考古学のおやつ

1999年7月の発見

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1999年7月26日(月)

回顧と展望

史学雑誌』(財団法人史学会発行)の「回顧と展望」が載る5月号は,一番よく売れるそうです。「同じ年に出た」というだけの共通性で論文を集め,論評するのは大変そうですし,批判もあるようですが,かといって無視するわけにもいきません。

実は,私が「回顧と展望」を読むとき,主に目を通すのは日本考古の部分でして,自分の専門に近いはずの朝鮮古代の部分は,無視はしないまでも,日本考古の方とは違う気持ちで読んでいます。

というのも,日本と違って,朝鮮は旧石器時代から統一新羅・渤海時代まで,考古学も文献史学もひとりの執筆者が書いているので,ページ数の割に分野が幅広すぎて,しかも,執筆者が文献史学者であることが多いからです。

もちろん,文献史学の人が書かれること自体は,悪くありません。文献の人の書かれた論文は,普段なかなかチェックできないし,また,それらの論文を読みこなす能力もない者としては,読書ガイド替わりに重宝しています。
問題は,文献の人が考古学の論文に対して書いている論評が時々「???」な内容だったりすることです。

まず,言及する論文の選び方がよくわりません。なぜこの論文を取りあげるの?とか,なぜあの論文が抜けてるの?とかいうことが多いんです。その上,書かれている論評がトンチンカンだったりします。わかるのは,「この人,考古学がわかってないんだな」ということだけ。う〜ん。「回顧と展望」の執筆さえ頼まれなかったら,バレずにすんだのにね。

もちろん,考古学に対して的確な論評がなされていることもありますし,逆に,「考古の人が文献史学に安易に発言すると,きっとトンチンカンに見えてるんだろうな」という教訓にもなりますが。

少なくとも私に関しては,教訓が生かされてないようです(^^;ゞ。

もっと個人的な理由(私怨とも言う(^^;ゞ)もあります。私が書いたものを取りあげてくれないんです(こんなに書いたのに(--#)。
まぁ,私がこれまで書いたのは資料紹介が多いから,「回顧と展望」で載らないのは当然で,仕方ありません。

そんなわけで,今年もあまり期待していなくて,日本考古とか古代の部分をチェックした後,ついでに朝鮮のところも目を通すことにしました。

むむむ???

わあーーー,意外!「東京国立博物館保管新羅緑釉陶器」に言及されています。
言及してもらえるのは,個人的には嬉しいんですけど,これが載ってしまうと大問題ではないですか?あれって資料紹介なんですよ。論文書いて載らなかった人の立場はどうなるんでしょうか。基準はないの?

ううん,「回顧と展望」での朝鮮考古学の位置づけは,ますますやっぱりよくわからん。

やはり,時々執筆者自身が書いているように,朝鮮考古と朝鮮古代に執筆分担を分ける方がいいのかも知れませんね。

それより,いつまでたっても納得できないのは,どうして「回顧と展望」の掲載順って,日本,中国,朝鮮の順なんでしょうか。目次で朝鮮が次のページになって,必要部分が表裏に分断されてるから,私にとっては不便きわまりないんですけど。

あ,でも,学生時代に史学会の蔵書を見せていただいたことがあるから,こんなこと言っちゃいけませんね(^^;ゞ。(もう遅い)。

1999年7月17日(土)

腹立たしいこと。最新機種のコピー機……いつの間に『枕草子』になったんでしょうか(^^;ゞ。ここは「今週の発見」です。お休みの予定でしたが,結局今週も追加。

うっとうしい未来

どうしてこう,よけいなことを言ってくれるんでしょうか。A4で100%って言ったら,A4で100%でコピーすりゃいいのに,言うこと聞かないと思ったら,

コピー機「原稿の大きさが違います」

そーいうコピーをしたいんだ!!なんでそんなこと言われなきゃいけないんだ?A4判の本(当然開くとA3の大きさになる)の片方のページだけコピーするんだから,A4でいいの!

そうかと思うと,「字が読める向き」に勝手に補正(「補誤」とでも呼ぶべきか)するもんだから,おかげでページの向きとできたコピーの紙の向きが矛盾して,無駄な余白はできるは,必要なところは切れてるは,さっき原稿の大きさにケチつけたクセに,何やってんだ?

悪評高いこのコピー機,要するに,機能が多すぎるのです。それも,何のためにあるのかわからない機能ばかり。しかも,最も悪質なのは,この変な機能がデフォルトでonになっているものだから,知らずに気軽にコピーしようとした人は,意味不明(意味がわかっても,対処法まではわからない)のエラーに悩まされるのです。

誰か「このコピー機,頭が良すぎますね」

それは違うと思いますよ。はっきり言って,バカなだけだと思いますけど。きっと,この誰かさんは,誰にでも優しいのか,よっぽど性善説なんですね。

それにしても,何て無駄な,しかも迷惑な機能なんでしょうか。いろんなキーをいじってみて,この,よけいな文字方向補正機能をoffにする方法をやっと発見しました。これで一安心。でも,「原稿の大きさ」はどうすればいいのでしょうか。1枚ごとにエラーが出て,そのたびにスタートボタンを押し直しているから,枚数の2倍ボタンを押さなきゃいけないじゃないですか。あ〜うっとうしい。

これまたいろんなところをいじって(機能が多すぎて,なかなか把握できない),対処法を発見しました。あ,なぁるほど,原稿サイズをA4に設定しておけばいいのかぁ。これで解決だねー(^^……って,これ,解決じゃないでしょうが(--#。
以前は,紙のサイズと倍率だけでコピーできた(100%なら倍率もいじる必要なし)のに,原稿サイズを設定しないとエラーを頂戴するようになったんだから,明らかに退化ですよ。退化。

もう一つ,コピーしてて気づいたのが,1枚のコピーが終わって,次がコピーできるようになるまでの時間が異様に長いこと。ボタンを押しても,なかなか受け付けてくれないんです。いらいらするなー,もう(--#。

よく見ると,どうやらコピーするデータを一旦メモリに格納するんですが,コピー後にメモリをクリアするのに時間がかかってるんです。そんなのクリアするのになんでこんな時間かかるの?メモリ残量を99%から100%にするだけじゃん。だいたい,残り99%もあるんだから,その空きメモりに次を入れりゃいいじゃん。
え?無理言うなって?だったらメモリに格納しない昔の方式に戻しなさいよ。その方が早かったんだから。

必要性のない機能やら,新たな方式やら盛り込んで,結果的に以前より使えないコピー機なってんだから,一体どんなつもりで開発してるんでしょうか。

別の誰か「まるで*********(OSで有名な企業)が作ったみたいだね」

まったくです。いらん機能がデフォルトでonになって,肝腎の文章を書く機能がショボいワープロとか,まさにそれですよね(よけいな機能をoffにする方法を苦労して見つけだすと,いくぶん快適な設定になるあたりが情けない)。もし,これを進歩とか言うんだったら,やっぱり何か違う気がします。

何年か前まで憧れ夢みた未来って,こんなんだったっけ?こんなことのために発展してきたわけ??

ドラえもん』でも,未来から通信販売で買った機械が不良品で……という話はありますが(何巻だったか忘れた−手元に資料なし),タケコプターがバージョンアップしたらよけいな機能がいっぱいついてて,しかもバグだらけだからのび太くんが空の果てまで飛んでったとか,そういうエピソードは(少なくとも日常的では)なかったでしょ。

というより,『ドラえもん』での未来の道具の登場は,掟破り(未来の技術に頼る)のようでいて,実はとっても良心的ですよね。
まず,何かの理由(ジャイアンにいじめられるとか)で,のび太くんが何かの技術を必要だと訴えると,ドラえもんが,その意に叶った便利な道具を四次元ポケットから出す。それは確かに便利だが,のび太たちが逸脱した使い方をして,ひと騒動……。
どうしてこんなことわざわざ指摘しなきゃいけないのか,情けないのですが,つまり,必要なときに,対応した道具が出てくるってところが大切なんですよ。勝手に便利さを主張した道具が一方的に存在してのび太くんを翻弄する,という図式は(たまにしか)ないんです。

これ,すごいことです。だって,ドラえもんの道具は22世紀の製品だから,現代から想像もつかないくらい進歩してるはず。なのに,のび太くんの必要に対応してるんですよ。それとも,22世紀ともなると,需要を無視した技術開発(開発してしまえば需要は後からついて来るという考え)は克服されたのかな?

いや,作品世界の中はそうだけど,見方を換えて,作品『ドラえもん』にとっての未来って何なんでしょう?もともと,連載の前週まで「引き出しの中から出てくる」以外に設定が決まってなかった(らしい)この作品にとって,未来は未来でなくてもよかったはずです。そこでは,のび太くんの必要に応えることの説明の意味しかありません。そう,必要に応えることの方が本来だったんですね。そして,『ドラえもん』が始まったころは,「必要に応えてくれる何か」と「未来」を重ね合わせても違和感なかったのでしょう。

でも,実際にいろんな便利な道具が出てくると,「ん?これがホントに未来?」と首をひねらずにはいられません。だって,必要(かどうかわから)ないんだもの。せいぜい「頭が良すぎる」とでもおだててやるしか仕方がないくらい。

それにしても,「考古学のおやつ」って,GLAYの半月後にドラえもんが登場するんですね。何か必要性があったっけ(^^;ゞ?


1999年7月11日(日)

東武動物公園駅で40分待ちましたが,初めて群馬県の伊勢崎市に行きました。波志江中宿遺跡で土器作りの粘土採掘坑を見てきたので,さて,そのレポートを……,あれ?

ない!!遺跡を見てきたレポートを書くコーナーがないぞ,「考古学のおやつ」には。なんて考古学サイトだ。どうしたらいいんだ。

う〜ん。とりあえずきまぐれNEWSLINKには載せたけど,ここは文が短いし,口調も固いな。萬維網考古夜話は予定が詰まっているし(その割には準備が追いついてないですが(^^;)……。そうすると,たぬぼり探偵社に新コーナー設置か?でも,遺跡の紹介に「たぬぼり」じゃ語感が悪すぎる(^^;ゞ。ホントに,どーすりゃいいんだ?

そうか,こういう分類不能の短い話題のために今週の発見があるんだった(^^。安心安心。

遺跡見学した話が分類不能になる考古学サイトなんて,やっぱりなんか変(^^;ゞ。

ひと夏のS字甕

律儀というか,何というか,きれいな箱形の採掘坑でした。1.5m×3m×2mだそうで,落ちたら大変そう。

すごいのは54号粘土採掘坑跡。写真パネルや配付資料によると,土層断面から,隣の採掘坑の排土が投げ込まれたさまがリアルにわかります。……ん?待てよ。それじゃぁ,もし隣りに後の時期の採掘坑がなかったら,埋まらないままなのかな??

聞いてみると,自然に埋まるにまかせた採掘坑もあるそうです。手近に適当な以前の採掘坑があったときに,土捨て場に利用しただけなんですね。と言うことは,埋めなきゃいけないものではなかったわけです。雨とか降ったら壊れそうな気もしますが(実際,梅雨時の調査の上に,ほとんどの採掘坑を掘り上げているので,地山にヒビが入っていた)。でも,粘土の部分が崩落した例は少ししかなかったようです。そういう質の土なんでしょう。

採掘坑の中には,採掘後,S字状口縁台付甕を底に置いたそうです。一方では甕を安置しながら,一方では隣の穴を掘る時に埋まってしまう……なんか不整合な気が。あ,そうか,甕を安置してから埋まるまでにある程度の時間があればいいのかな。

隣からの排土で埋まり始める以前に,薄い自然堆積が見られる例もあるようです。配付資料の54号粘土採掘坑跡も,そんな風に見えるような気がしなくもないような《否定の連続》……。やはり,時間差があるのかな。

この採掘坑,雨季(季節を乾季と雨季に2分する場合)には作業が危険だし能率が上がらないでしょう。冬で土が凍るときにも作業しにくいでしょうから,やはり真夏あたりが怪しいところです。1シーズンの内に1基(または数基)を掘り上げて,最後のお祭り(?)まで終わらせ,翌年は前の採掘坑をついでに埋めたりしながら別の採掘坑を掘ったんじゃないでしょうか。

S字甕とかはよくわからないので,私には判断がつかないのですが,採掘坑は50年か100年くらいの時間幅があるようです。で,今のところ70基が確認されているわけですから,ここで想像を逞しくすると(←とっくに逞しくなってるだろ(^^;),ひと夏に1基だったりして。

この辺の話は,私が現地で勝手に考えたことですし,聞き違いもあるかも知れませんので,埋文事業団の正式な見解を待ちましょう。

現場のみなさん。ありがとうございました。暑い中,お疲れさまですm(_ _)m。

恥ずかしい話ですが,今回,初めて「伊勢崎」が「いせさき」だと知りました。「いせざき」じゃなかったんですね。あれは「伊勢佐木町」の方か。しかし,イニシャルSのクセにサ行音の発音が苦手な私には,つらい地名です(^^;。

波子とか敬川とか下府注:「しものふ」だったら夜臼の近く……あんまり近くもないかな?)なら読めるんだけどねぇ。

正解:はし,うやがわ,しもこう……あ,夜臼は読めますよね(^^。

あ,多分来週の「発見」はお休みするかも知れません。

(1999年7月17日補足)お休みしませんでした(^^;ゞ。

1999年7月4日(日)

6月30日,遅く帰宅した私は,集中豪雨のニュースを見るために,TVをつけました。NHKニュース9は,スポーツコーナーでした。横浜ベイスターズが20点取ってリードしてました。スポーツコーナーが終わって,豪雨のニュースになるかと思ったら,画面にGLAYが出てきました。JALの東京−函館便に彼らの写真をつけた機体が飛ぶというニュースです。

あ,……JALにGLAY……。

何でしょう。何か,記憶にひっかかるものがあります。う〜ん。何だっけ……。

空飛ぶGLAY

1996年の夏。3年前です。当時福岡に住んでいた私は,何度も福岡と東京の間を往復していました(その往復の結果,東京に移ることになりました)。
その間に,友人の披露宴に出席したり(そのついでに土器の話をしたり),東京学芸大学(小金井市)に文化財科学会を見に行ったりしました。ガルーダ・インドネシア航空(Garuda Indonesia -The Airline of Indonesia-)の飛行機が福岡空港で離陸失敗して下月隈C遺跡に突っ込んだのもこのころでした。

移動の飛行機は,なぜかJALを使うことが多かった気がします(当時はマイルを溜めていたわけではないですが)。飛行機の中では,何もすることがありません。

離陸の時,正面のスクリーンに外の風景が映って,最初は前方を映しているのが,離陸の瞬間に真下を映しますよね。
ひょっとして,下向きの画面に切り替わったときにガルーダ機の残骸が映るんじゃないかと,スクリーンを見守っていましたが,このときのフライトでは,カメラが切り替わらず,すでに雲だけになった前方を映し続けていました。

やはり,刺激が強そうだから,避けたんだな。

と思っていると,今度は正面のスクリーンで「けさのNHKニュース」が始まり,トップニュースでいきなり燃えさかるガルーダ機が映ったりして,ほとんど肝試しのようなフライトです。

さて,じっと座っているばかりなので,イヤホンで音楽でも聴くとしましょう。そのとき,聞こえて来るままに繰り返し耳にしていたのが,そう,GLAYの曲だったのです。それまで,GLAYという名さえ知らなかったのに,このとき強く印象に残りました。燃えるガルーダとともに。

その曲が主題歌に使われていたというTVドラマも全く見たことがなかったのですが,飛行機の中で聞いた印章が強かったのか,その曲「BELOVED」が,私の初めて買った音楽CDとなりました。え,意外?気色悪い?そりゃ悪かったですね(--#。

自分でも,やっぱりちょっと気色悪いんですけど(ミもフタもないな(^^;),ニュースを見ていて思い出しました。


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白井克也 Copyright © SHIRAI Katsuya 1999-2019. All rights reserved.