4.国会議員の仕事は新聞に載ること?マスコミと国会議員の仕事を勘違い
典型例:長妻昭 −政府を糾弾することで自分を「正義派」とアピールする。しかし、「批判」のために事実を 曲げたりする上、自分の本来業務「議員立法」はほとんどしない勘違い議員
(1)はじめに〜質問主意書とは? 質問主意書とは、国会議員が内閣に文書質問をする文書をさします(国会法第74条)。
質問主意書は、内閣に回答責任があるために閣議了承を必要とします。そのため、 資料を集める→省内で素案セット(必要に応じ各省に発注・協議等)→内閣法制局審査→大臣までの決済(説明)→閣議提出 という順序を踏まねばならず、事務的にはとても面倒なものです(基本的に閣議案件は面倒です)。 ですから、通常の国会議員は
それらで対応できない場合のみ、質問主意書ということになりますが、その場合でも質問主意書の冒頭には案件の現状と問題点の指摘といった質問主意書を出す理由がきちんと数行にわたって書かれています。 つまり、「国家公務員は国会議員の質問に対しては誠実に回答する義務はあるが、他方質問のために本来の職業をおろそかにさせるのは国民生活上適切ではない。よって質問主意書は必要最小限とする」というのが国会議員の良識と立法府のプライドなのでしょう。
(参考)国会法
(2)立法より政府攻撃〜売名行為のために政府不信を強めるのはおかしい それでは本題です。 長妻氏のHPの書きぶりを見ると、「○○新聞に掲載」「○○テレビで報道」とあり、、マスコミに取り上げられ、政府にその「おかしなこと」(?)を直させるのが成果だと考えているようです。 確かに国会議員も行政監視等を行ってもおかしくはありません。しかし、国会議員の第一の仕事はやはり「立法」「政策立案」です。 この勘違いは、「主な立法」として長妻氏のHPで取り上げられているものがわずか5件の一方、質問主意書は150件を超えるというところからでも明らかです。
質問主意書は、数を乱発すればいいというものではありませんし、逆に質問主意書を全く出していない国会議員が仕事をさぼっているというわけではありません。質問主意書を出さない議員のほとんどは資料請求や関係者の勉強会、あるいは現場を歩いて情報を収集し、政策立案のための努力をしているからです(むしろそちらが王道)。 さらに問題なのは長妻氏が誇る質問主意書の中身です。 これらの対応も国家公務員の業務の一つでありますが、それが必要性をはるかに超える膨大なものであった場合、国政調査権の横暴、権利の乱用(濫用)と言われても仕方がないと思います。本来業務をおろそかにせざるを得ないほどのこれに伴う残業代やタクシー代、コピー代、fax代、郵便代その他の費用はすべて税金だからです。
その象徴的なものが、質問主意書では普通あるはずの議員側の問題意識と現状分析がなく、いきなり「過去○年間の件数をお示しいただきたい」や、「××に関するワースト100をお示し願いたい」などを連発する手法です。 このような問題がある質問主意書について、ここで分類してご説明したいと思います。 1)国民生活に何の役に立つのか分からない無意味な統計 例1)「ガン検診における胃ガン発見率に関する質問主意書」
→当たり前ですが、仮にデータがあったとしても、一般的に老人が多い医療機関ほど発見率は上がりますから、発見率の高さ=名病院なわけではありません。 例2)「電磁波(超低周波・ELF)の子どもへの影響に関する質問主意書」
→全国の送電線の地図だけでも莫大な量ですが、それに沿って小学校などを一つ一つチェックしていくのは想像を絶します(特に保育園は無認可のもありますし、また保育園等の「等」は何を指すのでしょう?)。すべての位置を入手してどうするのでしょうか? 例3)「全国警察署の犯罪発生件数及び検挙率に関する質問主意書」
→田舎ののんびりしたところで殺人事件がゼロ件だったのが1回でも起きれば増加率無限大で1位になります。都会で20件殺人事件があって翌年30件でも50%増。どちらが危険な土地かはいうまでもありません。無意味なベスト10です。 例4)「交通安全に関する質問主意書」
→ワースト100の意味や、「危険度」「地点」「周囲の状況」などの定義が不明な上、3の「選定した詳細の基準をお示し願いたい」は意味が分かりません。基準がないのに1の質問に答えられるわけありません。それは質問者(長妻氏)が示すべきものです。
例5)クルマの車名別乗員死亡率に関する質問主意書
一 車名別(通称車種名、モデル年、メーカー名も提示頂きたい。車両台数が一万台に満たないものを除く)に、「一万台当たり乗員死亡事故台数」の多い順に「一万台当たり乗員死亡事故台数」「一万台当たり乗員死傷事故台数」「一万台当たり運転者死者数」「車両台数」をお示し願いたい。注意書きがあれば、お示し願いたい。
ちなみに長妻事務所は平成13年にこの財団のデータを元に集計・公表していたらしく、それを質問主意書を悪用して役人にやらせるとなると、国民のためではなく、「自分の事務所の業務を役人に下請けに出そうとする公権濫用」だと思います。
以上、いかがでしょうか。これらは、正直言って、きちんとその統計の意味を考えた上で必要な部分を要求しているとは思えない上、この統計結果を受けて国民生活をどのように改善するのか全く分かりません。
2)国会議員という当事者意識のない嫌がらせ?質問 「全国警察署の犯罪発生件数及び検挙率に関する質問主意書」で全国の警察署の中で検挙率のベスト10とワースト10を出させています。また、その対策を問うており、当然ですが「警察活動の強化と地域住民との連携などの対策をしている」と答えています。 で、長妻氏は気に入らなかったらしく、今度は「全国警察署の検挙率格差に関する質問主意書」を出してきました。 それを見ると・・まず最初の3つの質問が(1)検挙率が差がある理由を説明せよ(2)問題があると認識しているか(3)解決策はどうするか、というものです。 特に(1)(3)など警察庁の担当課長を呼んで話を聞けばいいだけの話で閣議請議などの煩雑な手続きを必要とする理由はありません。
さらに、質問は続きます
この莫大な作業を意味するものは一体なんでしょうか。実は今回の質問主意書の(1)〜(3)の質問は(件数自体少数の警察署は比較の対象に入れるのがおかしいと感じたらしく)平成14年度の認知件数2000件以上としているのです。
とどめは
これは質問と言っていいのでしょうか?「検挙率格差」に関する質問主意書ではないのでしょうか。自分で(1)〜(3)にあるように検挙率を問題にしておきながら、検挙率という指標に問題点があるか?と聞くというのは正直言って・・。 3)マスコミをにぎわすためなら平気で嘘をつく さらに悪質なのは、国家公務員批判をしたいがために、嘘まで平気というところです。 例えば「官僚の退職金及び年収などに関する質問主意書」について、「日本は税金で金をもらう人」の給与が高すぎる、おかしい・・などとHPで批判をしています。
しかし、質問主意書を見ると
となっているわけです。 要は、我々下っ端(ノンキャリア)も含む退職金や年収ではなく、民間で言えば取締役クラスの平均の数字を出させて、「公務員の給与は高すぎる」というわけです。 冗談じゃないです。
(4)結局役人任せ 国会議員として求められるのは、マスコミに取り上げられる、取り上げられない如何にかかわらず、国民のためどういったアウトプットを出すかだと思います。 例えば、国家公務員法がおかしいのであれば国家公務員法改正案を立案する。政令以下がおかしいのであれば、改正案を突きつけるなど具体的な対応を行って始めて国会議員といえると思います。 政府を糾弾するのは氏の言葉を借りれば「世直し」だそうです。しかし、「世直し」というのは自分で解決策を示すなり解決のための行動をすることではないでしょうか。 ましてや、マスコミ受けをねらうあまり、きちんと勉強を積み重ねておらず、物事の表層部分だけつまみ食いしたとしていうのは論外だと思います。 この点は、彼の5本の議員立法のうちの一つ、「歩きたばこ規制法案」にも象徴されています。
(参考) 長妻氏提案の「軽犯罪法の一部を改正する法律案」(「歩きたばこ規制法案」)
※ちなみにこの条文では他にも問題があります
いずれにせよ、こんなザル法では、HPの「具体的な政策もある」「実行する自信もある」というセリフが泣いているのではないでしょうか。 (5)終わりに 「国家公務員の中で心あるものは私の主意書を喜んでやるはず」という長妻氏は語っていたそうです。 しかし、現実は、一公務員としてまじめに業務に励んでいるものほど「本業を妨げる上に、先のない莫大な無駄な作業に多くの職員を巻き込みやがって!他にやり方がないのか!」と激怒しています。 ある質問主意書では集計のために段ボール何箱かの資料が必要でしたが、そこまでさせて、改善のための立法や政策などを作ってくれるならいざ知らず、単に「マスコミに取り上げられた」と喜んでいるなら、いったい誰のために働いているのでしょうか。「政府は改善せよ」なら、別に質問主意書ではなくても良いでしょう。 やはり、記者上がりで、現場の苦労を知らない方の限界なのでしょう(例えば霞ヶ関では記者はキャリア官僚としか話しませんから)。 国民の目線で考えるのであれば、まず自分が国民の立場に降りてくるのが先ではないでしょうか。 メールを積極的に送ってくる一部の人たちやマスコミの言い分が国民の声なのではないと思います。そういうことをする暇が少ないサイレントマジョリティーの国民の声を聞くことが大事なことだということをご理解いただきたいものです。
批判ではなく、行動を。そのために国会議員になったのではないでしょうか。 類似例:政府攻撃が政治家の仕事だと思っている一部の方
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