3.霞ヶ関を目指す方へ

(2)「中堅」から見た伸びる新人

1)素直な人

 初期知識や能力の如何を問わず、もっとも伸びるタイプが素直な人です。

 上司や先輩から言われたことは、とりあえずは聞いて、言われたことはそのとおりやってみようという態度をとるという新人です。
(「手を抜く」「礼を失する行為」などの悪いことについてはもちろん聞く必要はありませんが)

 その中には、理屈に合わないことなどもあるでしょうし、多忙な中で体の調子が悪い時などもあるでしょうから、時にはケースバイケースですが、少なくとも仕事や社会人の常識などについては素直に聞いておいた方が得だと思います。

 「そこまでしなくても」と感じるときもあるでしょうが、最初は「丁寧にやって損はない」と割り切れば良いと思います。

 最近は公務員の世界では「辞められると困る」というのがなぜか強く、あまりきちんと指導しない傾向にあります。

 例えば、おかしな言葉遣いや横柄な態度をとっても、「個人の問題」と称して放置しておくわけです。また、それについて下手に注意するとへそを曲げる新人もいる(らしい)というのも理由の一つでしょうか。
(個人的にはその程度で本気でへそ曲げるなら辞めてもらった方が良いような気がしますが)
 ※極めて稀に「自分が上司にひどいことされたから同じくらい厳しくする」という驚くべき人がいます。しかし、その場合、普通に人間関係を築いていれば、周りがフォローしてくれます。

 実際はほとんどの場合、上司の注意は新人のためを思って言っているので、ここ1年(又は半年)は勉強期間だと思って素直に聞いてみるときっと良い結果を生むでしょう。

 逆にいちいち口答えして、自分のプライドの維持を図ろうとしても、結局叩きのめされますし、得られるものは少ないどころか、相手にしてもらえなくなると思います。
 

2)積極的な人

 この「積極的」というのは、何でも首を突っ込むということではありません。

 無遠慮にならない程度にどんどん挑戦をする人という意味です。あるいは、思い切ってやってみる人という意味です。

 例えば、自分の課のコピー機が修理中で他の課に行かざるを得ないときを想定してみます。
 そこで他の課の入り口当たりで「どうしよう」と立ちすくむのが良くあるケースですが、ここでは思い切って近くの若い人などに「コピーをお借りします」と一言言って許可を取り、コピー後は、「ありがとうございました」と言って仕事をさっさと済ませてしまう。こういう人を指します。

 もちろん、新人時代からいきなり他課に入っていって何も言わずコピー機を使用していたら「なんだあいつは」と思われるでしょう。そういうのは積極的ではなく常識知らずです。

 そういうのではなく、礼儀に気を遣いつつ、物怖じせず積極的に仕事を「やってみる」人は伸びると思います。
 

3)勉強する人

 勉強とは、いろいろな意味が考えられます。
 ここでは、前述の「関心を持つ」とも重複するのですが、業務時間外に自主的に勉強する意欲を持っているかどうか、ということです。

 私の新人の時、「バイトでなく職員にコピーを頼む意味を考えろ」と注意されたことがあります。

 忙しいときや、個人の性格によるものは別として、霞ヶ関ではキャリアの補佐クラスでも気軽に自分でコピーに行きます。
 
 「おい、○○君コピー」というテレビで良くある光景は霞ヶ関ではあまり見られません。

 そのような中で、配布等の必要な業務ではなく単なるコピー取りを頼まれたとしたら、それはその資料について情報として頭の隅に入れて置いた方が良いということです(場合によっては、今時間がないならコピーをもう一部取って手の空いているときに勉強しろ、と言われた時もありました)。

 このように、通常業務でも勉強材料は転がっているのです。

 そして実際は、新人でなくとも、多くの人は多かれ少なかれ電車の中や自宅などで業務のための勉強をしているものです(特に異動直後)。
 役所の業務時間だけ勉強して、他は遊んでいるという人で大成する人というのはよほどの天才ではないでしょうか。

 漫画でもありますが、成長するすし職人などや野球選手は、営業時間や練習の時間以外で修行や練習している、そういうのと同じです。

 また、教える側の上司にとってみても、ちょっと勉強すれば分かるものを、「聞いてない」「知りません」と言われると教える気も失せるというものです。

 結局社会人は学生時代以上に様々な勉強が必要ということなのです。特に異動周期が2年と短い霞ヶ関はなおさらです。

 激務で体(や精神)の方がピンチなら勉強より休みを優先すべきですが、そうでないのならこの「勉強する習慣」があるかないかで数ヶ月で大きく差が出ると思います。

 「自宅に仕事を持ち帰らない」という主義の人もいますが、「仕事を持ち帰る」ことと、「仕事に関係した勉強をする=仕事をうまく仕上げるのに必要な知識を身につける」というのは違うと思います。

 そういう人でも、直接仕事そのものはしないけれど、関係の本などは読んでいるという人も多いものです。
 

4)きちんとメモを取る人

 役所の世界に限りませんが、メモをきちんと取る人ほど仕事のミスが少ない訳です。
 メモというのは将来もずっと付いて回るものだと思います。

 例えば、国会の質問取りは課長補佐が行くでしょうが、その時国会議員の質問内容を間違ったり曖昧なメモをしたりしたら、質問割り振り時や答弁を書くときに非常に困るわけです。
 法律改正時に国会議員を回るのは課室長以上が原則ですが、そこでも国会議員の発言などで気になる点などを周囲に伝える必要があるわけです。

 また、既に書きました「上司に呼ばれたらメモとペンを持っていてメモを取る」以外にも、電話の内容をきちんとメモを取れるか、あるいは相手の説明についてきちんとメモを取れるかというのは仕事をきちんとやる上で非常に重要なことだと思います。

 そして、こういうことは、頭の良い悪いというよりは訓練だと思います。

 最初のうちは言っていることほとんどをメモするつもりでやらないとならないでしょう(どこが要点か分からないでしょうから)。その中から後でゆっくりと要点を考え、要点のみ改めてメモにするわけです。

 これは確かに面倒ですが、結局間違いを減らすためにはその方が良いことが多いと思います(記憶力と知識に自信があるのであれば別ですが)。

 そういうことを厭わず、また取ったメモをきちんと整理しておける人は結果として論点をまとめる訓練をしていることになり、やはり伸びると思います。
 

5)付加価値を考える人

 最初のうちは、上司に言われたことをこなすだけでも精一杯でしょう。簡単な見え消しの資料一つ作るにも、不安ですし、時間がかかるし、疲れるものです。

 しかし、いずれ夏を過ぎる頃には少し余裕が出てくると思います。

 ここで、「付加価値」を考える人は伸びます。

 例えば、発注で言えば、前に書きました「発注を理解する」だけではなく、「この発注をより良い結果とし、また短時間で終わらすためにはどうしたら良いであろう」ということを考える人です。

 早く帰るため、と考えれば一層インセンティブがわくのではないでしょうか(笑

 例えば、会議対応であれば、「10人くらいの会議室とっといて」といわれたときに、メンバーを知っていれば(確認していれば)、それを基に個室か通常の打ち合わせスペースかを考えることによって、より適切な(喜ばれる)会議室を取ることができるでしょう。

 往々にして「ちょっと考えれば分かるだろ」「何考えてるんだ」といわれるのは何も考えず、言われたとおりやってしまったときです。

 あとになって上司に言われて「そんなの最初から言えよ」と思うかもしれませんが、上司は「そんなの」くらいはあなたならできるだろうと思っていたわけですね(期待されている)。
 逆に言えば、この時期から「しょうがないなぁ」と苦笑されるよりはよほどましです。

 このように、仕事で気を利かせたり、スパイスを加えてよりいいものにしていくことを「付加価値をつける」といいます。「付加価値をつけて初めて仕事をした」というわけですね。

 もちろん、無駄に仕事を追加しても、付加だけで「価値」がないのでダメです(笑)いや、「負荷」となったらマイナスでしょう。
 

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