考古学のおやつ

花開け! 考古学コラム

萬維網考古夜話 第11話 2/Feb/1999

最初、ちょっとだけ前話に関連したお話をします。

きまぐれNEWSLINKにも載せておきましたが、鳥取県は、淀江町(2005年3月31日から米子市)のシンポジウムへの補助金を打ち切りました。上淀廃寺の復元整備を目指す催しなのですが、出席者に文化庁岡村調査官や、国立歴史民俗博物館佐原館長のような妻木晩田遺跡群の保存論者がいることを嫌ったようです。鳥取県が全面保存断念を発表する直前に淀江町長が上淀廃寺と妻木晩田遺跡群を有機的に関連させた整備を要望したことも、関連するかも知れません。こんな形で「上」の機関の権力を発動されると、足腰の弱い市町村なら靡かざるをえないでしょう。なんてこと、するんだろうな。


気分を変えて、2月4日は立春。よく、暦の上では、なんて申しますが……ってのは別の機会にお話しするとしまして、今日は立春直前企画として、少し明るく軽い話題をと考えてます。

以前もお話ししたかも知れませんが、この萬維網考古夜話は、情報発信ではとうていほかのサイトにかなわないと思い、意見発表なら個性を出せるだろうと始めたコーナーです。自分で現場をやらない私は、自分をネタにするしかありませんしね。おかげさまで、毎週多くの方に閲覧していただいてます。以前は大学の方にはほとんど相手にされてなかったのに、このコーナーができて以来急増し、最近は大学からの閲覧が非常に多くなりました。でも、実験室で電極つけたサルかなんかが閲覧してるんだったら、ヤですけどね。脊髄ガエルとかだったら、もっとイヤ(^^;。

ただ、大学の人がいっぱい見てるって言うのは、嬉しい一方で、誤算でもあるんです。最初、どうやらこのサイトの閲覧者は素人さんが多いみたいだと思ったので、素人さん向けの話題のつもりだったんです。まぁ、媚びるのが嫌いな私のことですから、どうしてもマイペースなものになるとはいえ、大学の人が見てる予定じゃなかったんですよ。それで、内容とか、悩んだりして。でも、悩んでも結局もとどおり気にしなくなるあたり、やっぱり私らしいところでしょう(^^。

お気づきの方も多いと思いますが、萬維網考古夜話って、外崎則夫さんの人気PCコラム、がんばれ!!ゲイツ君のパクリなんです(もちろん、話題はオリジナルですよ)。前から、考古学にもこういうのが欲しいなぁ、と思ってまして、自分で作ってしまったという次第です。

「考古学のおやつ」は南河内考古学研究所(南河考研)の分家みたいな始まり方をしまして、私自身、いまだに南河考研の常連です。そんなわけで、南河考研にあるものは作らないようにしていたし、だいたい、私自身が南河考研で満たされているものを、わざわざ自分で作る必要もなかったわけです。逆に、よそのサイトにないものは、自分で作った、というわけです。それまで半年くらい、迷走してましたけど(^^;ゞ。

始める当初は、意見発表とかやばいんじゃないか、と思っていましたが、アクセスが増えたところを見ると、失敗でもなかったようですね。ほっと一安心(^^。

で、調子に乗って話を広げちゃいますけど(この引用、わかる?)、やっぱり、こういう意見発表への需要があるんだと思うんです。中には、「白井がこんなことを言っている」と陰口を言う人もいるし、また、「誰々さんが陰口言ってるよ」と知らせてくれる人もいて、どうも、そういうオフラインでの陰険なのが横行してるみたいですけど、そんな考古学業界だからこそ、思ったことが端から言葉になるような人間も必要ではないかと思うんです。

人の発言を含み笑いで眺めている人は、自分の方が高みに立ってるつもりかも知れないけれど、彼らに、自分の言葉で喋る者の強さなんて、結局はわからないでしょう。また、そんな人たちに苦しめられている人(残念ながら、考古学業界にはそんな人がいっぱいいます)にとっては、私みたいな単純な人間が思ったままを話してるってことが、少しは励ましになるかも知れないと思うんです。

まぁ、手っ取り早く何かの情報が得たい、という人には、「考古学のおやつ」ってなんの役にも立たないけど(^^;ゞ

もう1ヶ月前になりますが、今年の1月4日、本家の南河考研に、不定期コラム管理人覚書が登場しました。莫大な量の情報を発信してきた南河考研ですが、さらに管理者の意見発表も始まったのです。もし、この萬維網考古夜話の存在が影響したのだとすれば、光栄なできごとと言えます。意見発表なら、双方にあっても、競合しませんしね。わが「萬維網考古夜話」の意見と比較して、何が共通し、何が違っているかを調べるのも一興です。もちろん、違うことを言っていても、「2人が違うことを言っている」という事実自体が興味深いはずです。

ちなみに、おがみ大五郎さんと私は誕生日が1日違いです。

私は以前、某国際学会の感想を記したときに、こんなことを書きました。

今回の意義を一言でいうと,彼我の研究者が自らの歴史観を提示しあうだけでなく,問題意識や方法論を共有する時代に到達しうることを示した点であろう。

う〜ん。私の文章なんですが、「考古学のおやつ」にふさわしくないめんどくさい文章ですね(^^;ゞ。時間も紙数もない中で、無理やり要約しているので、わかりにくいんですが、「結論だけじゃなくそれ以前の部分から語り合える」という意味です。これ、別に国際学会じゃなくても、国内の肥大化した考古学業界でも言えると思うんですよ。なじみのない○○県でこんな遺物が出たらしい……って聞いても、だいたいの人(考古学者も)はどうしていいかわからなくて、「へぇ」ですませちゃいます。

困ったことに、地域によって埋文行政のあり方も、使っている用語も、かなり違いがあって、しかも、その違いに気づいてさえいないことが多いんです。そんな中で、発見の「結果」「結論」だけ見せられても、すぐには理解できないし、理解したつもりで間違ってるかも知れません。もし、それらを発信しているその地の考古学者と直接話ができれば、結論の背景にあるものがわかるでしょうが、いちいち会ってもいられないですよね。そんなとき、その人が考古学コラムででも考えを発表してる人だと、参考になると思います。

何度か名前が出ている相馬さんの青森遺跡探訪は、私のほとんど行ったことのない青森(ごめんなさいm(_ _)m行動範囲が狭くて)の考古学を疑似体験させてくれます。こちらには、必ずしも考古学コラムと限定しているわけではないですが、「案内人日記」というコーナーがあって、率直な意見が述べられています。これもインパクト強いですね。こちらは、「考古学のおやつ」よりもはるかに先輩です。もちろん、「案内人日記」以外のコーナーも、気合いが入っていて、勉強になります。

あまり乱立して収拾がつかなくなるのもどうかと思いますが、考古学コラムの花がいっぱい咲くといいですね。私が何か書くと、各地で「白井の言ってることは違う!」って意見が発表されたりして(^^;ゞ。

そうそう。2月1日に、神奈川県の高校生中村耕作くんからメールが来ました。中村くんは考古学に興味があって、なんと考古学サイト縄文学研究室を運営しているのです。最近の高校生はすごいですねー(^^。しかも、並み居る有名サイトに混じって、わが「考古学のおやつ」にもリンクを貼ってくださいました。ありがとう、中村くん。

でも、メールのお終いの方に次の文がありました。

追伸:おやつはいつも見ています。やはりコラムは面白いと思います。

ぉおー。嬉しいこと言ってくれるじゃないか。\(^^)/
いや、待てよ。将来ある青少年が、こんなコラムを面白がって見てていいのでしょうか。私がやってることではあるんですけどね。
まぁ、私も高校くらいの時は、難しい本格派の本もトンデモ本(©と学会)すれすれの本も濫読して、それでも今みたいに考古学関係の仕事してるんだから、問題ないよね(^^。

全国から、「やっぱりダメだ。白井には任せておけん。」の声が聞こえる気がします。だったらなおさら、早く発表してください。あなたの考古学コラム。

縄文学研究室には埋文関係の法令集まで載っています。どこかで、「法令集のサイトでもあるといいですね」などとweb上で発言している考古学者がいましたが、必要なら自分で作ればいいんです。ほらね、高校生に教えられた気がしませんか?今度はあなたの番ですよ。

次回から2話連続で、聖バレンタインデー……とはあんまり関係ないですが、父母の立ち会いなくして18歳未満閲覧禁止(お遊びで、ですけど(^^))の話題をお送りします。でも、高校生が見てるんだよなぁ……。


[第10話 鳥取県に訪れた冷たい冬|第12話 場面の中に、ぼくらはいた−新羅土偶物語・前篇|編年表]
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