4)人件費

 定年まで勤務するという設計をした場合、明らかに人件費は不足しています。
 なぜなら、日本の給与体系は年を取れば取るほど高くなるからです。
 そして、その高い部分をカットしているのが「早期退職」にほかならないのです。

 そして、一部の高級官僚を除き、国家公務員自体の給与は、マスコミに「高すぎる」など叩かれまくるほど高くないですし、サービス残業も多いのが現状です。

 仮に定年まで残るとして、人件費総額を変わらないとした場合は、高額である高齢者の分を現役がならして負担するわけですから、30代以前の若手の給料はトテモ厳しいことになると考えられます。

 「安定しているのだからそんなの当然だ」、という批判は必ず出てきます。しかし、国家公務員として一定の質を確保するためにはやはりそこそこの給与は必要です(副業(バイト)も禁止されていますし)。

 給与が相当安く、サービス残業も多く、官舎も安いけど電車でおおむね1時間以上の中古住宅という多くの職員の実態を見た場合、「安定だけ」で優秀な人材を確保できるかどうかは自明だと思います。

 現職の人は転職できる能力のある人からいなくなるでしょう。なにより、「安定してたら給与は相当安くても良い」という人材しか来なくなったら、サービス残業お断りで、仕事は停滞すると思いますし、国民の批判など聞く耳を持たないと非常に困った共産圏にみられるような「お役所」になるでしょう。

 よって「定年まで勤務」を普通に考えた場合相当の人件費総額の増大は避けられず、行革に逆行するという問題が生じます。

 もちろん「特殊法人等」への天下りにより「見えない人件費」が多いではないかという批判はあろうかと思います。

 その通りでしょう。

 人件費が増大しようが、必要なものは堂々と与えるべきだと思います。
 それを「行革」「公務員削減」の看板のもと、ごまかされているのだと思います。

 費用がはっきり見えない天下りより、目に見えた透明性のある制度の方が国民の皆さんにもご理解いただけると思います。

 そして、公益法人からみても、天下りによる「理事」などの役員給与はバカになりません。
 理事のために職員がリストラされるなど本末転倒です。

 「人件費の不透明性を避けるために必要な人件費は増額する。その代わり無駄な天下りをなくす」というのが本来の天下りの解決策の王道なのです。

5)天下り問題を組織面から解決する

 このように、見てみますと、キャリア制度や人件費問題を無視して「国家公務員制度抜本改革」はできるはずがないのです。

 ですから、それをいじる気が政府にも国会議員にもない以上、キャリア制度存続、天下りを前提として対応を考えざるを得ないということになります。

 さて、ではどうにもならないのかというと、「天下り」を前提としたとしても、私は問題とされているかなりの部分は政治にやる気があれば変えられると思います。

 「天下り」での行き先は特殊法人や公益法人をはじめ関係業種の民間企業などいろいろありますが、最も批判の的となるのが「関係民間企業への就職」と「渡り鳥」の問題です。
「渡り鳥」とは・・
 複数の法人の理事や理事長などの役員を歴任し、その各々の法人の役員を数年努めただけで数千万の退職金をもらうこと。もちろん給与が高額だからそのような多額の退職金となります。けしからんですねー。

 このうち関係民間企業への就職については、例えば警察官が辞職して警備会社やデパートなどの警備部門へ行くというのは、その特技を考えると再就職先としてはある意味当然です。
 もちろん、「癒着の可能性はある」という点はあるかもしれませんが、しかし一方でせっかくそういった専門知識(特に経験から来る「勘」の部分)を無駄にするのは人的資源の無駄遣いといえます。

 関係業界への民間企業の天下りのうち、受注・発注の関係がある場合は問題となる可能性もあります。
 しかし、現実問題としては入札の公開と公正化を行えば、そういう問題のあるものは減ってくると思います。
 いずれにせよ、十把一絡げで「よくない」ではなく、この場合はケースバイケースでよく考える必要があると思います。

 一方で、最も問題だと言える「渡り鳥」は私は法律で抑制できると思います。

 独法等の法律に基づく機関であれば各法律の「役員・職員」の章に、例えば「国、独立行政法人、特殊法人、認可法人又は公益法人において五年以内に二百万円以上の退職手当を支給された者は、負傷若しくは病気又は死亡によらず、その者の都合により退職した場合にあっては、退職手当は支給しない。」などと規定すればよいと思います。

 公益法人においては「○省の所管公益法人に関する省令」の中に役員の退職金の額の上限を規定するのがベストでしょう。いくら理事でも2年で数百万を超える退職金は異常です。

 率直に言えば、多額の退職金を期待するなら、「公益」法人の役員などにならなければいいだけのことです。
 仮に儲かっている法人なら「公益法人」ではなく営利法人に転換すべきです。少なくとももうけを理事の収入に転化すべきではありません。「公益」法人なのですから。

 また、給与についても厳しくチェックすべきです。これこそ予算委員会で厳しく追及すべきもののように思えます。例えば、グリーンピアなどで多額の損失を出した者がなぜ高額の給与をもらい、退職金をもらえるのか。
 給料をゼロにしろとは言いませんが、給与の大幅カットと退職金不払いは納税者から見ると当然ではないでしょうか。
 このあたり、学歴問題なんかより厳しく追及すべきでしょう。

 では、なぜ独法や公益法人の役員は給与が高いのか。
 これは、その基準がなく、各法人の自主性に任されているからです。是非国会議員あるいは人事院などが国家公務員の給与などを参考に、「適正給与基準」案を作成し、毎年全法人が公表するようにすればいいのではないかと思います。

 このような厳しい世間の目と監視がおかしな制度を直していくものだと思います。

 ここで、「正義派」の国会議員からは「自浄能力がない」という意見が必ず出てきます。
 冗談ではないです。立法府の国会議員が法律を改正せずに自浄能力を責めること自体が間違っています。
 というのも、民間企業でもそうでしょうが、多くのヒラの職員では役員のやっていることに対しメスを入れられるはずがないからです。
 だとしたら「三権分立」で「国政調査権」「立法権」を持つ国会議員がせずに誰がするのでしょうか。
 くだらない質問主意書で、ある意味周知の事実を確認して、政府を攻撃している暇があったらすぐ法律改正をしてください。
 想でないといつまで立っても抜本改革はできないと思います。
 賛成者が少ない?それを説得するのが「政治力」であり政治家の仕事でしょう。
 少なくとも「渡り鳥」の問題の解決のための法律改正は政権取らなくても改正できるはずです。

 仮に役人がやるにしても、なんらかの問題が発覚したときにやるくらいしか方法がないのです。しかし問題が起きるまで放置しておいていいのでしょうか。
 繰り返しますが、「渡り鳥禁止条項」と「適正給与基準」はすぐにでもできることだと思います。

 なお、高潔なキャリア公務員も多数いますのでその方々の名誉のために記載しますが、天下って公益法人の理事に就任したとたん、「このご時世にこの額の給与はおかしい」と自ら率先して給与カットし、節約を推進した方もいると聞いています。
 そういうのをマスコミがチェックし、取り上げてくれれば、立派な人とそうでない人の差も歴然とすると思います。
 単に悪い方ばかり叩いても「どうせ他もやっている」というモラルハザードから転換できないのではないでしょうか?

 例えば、一連の騒動を引き起こした道路公団総裁(当時)の藤井氏など、いくらもらっていたのか。その点を踏まえてマスコミは報道していたでしょうか。そうではないと思います。
 ましてや、藤井氏を「小泉内閣に抵抗した」ということで、独占インタビューで好意的に熱かったテレビは、愚かとしか言いようがありません。

 そのほかにも自分は甘い汁を吸っておいて、役所批判でマスコミに登場してあたかも改革者や善人のようにもてやされているキャリアOBはたくさんいます。

 自分のやっていたことを棚に上げて役所に唾する問題キャリアOBをもてはやすのではなく、「真の改革を行った」立派なキャリアOBも大きくとり上げてほしいものです。

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