


蓮華升麻(レンゲショウマ)
森にかえったしな乃
あの、暑い夏の日、
わたしたちの前から突如いなくなってしまった、しな乃。
君はいったい、どこへいってしまったのか。
わずかばかりの思い出だけを残して、
君はどこへ、いってしまったのか。
そんなある日、
風が君の消息をつたえてくれた。
やっぱり、しな乃は森へかえっていったと。
明るく、豊かな奥多摩や道志の山々。
あたたかい腐葉土と苔におおわれた、奥秩父や蓼科の山。
毎日が、君のためにある森で、
春は朝寝ぼうの花を起こしてまわり、
夏は高い木の枝で唄い、
秋には来年のために、どんぐりの種を埋めてあるく。
しな乃は大好きな森に遊び、
大好きな森をつくっているんだと、
風は、そう教えてくれた。
いつか君がいたころのように、
山歩きを再会する日が訪れたら、
森のほの暗いやぶ陰に咲く、蓮華升麻のうす紫に、
そんなしな乃の姿を、見ることができそうな、
予感がします。
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