実線に切れ目を入れる。
続けて主翼のりしろを「へ」の字のキャンバーに沿って、外側に向かって折り目をつける。
水平尾翼のりしろを、外側に向かって折り目をつける。
(5)胴体左側と左右対称になるように、仮組みしてから貼り合わせる。
その際、後で(12)垂直尾翼を挿し込む部分にはのりを付けず、開けるようにしておく。
(5)胴体左側の機首中ほどののりしろを、(6)胴体右側へ回り込むように貼り付ける。
- 機首外側 主軸補強
点線に沿って3つに折り、貼り合わせる。続けて中央の点線で2つに折る。
(5)(6)胴体左右の先端を補強するようにおおい、貼り付ける。
- 機首 おもり
黒いプロペラシャフトと白いプロペラスピナーが一体になっており、飛行時の重心を合わせるおもりの機能がある。
プロペラシャフトを(2)胴体内側 主軸の太さに合わせて丸め、ほどけないように貼り合わせる。
おもりを抜き差ししやすく、かつ着地時の衝撃ですぐ外れないように、きつさを調節する。
最初はわずかにゆるめに作り、その内側に1〜2周、必要なだけ貼り足すとよい。
プロペラスピナーは巻き付けてテープで仮止めしておき、テスト飛行でおもりの重さが決まってから貼り合わせる。
- 機首 カウリング
青い点線に沿って内側に折り、貼り合わせる。
カウリング内側の余白はマジックで黒く塗りつぶし、紙の白い切り口も黒くリタッチすると、美しく仕上がる。
スティックのりの曲面などを使って、丸く曲げぐせを付ける。
- 機首 カウリング下部
丸めた(9)機首 カウリングに、(10)機首 カウリング下部を貼り付けてつなぎ合わせる。
その際、機首カウリング下部の青い点線から先の部分は、貼り付けずに残しておき、前方へ出したままにする。
(9)機首 カウリングを(5)(6)胴体左右の機首上下のりしろに貼り付ける。
残しておいた(10)機首 カウリング下部の青い点線から先を、
(5)(6)胴体左右の機首下のりしろに、かぶせるように貼り付ける。
黒いカウリングは、紙の白い切り口をマジックで黒くリタッチすると、美しく仕上がる。
- 水平尾翼
まず、(5)(6)胴体左右の水平尾翼のりしろの凹凸を、はさみの刃など固い道具でつぶし、平らにならす。
次に水平尾翼を中心線に沿って、水平に貼り付ける。
- 垂直尾翼
まず、垂直尾翼の裏面に方向舵の線を、表面の線を透かして見ながら描き込む。
次に垂直尾翼のりしろを、左右交互に折る。
最後に垂直尾翼の前端と後端を、(5)(6)胴体左右の貼り合わせずに残しておいた部分に挿し込み、貼り合わせる。
マイナスドライバーの先端にスティックのりをすくい、
胴体左右内側の貼り合わせる部分に塗り込むと美しく仕上がる。
垂直尾翼のりしろを、(11)水平尾翼の中心線に沿って、垂直に貼り付ける。
※(1)主翼に戻り、主翼を(5)(6)胴体左右に貼り付ける。
- 主翼 下面補強
(1)主翼を(5)(6)胴体左右に貼り付け後、
主翼下面のキャンバー前半分の、上反角の大きさに応じて左右に開いた部分を補強するように、
主翼 下面補強を貼り付ける。
- 機首 おもり先端
テスト飛行でおもりの重さが決まってから、まず、仮止めしていた(8)機首 おもりを貼り合わせる。
次におもり先端を貼り付け、余った部分をはさみで切り取る。
着地の衝撃で傷みやすいので、補強のため2枚重ねておく。
(ディスプレイスタンド)
- 胴体下部
外側の点線に沿って内側に向かって折り、貼り合わせる。
続けて中央の点線に沿って、上反角に合わせて折り目をつける。
- 左右主脚
点線に沿って2つに折り、貼り合わせる。続けて外側の点線で下方へ折る。
中央の点線で上反角に合わせて折り目をつける。
(15)胴体下部の点線に沿って貼り付ける。
- 落下増槽
左右を貼り合わせる。(15)胴体下部の点線に沿って貼り付ける。
- 主脚カバー右側
(16)左右主脚の右外側に貼り付ける。
- 主脚カバー左側
(16)左右主脚の左外側に貼り付ける。
- 左右タイヤ内側
(16)左右主脚の左右タイヤ内側に貼り付ける。
(ディティールアップ)
- 機首 空気取入口
青い点線に沿って折り目をつけ、四角く貼り合わせる。
(9)機首 カウリング内側、(10)機首 カウリング下部の上に貼り付ける。
マイナスドライバーの先端にスティックのりをすくい、
貼り合わせる部分にピンポイントで塗り込むと美しく仕上がる。
- 胴体側タイヤカバー
まず、左右タイヤカバーの根元に折り目をつける。次に中央に上反角に合わせて折り目をつける。
最後に(15)胴体下部に貼り付けた(16)左右主脚の中央に重ねて貼り付ける。
- 胴体 空気取入口
この部品を使う向きは、青い実線の切取り線が内側になる。
まず、空気取入口のとがった後ろ側の先端にある、小さな三角形ののりしろを内側に折る。
次に空気取入口の中ほどの、青い実線に切れ目を入れる。
縦に半分に割った釣鐘型になるように半円形に丸め、内側の重なった部分を貼り合わせる。
空気取入口ののりしろを(15)胴体下部の先端に貼り付ける。
マイナスドライバーの先端にスティックのりをすくい、
貼り合わせる部分にピンポイントで塗り込むと美しく仕上がる。
飛ばし方
まず、基本的な考え方は「紙飛行機のはなし」より
紙飛行機の飛ばし方
をご参照ください。
このプロフィール機についての補足説明:
- 機首おもり
機首おもりを操作時に機体を持つ場所は、最も強度のあるカウリング直後の胴体を持つ。
手投げ発進時に持つ胴体の日の丸のあたりは、この操作には強度不足で胴体がねじれ、やがて折れてしまう。
機体の完成後、テスト飛行の前に、機首おもりを1cmほど前方へ引き出し、
重心の調整をする。
その際、指で支えて機体のバランスを見る位置は、主翼前縁から60%とする。
テスト飛行時の飛び方を観察し、白いプロペラスピナーの巻き付ける量で、おもりを加減する。
- 揚力尾翼とテスト飛行
テスト飛行の第一段階では、水平尾翼にキャンバーを全くつけず、飛び方を観察する。
主翼上面と下面が2枚重ねになったキャンバー前半は、翼中央から翼端にむかって少しねじり上げるように、指でしごく。
ゆっくり手投げ発進し、機首から突っ込むことなく、なだらかに滑空するように調整する。
第二段階では、水平尾翼にキャンバーを少しつける。
水平尾翼の揚力が機首下げに作用するので、水平尾翼の前縁を少しねじり下げ、水平尾翼の迎角を小さくする。
それでも機首から突っ込む場合は、主翼前縁を少しねじり上げ、主翼の迎角を大きくする。
より良い滞空性能を得るため、最適な重心位置は主翼前縁から60%で変えないことが望ましい。
おもりの位置を前方から後方へ少し戻して微調整することはあるが、
機首おもりの巻き付ける量を加減することは、できるだけ避けたい。
ゆっくり自然に滑空させた時に、第一段階よりも強く機体が浮揚する手応えが得られるようになる。
第三段階では、手投げ発進時の速度を上げる。
屋内であれば、低くしゃがんだ状態から、機体を外側に45度くらい傾け、少し上方へ角度をつけて、
速度を上げて手投げ発進する。機体を傾けるのは、急上昇して天井にぶつかったり、失速を避けるため。
この発進方法により、上反角効果で機体の傾きを水平に戻しつつ、天井すれすれまで上昇して水平飛行に移り、
部屋の反対側のカーテンレールに着地できるようになれば、屋内でのテスト飛行は完了となる。
(2025年4月24日)