9.巧言令色鮮(すく)なし仁 昨年9月、国民の大きな期待を背負って政権交代が実現しました。 しかし、・・・不慣れであることを差し引いても予想を遙かに超える無惨さ。 このままでは、国家レベルで行われた史上最大規模の悪徳商法と歴史の1ページに記録されかねないと思いはじめました。 それは次に挙げるように、悪徳商法でよく使われる手法が使用されているからです。 順に見てみましょう。 1)誇大広告 一番皆さんの心の中に残っておられ、また期待されているのは多分、選挙前からテレビや街頭で繰り返された「自民党政権・役人が政官癒着でムダづかいをしているせいで、今のような状況になった。必要なところにお金が行っておらず、天下りなど役人のために使われている。民主党はこれを変えて必要なところにお金を流す」という主張ではないでしょうか。 例えば、選挙期間中民主党幹部はこうおっしゃっていました(役職は当時)。 「4500という天下り団体に2万5000人の官僚が天下り、そこに12兆円もの国民の税金がつぎ込まれていくしくみがあると明かし、「こういうムダ遣いを徹底的に見直さなければならない」と重ねて訴えた。」(鳩山党首。8月17日街頭演説民主党HPより) 「天下り団体に12兆円もの国費が流れている。この税金のムダ遣いをなくすことが私たち民主党が目指すものだ」(菅代表代行。7月31日街頭演説民主党HPより) 普通に聞けば、12兆円ものムダがあると思うでしょう。 当然、市民の皆さんは、そんなムダづかいをしていた自民党・役人はけしからん、となるでしょう。 ところが現実は・・。 それを遡ること2ヶ月前(6月17日)の国会での党首討論で鳩山党首(当時)はこう言っています。 「私は12兆円すべてが問題だと言ってるわけではありませんで、その中の8兆円のうちの半分が随意契約だと申しあげたんですよ。ちゃんと、しっかりと聞いていただかないといけません。」と言っているからです。 12兆ではなく、8兆円でもなく、その半分が随意契約で、それが問題だと国会の場で言っているのです。 しかも「12兆円すべてが問題だと言っているわけではありません」とも。 どちらが真実なのでしょう。 実は、この12兆円の根拠は、民主党が行った「国の事業仕分」というタイトルの調査です。 この内訳はこのpdfファイルの最後の表で見ることができます。 ちょっと見ただけでも、財投計画に基づく融資が4.2兆円とか、いろいろ入っています。国会で鳩山党首が言ったとおり、12兆円すべてが無駄ではないというのは民主党はわかっていたんですね。 数字が全然違うとわかっていながら、大勢の市民の皆さん(いわばお客さん)の前では12兆円のムダと何度も繰り返し、宣伝する。 これは明らかに誇大広告でしょう。 2.過去忘却 (1)子ども手当 ○全額国庫負担について 政権交代から1月経った10月中旬の総理演説。 「財源の一部の負担を地方に求める声もあるが総理自身は「全額国が支払うべきだと思っている」と述べ、「いずれにしても最後には国民の皆様方に望んでいただける形でしめていく。どうか子ども手当てを楽しみにしてほしい」と訴えると大きな拍手が沸き起こった。」(10月20日付け民主党HP「医療専門家の視点を加え医療政策の立て直しを 総理、「国民の生活が第一。」の政治実現を浜松で改めて宣言」より) しかし、そのわずか2ヶ月後、地方負担継続決定・・。 ○子ども手当と引き替えの税制控除について 7月19日「サンデープロジェクト」に関する自民党の発言について、民主党はHPで正式に抗議文を出しています。 「(自民党が作成した)フリップには「所得税と住民税控除の廃止→年間14万2000円の増税(負担増)」とありますが、民主党が主張している配偶者控除と扶養控除の廃止は所得税のみであり、住民税は含んでいません。」とか。 で、「基本的な事実関係すら誤ったフリップをテレビ番組に持ち込み、誤解と偏見に満ちた批判を繰り返して国民に誤解を与えたことは極めて不当であり、看過できません。今後は正しいデータに基づく内容のある政策論戦をお願いしたいものです。貴殿および自民党対し強く抗議するとともに、同様の批判やフリップ・広報物の作成・使用を厳に慎まれるよう求めます。」(7月23日付民主党HP「【抗議文】7月19日放映「サンデープロジェクト」での発言について」より) しかし、22年度税制改正(財務省サイトより)。 扶養控除について、「※個人住民税についても同様の措置が講じられています。 (参考)●扶養控除(年少):33万円 → 廃止」と書いてあるのは私の目の錯覚でしょうか・・。 (ちなみに配偶者控除は今後見直しとか。) ○在外外国児支給の問題などは、児童手当と同じで自民党の負の遺産だ 在外外国児支給問題など「欠陥」が明らかになるにつれ、国会などでは事実上児童手当の拡充であり、「児童手当と同じ」とする風潮がありますが、それは違います。 なぜなら子ども手当法は、児童手当法の第1条(目的)にあった「家庭における生活の安定に寄与する」という文言を落としているのです。 事実、長妻大臣はこう言います。 「子ども手当については、所得制限を我々は設けておりませんので「生活の安定」ということの文言は入っておりませんで、社会全体で子育て、子育ちを応援していく、こういうような趣旨というのを前面に出させていただいております。」(22年3月5日衆議院厚生労働委員会) 子育てで家計が苦しい家庭を支援するのではなく、収入の多寡にかかわらず育児を社会全体が支援するものに変わった、というわけです。 さらにに長妻大臣は児童手当とは別物だとはっきり言っています。 「見切り発車ということではございませんで、初年度においては、これは事務作業の継続性や負担軽減ということもあり、児童手当の支払いのスキームは活用させていただく、ただし子ども手当ということで支給するということにさせていただいているところであります。」( 平成22年3月12日衆議院厚生労働委員会) 「児童手当のスキーム(枠組み)の活用をするだけで、見切り発車でもないしっかりとした法案だ」としているのです。 別の法律であるなら、当然、在外外国児支給問題は子ども手当法案の中で解決するべきであり、ましてや指摘を受けてもそれを放置した以上、児童手当云々というのは、無責任かつ責任転嫁にすぎません。 ○実は児童手当拡充には反対していた 坂口元厚労大臣はこう言います。 「私たちが、五千円、五千円、一万円という児童手当をつくるだけでも、それはばらまきだといって、これはもう大変な批判を浴びてきた、そのたびに。拡大するたびにばらまきだというふうに言われてきた。それに我々もじっと耐えてきたわけですね。」 「児童手当を拡充していくごとに、皆さんがここで賛成をしてくれるかどうかを見たときに、ほかの各党、共産党さんや社民党さんも、不十分ではあるけれども賛成するといって賛成してくれたけれども、民主党だけは、もうただの一度も賛成されたことはなかった。これだけは私の心の中に焼きついて離れないわけであります。怨念として残っている、本当に。」 それに対し、長妻大臣はこう答えました。 「民主党の反対の理由の大きな点は、もっと拡充した方がいいのではないのか、不十分ではないのかという理由がございました。」( 平成22年3月12日衆議院厚生労働委員会) 他の野党は「不十分だけども賛成」したのに、民主党は「不十分だから反対」してきた。 にもかかわらず、今回、事実上の拡充法案を提出。 長妻大臣は自分が何を言っているかわかっているんでしょうか? いくらなんでも詭弁が過ぎると思います。 (2)暫定税率 平成21年7月14日の本会議で鳩山党首(当時)はこう言いました。 「我が党は道路財源の暫定税率撤廃を主張していますが、自公政権は、手をかえ品をかえ、道路財源を死守してまいりました。形ばかりの一般財源化でごまかそうとしておられますが、暫定税率は十年間延長され、一般財源化と呼ばれるものはほんのわずかでしかありません。」 「道路予算はあり余るほどあるのに、なぜ一方で社会保障費が毎年二千二百億円も削られるのか、到底理解はできません。無駄な道路などのばらまきを続けて消費税を増税するのか、税金の無駄遣いを一掃して国民生活第一の政治を実現するのか、国民の選択にゆだねるべきであります。」 →「ガソリン税などの暫定税率につきましては、熟慮に熟慮を重ねた結果、現行の10年間の暫定税率は廃止をするものの、税率水準は維持することといたしました。」(平成21年12月25日首相記者会見) ??? 暫定税率を廃止して、税率水準維持というのは、廃止したことになるのでしょうか? (形式的とはいえ)一応10年の暫定とされていたものを恒久化することを、一般には単なる増税というのではないでしょうか? (3)官僚批判 ちょっと手前味噌ですが・・。 ○「官僚任せのムダ遣い・天下り天国となったこの国を変え、そして官僚が机上の計算で結論を出した政策や冷たい政策ではなく血の通った温かい政策をつくり、それを実行することでこの国を作り直すと表明した。」(民主党HP:21年8月12日付け「血の通った温かい政策をつくり実行 鳩山代表が21世紀臨調主催の党首討論で」より) ○「長期政権が続き、長い間のしきたりが繰り返され、官僚が保身に向かうなかで、天下り、渡り、といった税金をムダ遣いする構造ができ上がっていった」と指摘。「わたりにわたって退職金3億円。こんなことは冗談じゃない」と代表は不快感を露にし、「当たり前の政治を作り直そう」と聴衆に呼びかけた。(民主党HP:21年8月19日付け「国民のための政治を実現していく 栃木県宇都宮市で鳩山代表」より) ○「人の命より箱もの行政優先の官僚主導の政治を改め、友愛精神、友愛社会の実現、一人の命も粗末にしない政治をつくる」と約束した。(民主党HP:21年8月23日付け「一人の命も粗末にしない政治をつくると約束 鳩山代表」より) ※個人的にはこれが一番許せない。 ○「官僚任せの政治による誤った政策の一例として、財政再建を優先させ社会保障費を削減した結果、病院や医師や看護師、ヘルパーさんなどが不足するという地域医療の崩壊をはじめ、障がい者の自立を妨げる障害者自立支援法やお年寄りを虐げる後期高齢者医療制度が生まれたと指摘。「冗談じゃない」と怒りを露にし、政権交代により、財務省主導の政治から皆さんお一人おひとりの気持ち、命を大切にする政治へと転換していくとした。」 (民主党HP:21年8月27日付け「ともに政治を変えていこうと呼びかけ 石川県小松駅前で鳩山代表」より) ○官僚任せの政治の失敗の極め付けが後期高齢者医療制度であると訴え、民主党は皆さんとともに政策を作り上げることで、決してこのような政策を打ち出すことはないとした(民主党HP:21年8月29日付。「歴史を塗り替える勇気を 東京都池袋駅前で鳩山代表」より。 いやー、なんかもう、誰が見ても(聞いても)諸悪の根源は官僚であるかのような叩きっぷりです。私の被害妄想でしょうか? ところが選挙後後、8月30日。民主党HP:21年8月30日付け「国民のさらなる勝利に向けて」によると 「「官僚たたき」「役人たたき」、そういった誰かを悪者にして、政治家が自らの人気をとるような風潮を戒め、政治家自らが率先垂範して汗をかき、官僚諸君の意識をかえる、新たな国民主権の政治を実現していきます。」 ・・・・ ・・・・ ・・・・ ちょっと何言ってるかわからない・・。 |