0.はじめに 住基ネットについては私も反対です。 しかしマスコミの報道は「我々は番号で呼ばれたくない」といった感情論や事実をゆがめた報道による反対が目立ちます。 このことは国民全体の誤解を招きます。こういった「手段を選ばずに誤解させ」反対に導くという手法は、正しい情報を伝えるべき(特に大手)マスコミの姿勢として許せません。 そこで、ここではそのあたりを整理した上で反対論を書いてみたいと思います。 1.住民基本台帳法とは? 住民基本台帳法とはそもそもなんでしょうか。 住民基本台帳法とは、市町村が台帳を作成することにより、その市町村の住民であることの証明及び把握をすることで、行政事務及び行政サービスを効率化するためのものです。
(参考)住民基本台帳法 さて、最近問題になっている「住基ネット」とは何かといいますと、これは全国の市町村がそれぞれに管理していた「住民基本台帳」を都道府県共有のサーバで一括管理し、他の市町村でもその情報を抜き出すことができるようにする、というものです。 用途としては、 さて、そういった住民基本台帳法の一部を改正する法律(平成11年法律第133号)が大きな問題となっております。
1.前提となる個人情報保護法案がないとプライバシーが守られない といったところだと思います。 これらは基本的には法律の理解不足(勉強不足か故意かは別として・・)が原因だと思いますので、ここでご説明したいと思います。 私はこの法案に反対ですが、論点がずれているものや感情的な反論は問題の本質をついていない上、誤解を国民全体に植え付ける可能性があると考えます。
この論を行政のプロであるはずの市町村が唱えているのは驚きです。 というのも、行政には法令や条例に基づく法施行事務と、法律に基づかない政策的案件があります。
法令に定められたことを誤解していると言うことは、行政マンとして、「法令を十分把握せずに適当に文句を言っている」ということなのです。 例えば、弁護士が、担当している事件に関する法律をよく理解していないということなのです。その結果、最終的に被害を受けるを受けるのは弁護を頼んだ人です。 これと同様に、法律に携わる公務員が法律を把握していないということは、すなわちその地方公共団体の住民の方が被害を被るということなのです。 逆にこのようなことを平気で述べている市町村の主張がいる住民の方は、その首長(あるいは局長など)を疑ってかかるべきです。もちろん市町村には法律のプロが多数います。きっとその声が伝わっていないのでしょう。ベテラン軽視、パフォーマンス重視の弊害です。 それではどこがおかしいのか、具体的に見てみます。 この主張から、平成14年に通常国会に上程された論議を呼んだ個人情報保護法案(以下は単に「個人情報保護法案」と略します)を彼らは読んでいないで適当に「個人情報保護」を主張しているのが明白になってしまうからです。 では、問題の住民基本台帳法と個人情報保護法案の条文を読んでみましょう。 もし、公務員以外の住基ネットを扱う者(今は財団法人地方自治情報センター)が違法に個人情報を漏洩したらこういう罰則になります。 (役職員等の秘密保持義務等) 一方「個人情報保護法案」です。 (安全管理措置) これを見ると、明白です。 住民基本台帳法がみなし公務員規定(第三十条の十七第三項)及び第四十二条で二年以下百万円以下の罰金であるのに対し、個人情報保護法案は第三十九条でまず是正勧告(同条第一項)、それでダメなら是正命令(同条第二項)、それでもダメで初めて中止命令なのです。しかも罰則は命令違反に対する罰則であり、違法行為に対する罰則ではないのです。 そう、個人情報保護法案の方が甘いんですね。 ですから、「個人情報保護法案がないから・・」なんて言うのは詭弁です。あっても現行のままなら改正後の住民基本台帳法の範囲内で十分なのです。そういう人々は法案を十分に読んでいないと断言できます。 仮に個人情報保護法案が不備だ(甘い)、というなら「個人情報保護法案を強化せよ」という話が出るはずです。しかし市町村からは出ていないわけです。 今は全国市長会をはじめ、様々な要望の方式があります。極論すればマスコミを味方に付ければ何でも国にもの申すことができるわけです。 しかし、していない。 彼らの主張の裏である「個人情報保護法案があれば大丈夫」というのが実は、単に国への責任転嫁だけであり、全然大丈夫ではないのです。
さらに市町村が「機密の漏洩懸念」といっているのはその所属の都道府県と財団法人地方自治情報センターそして他の市町村が対象なんです。
しかし、それを「信用できない」というのであれば、やはり、地方公務員の故意による守秘義務違反を死刑にでもする、という地方公務員法改革案を全国市長会会などで出すべきです。
※クラッカー等のネットそのものに関する問題ももちろんありますが、それを言い出すとオンラインシステム自体が成り立たないので、ここでは取り上げません。ついでに言えば私は個人情報についての電子政府化は反対の立場なのでなおさらです。今回は法律論に特化させてください。 要は、個人情報保護法案をきちんと読んでおり、「住民の個人情報を守る」という意識があるのであれば、法案提出の前後から「罰則が甘すぎるので地方公務員法を強化すべき」という意見書を出すはずです。しかし、どの市町村も出していません。 いかに、今回の不参加の「理由付け」が場当たり的かの証明です。 さらに、例えば国分寺市では5日の運用開始時に市長自らが回線を切断するとか。 これをパフォーマンスといわずして何というのでしょうか。 不満であれば事務的に回線を接続しなければいいのです(法律違反ですが)。そして淡々とそれを市民に伝えればいいだけです。
しかも、市民にパンフレットを作成して説明するそうです。単純に費用が@300円だとしても30万人都市なら実に1億円の出費です。 いやはや。 この市長は平成11年の法案成立から今までなにやってきたのでしょうか?普通の市には「市報」というものが月に1回発行されていると思うのですが。これまでそれに掲載していればタダではないですか。 パンフレットの費用は税金であることを認識してほしいと思います。 そういった市長が「お上にたてついた」と言うことでヒーロー扱いされるのは明らかに情報操作であり、危険なことだと思います。 むしろ、それまで必要な策をとっていなかった上、無駄な1億もの支出を行い、さらには法案も理解していない愚かな市長ということではないでしょうか。 最後に、最も重要な点を。 個人情報保護法案は広く社会全般に対するものです。他方、住基ネットでカバーするべき対象は実は公務員(みなし公務員も含む)とクラッカーだけなのです。
それすら理解していないのでは?という疑いを私は持っています。 |