3.霞ヶ関を目指す方へ

(3)なってはならないタイプ

(1)本省職員様

 一般に、関係者、特に公益法人や関係企業の方などは腰を低くして接触してきます。
 
 これは別に本省が偉いからでも何でもなく、委託の発注や公共事業、細かいところでは印刷発注など、先方からみればこっちはお客さんであるだけのことです。
 スーパーマーケットでお客さんに対しきわめて慇懃な態度をとるのと同じです。

 ところが、これに対し「俺は偉いから相手がへりくだるのだ」と勘違いする困ったちゃんが時々いるのが問題です。

 スーパーの例でいえば「俺は客だぞ!」と偉そうにふんぞり返っている馬鹿な客と何ら変わらないのですが・・。

 さらに強調しておきたいのは、「馬鹿な客」は曲がりなりにも自分のお金です。
 しかし、公務員の発注はあくまでも国民の税金です。

 ですから、こういうタイプは「馬鹿な客」である上に、税金を自分の金と勘違いしているという2重のバカヤロウなわけです。

 極端なケースとしては、先方が敬語(丁寧語)を使っているのに、「やっといてくれる?」などとふざけた言い方をする人が係員でも稀にいるのには驚きます。それで親しみを込めたつもりなのでしょうか?

 こういう人は当然ながら省内でも「口の利き方を知らないやつ」として鼻つまみ者ですが、本人は気づきません。ちなみにこれが組織の体質となっている場合は、その組織以外と一緒に仕事をしたときに鼻つまみ者になるでしょう。
 今の世の中省庁横断が当たり前ですし、出向人事もよくありますから。

 大人の世界では、内心むっとしていても、こういった問題児に対して注意して、本人に反発食らうよりは、「はい、はい」と流して相手にしないというのが一般的です。
 裏では「能力ないくせに偉そうなバカ役人がいて困るんだよな(笑」と陰口を言われていることでしょう。

 こういったケースは、総務課などのとりまとめ課や業界担当の課に配属された「自分の能力に自信満々の人」が陥るように思えます。あるいは、現地事務所があり、地方局、そして本省という三層構造の場合なども危険です。

 そういう課に配属され、あるいは査定や規制、業所管などの立場に立った場合でもそのポストにあぐらをかかないようにしたいものです。

 最近あまり聞きませんが、「周囲の人はおまえにお辞儀をしているのではなく役職にお辞儀をしているのだ」という教育は大切だと思います。

 ちなみにそういう人は「よほど何か」がない限り、能力が低いと見られるのは当たり前のことですし、事実一流の人はまずいません。


2)当事者意識のない人

 「当事者意識」とは、与えられた仕事なり雑用なりが自分の仕事と思っていない人を指します。

 具体的には、その仕事は上司の仕事であって、それを「手伝っている」という意識しか持たない人です。プロ意識がない人といいましょうか。

 この点は責任という面では確かにそうかもしれません。しかし、上司から命じられた仕事(パーツ)は、プロとしてはその仕事をきちんと仕上げるべきです。
 パーツを組み合わせて全体を仕上げるのは自分ではないかもしれませんが、パーツを仕上げるのは自分の仕事です。

 しかし、命じられた仕事をそういう風に考えず、間違っていても上司が直すであろう、あるいは、責任は上司だから、と考える人もいるようです。

 それが端的に見えるのが一言が言えない人です。

 ここでいう一言が言えない人とは、仕事でミスして、上司が普通に「ここ直ってないよ、ちゃんとチェックした?、」と言った主旨のことを言っても「すみません」の一言が言えずに、「はい」「そうですね」しか言えない人を指します。

 私も最初の頃はそうだったかな、と思うのですが、一般には、慣れてくれば、あるいは「給料もらってるんだから、仕事のミスで他人に迷惑かけたのなら一言あるのが普通だろ」など、「仕事への責任感の欠如」や「他者への迷惑」を指摘されると自然と直るものだと思います。

 同様に「ありがとうございます」が言えない人がいます。

 例えば、他人に仕事を依頼し、「やっといたよ」と言われたら「ありがとうございます」という感謝を相手に伝えるのは自然なことだと思います。しかし「はい」とか「そうですか」しか言えない人がいるのです。

 「自分の仕事」という認識があれば、その仕事をミスしたら一言言うのは当たり前ですし、仕事を誰かにやってもらえば、感謝するのは当たり前だと思います。

 仮に、その場で言うタイミングを逸したとしても、最近はメールという便利なものがありますから、「先ほどはありがとうございました(申し訳ありませんでした)」の一本でも打っておけば良いだけの話です。

 もしも、当事者意識がないわけではなく、うまくタイミング良く「一言」が言えないとしても、あとでも良いですから、「一言」言っておくべきだと思います。
 そして、なるべくタイミング良く言えるよう今のうちに直すべきだと思います。

 そうでないと、いずれドライなつきあいばかりとなり、仕事を手伝ってほしい時にも手伝ってくれなくなるでしょう。

 こうなると大変です。仕事の能力も伸びないし、次のポストで大変苦労するか、あるいは同じようにあきれられ、いずれはまた相手にされなくなるでしょう。
 普通の神経ではなかなか耐えられないと思います。

 自分の仕事に対するプロ意識のない人間は、官民限らず役に立たないものです。

3)コミュニケーションをとらない人

  世の中には「気が利く」タイプと「気が利かない」タイプとあるわけですが、これが「コミュニケーションをとらない」までいくと困りものです。

 このコミュニケーションとは、要は双方向の会話などをする気があるかどうかということです。
 する気がないのであれば、あるいはどうしてもできないというのであれば、やはり霞ヶ関には向いていないと思います。

 例えば、何も分からない新人だとしても、上司がパソコンソフトなど役に立てそうなことで困っていたら、(急ぎの仕事をやっている場合を除いて)「どうしました?」と声をかけるのが一般的なことだと思います。

 しかし、話は聞いていながらも自分が声をかけられるまでは一切無視して、自分の仕事だけをやっているというのは「気が利かない」という次元ではないと思います。

 こういったタイプはやはりダメだと思います。

 もちろん性格的なものや、これまでの人生経験もあるでしょう。ですからいきなり愛想を振りまくとか、急に社交的になるとかそういうのは無理だと思います。

 しかし、最小限のコミュニケーションは多少訓練してでも取るようにしないと、これもやはり、自分が困っているとき誰も助けてくれず、将来どんどんつらくなっていくのではないかと思います。

 霞ヶ関の世界はドライな関係のように思われるかもしれませんが、人間関係の基本は義理と人情だと思います。あるいは貸し借りだと思います。それこそが人脈ではないでしょうか。

 仕事で助けてもらったら、将来の仕事でお返しをするというのが正しい姿であり、その結果としてお互い助け合っていい仕事がそれぞれできるようになります。

 こちらとしてはちょっとしたフォローをしたつもりでも、相手によってはそれをよく覚えていてくださって、1年後などにこっちが困ったときに快く助けてくれる。そうしたらそのときの感謝を忘れずに、将来先方が困ったときはまたフォローさせていただく。
 そういうものだと思います。


4)言われたことをしない人

 上司に言われたことをするのは当然ではないか、と思われるかもしれません。

 しかし、実際には同じ注意を何度も受けて、それでもやらない人というのがいるものなのです。

 ちょっとイメージ的になりますが、「心に響かないタイプ」です。人によっては「馬耳東風タイプ」という人もいます。

 恐らくは、技術系の方の「職業訓練」と同様に、事務職でもいろいろな面で「上司の指示を受けてそれを身につけるべく必要な事務的能力を自分で訓練せざるを得ない」ということが分からないのではないかと思います。

 つまり上司の指示は、聞いても聞かなくても良い「アドバイス」程度しか感じていないのではないかと思います。
 上司が言い方(怒ったり優しく言ったり)など色々考えて、注意(指導)したことも、単なるアドバイス程度にしか取らなければ、それを身につけることはないでしょう。

 しかし、上司はおおむね必要であるから教育しているわけで、内心は「なんで何回も言ってるのに分からないんだ」と思っていることでしょう。

 このタイプも、いずれ指導してもらえなくなり、「使えない奴」へ一直線だと思います。
 なぜなら言われたことをしないわけですから「危なかしくって仕事任せられない」からです。
 回ってくるのは雑用ばかり、で本人としては「何で俺は雑用ばかり何だ」と不満を抱え、仕事が投げやりになる、そうするといよいよちゃんとした仕事を任せられない・・という悪循環です。

 正直言えばこのタイプは、先が見えていますので、辞めていただいても全く支障がないと思います。

 感情的な理不尽な怒りは別として、上司のまじめな注意をまじめに受け止めることのできない人は、どこの世界でも通用しないと思います。

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