2000秋 うどん国さぬき編
(その1)





 うどんだ。
 うどんである。
 うどんなのだ。

 「さぬき(あえて香川とは言わない)にうどんを食べに行こう」と
 思いついたのは前日だ。もともと、ずっと以前からこの計画はあったのだが、
 何しろ「食べるだけ」の旅に橋を渡らなければいけない、というので、
 そのままになっていたのだ。それに私たちの実家は四国。実家に帰った
 ついでに行くといいよね、とか何とか言って。

 ちなみに瀬戸大橋は高い。そうしてさぬきのうどんはとっても安い。そうとても。
 「うどん食べツアーです、って申告したら、橋はタダにしてくれないかなあ」
 とか、本州四国連絡橋公団にうどんで締め上げられそうな事を考えながら、
 車は海を渡る。

 いつ見ても巨大な瀬戸大橋は、美しい、を通り越して、偉大ですらある。
 太陽を浴びてぴかぴか輝く水面と、濃い緑の島のコントラスト、それに小さな
 船たちが、瀬戸内独特の景観を作り上げ、それはそれは美しい景色だ。
 感動しながら、ふと四国側に入ると、いきなりコンビナートが現れ、
 煙がもくもくと上がっている。

 このコンビナートも、夜に橋から見るとまた違うのだが、昼はちょっと
 興ざめなのだ。途中、与島SAに寄り、少しうろうろする。なぜかみんな
 ソフトクリームを食べていてびっくり。しかも売り場には行列まで出来ている。
 「美味しいの?」と思っていろいろ見渡してみたのだが、どこにも
 「北海道直送!」とか「美味い!」とか、その特徴を表すものがないので、
 想像のしようがない。どうも行列が行列を呼んでいるようだった。

 

 高速を坂出北ICで降り、すぐの角を左に
 曲がり、(多分)2つ目の角を右折すると、
 最初の店「明」がある。
 開いてるの?と思ったが、店の前にのれんが
 かかっているので、安心して、入る。
 私たちよりも前に来ていた3人組の男の人たちが、
 「美味い美味い」と互いに交換しながらうどんを
 食べているのを横目に見ながら、「ぶっかけ」と
 「しょうゆ」を注文。どちらも400円。

 (今回の旅に関しては、「さとなお」さんの「さとなおのおいしいスペシャル!」
  かなり参考にさせていただきました。ウチのHPより、載ってるお店の
  数も、もちろんさぬきうどんに関してもずっと詳しいので、興味のある方は
  ぜひ行って見てください。何せ、この方の麺の表現力はすごいです。
  さらに文章力もすごい。私もがんばって書いてはおりますが、
  全然叶わないわー、と思う次第であります。)

 ここで「ぶっかけ」と「しょうゆ」の違いを書いておくと、
 「ぶっかけ」とは茹でうどんに少しの出汁がかかっているもの。
 「しょうゆ」はその名の通り、茹でうどんにしょうゆをかけて食べるものです。
 私は以前人に聞かれた時に、とんちんかんなことを言ってしまったことが判明。
 (Fさん、ごめんなさい。)

 早速出てきたうどんは、つやつやぴかぴかな美しい麺。
 「初めて?じゃ、おばちゃんがやってあげるね」と私の「しょうゆ」うどん
 (大根おろしがのってる)に、しょうゆとポン酢、そして少しの味の素を入れた。
 「後はかき混ぜて食べてね」

 言われた通り、ぐじゃぐじゃとかき混ぜて、ぴかぴか麺を口に運ぶ。
 口に入れた途端、力強さと、つるつるの感触が、ぶりんとはじける。
 「私たちが、今まで食べていたうどんって、何だったの?」
 二人ともあまりの美味さに、話もせずもくもくと食べる。
 正直言って、自分たちの「うどんレベル(何だそりゃ)」は
 高いと思っていたのだが、それは香川の人たちにとっては「大したことない」
 くらいであったのだと、思い知らされる。
 そりゃあ、こんな美味しいものを毎日食べられる環境にあったら、
 おのずとレベルは上がるであろう。結婚して香川に住んでる松山出身の友達が
 「うどんが美味しいよ」と手紙に書いてくる訳だ。
 何て幸せなの、さぬき人。

 途中で「しょうゆ」をNARUの「ぶっかけ」と交換して食べてみる。
 こちらも甘い出汁で、悪くない。ただ、ずっと食べるとその甘さが
 最後に気になるかもしれない、と思った。
 二人以上で行くなら、違ったものを頼んで、途中で交換すると、いいかも。


その1  その2  その3  その4  その5