4.公的年金の考え方と誤解
まず、意外に誤解の多い公的年金の基本的考え方からご説明します。 公的年金は基本的には「世代間負担」ですから、今自分が納めた保険料が自分のために使われるのではありません。 将来年老いた自分の生活のための年金は将来の子供たちが納めた保険料によってまかなわれるのです(例外的に任意加入の国民年金基金や農業者年金は少し違う考え方−私的年金の考え方−を用いています)。 ですから、財政上の考え方は簡単にいうとこうなります。 収入(保険料収入、積立金の運用収入、国庫負担)=支出(年金支払い) この両者を均衡させるため、適当な保険料収入や年金額、国庫負担額(要は税金)を決めていくということなのです。 上の式にもう少し解説を付けると次のようになります。 収入(保険料収入、積立金の運用収入、国庫負担)=支出(年金支払い) ですから、右辺の「受け取る高齢者」が増えれば増えるほど、左辺の収入も増やさなければなりません。
よく言われている「将来の高齢者負担に耐えられない」というのはこういうことです。 ※運用については、金利が上がればそれだけリスクも負うわけですから一定以上は無理 に収入を上げようとすると元も子もなくなる可能性があります。 一方で高齢者が増えてきたにもかかわらず、税金または現役世代が支払う保険料収入を上げなかった場合はどうなるでしょう。そうです。右辺の「高齢者が受け取る年金額」を減らないとやっていけないわけです。 今の公的年金の問題は、ここにあります。現役の負担は限界があります。しかし、収入を年金に頼っている高齢者の負担を大きく減らすこともまた難しいというわけです。 この原理を十分に理解している人は、どこを減らしてどこを増やすかを真剣に検討しています。
つまりよほどの空想主義者でない限り、年金に投入するための税金を何らかの形で増やすことによってしか年金制度は維持できないと考えているわけですね。このあたり政治家の言い回しに気をつけてみるとおもしろいですよ。 この「国庫」についていろいろ説明している政党もあります。 この財源を例えば法人税とする場合、企業から取ることになるので、これは企業の利潤の減少を生み、結局はサラリーマンの給料に響きます。 行政改革でという意見については、まずすべきは国会でしょう。国会は1日開くだけで1億かかると言われています。空転してもかかります逮捕者で何もしていなくても年数千万円ももらえます。国会を効率よくし、国会議員の数を減らせば費用は相当浮きます。 国家公務員の削減については、現状でもかなりひどい(民間からの出向でまかなっているところもあります)状態なので、これ以上の削減を行うならいわゆる「センセイ案件」の禁止法を作成し、思い切った地方への権限委譲が必要です。さらに議員立法=ざる法の汚名を返上していただいて、きちっと「立法府」の仕事をして貰いたいものです。そして国会関係業務や国会議員の関係の仕事を減らすことも必要です。ただ、国家公務員の給料は平均で年700万くらいですから1万人減らしても年700億くらいでしょう。
更に年金資産として保有している100兆円もの積立金を取り崩せばよい、という意見もあります。財源不足が一時的なものならそれで良いでしょう。しかし今後の高齢化社会を考えるといつか取り崩せなくなってきます。しかも取り崩せば取り崩すほど運用のための原資が無くなるわけですから、それだけ運用収入が減っていきます。ですから長期的に見ると、良いことではないわけです。
このような問題を抱えている中で改革を行うのは容易なことではありません。ですから年金改悪法案ということでマスコミや一部政党が宣伝していますが、特に収入が1千万円分も減る、という点なども含めて、年金改正の内容をよくチェックし、その宣伝が選挙を前提にした「人気取り」のための「パフォーマンス」であることをご理解いただきたいと思います。 例えて言えば、痛くない虫歯を持つ子供に対し、「歯医者に行け」という子供にとって嫌われること言って、嫌われるのが怖いから口当たりの良いことを言う、本当に子供のことを考えていない政治家が多い、と言うことです。 具体性のある代替案のない批判は単なる人気取りです。そういう政治家がテレビで取り上げられやすいので、我々はよくチェックする必要があります。 特に、政府全体の「財政再建」を叫んでいる政党が年金に限っては「財政悪化すべし」と主張しているのは全く理解できないところです。 それでは、その「問題」の年金制度改正とはどういうものなのか、次で見てみようと思います。
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