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Last Update/2012.02.05


◇ セラピア(逃避)ルート/後編 ◇

「その外見には似合わない、辛い過去がある」
――『エンゼルギア フルカラーセッティングマテリアル』より

 

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前編から続く

 幼少時のセラピアを守り育てる適地として、アンナ・Oが選んだのは、黒海とカスピ海の狭間、カフカス地方であった。“緑の聖母”のゲリラ作戦を支える複雑な地形にも恵まれた、恐らく40年戦役を通じてその根拠地の1つだった彼の地は、セラピアを守り育てる幾つもの好条件にも恵まれていたのである。


■カフカス戦争
 統一帝国の滅亡とヤシマの鎖国によって、1980年代後半から1990年代前半の世界は、40年戦役の終結に伴う体制再編の時期となっていた。この時期、合衆国の支援を受けた“天使同盟”に与するイスカンダルと隣国パルティアが停戦し、1989年にはパルティアでも政権交代が起こっている。
 1990年の“連邦共和国”樹立は統一帝国の完全な滅亡を世界に知らしめることとなり、同年に統一帝国の残存部隊が敢行したガミラス湾奥カージマでのクーデターも、翌1991年にはあっさりと殲滅された。この年には“連邦”でも政権交代が発生し、反天使同盟を掲げる勢力への弾圧が強まっていくとともに、旧法王領の対岸域やアウルム東部でも残存勢力の掃討が継続されていた。

 そして1994年。ついに“連邦”は“緑の聖母”残党をかくまうとしてカフカス地方への武力侵攻を決議。もともとこの地方はユーラシアの要衝であり、かつ豊富な天然資源を巡って、長年“連邦”との諍いが絶えなかった地域である。
 世界大戦の折には統一帝国の支援を受けて“連邦”と戦い、40年戦役を通じて反天使同盟の根拠地となったゆえに――彼の地は再び、戦場となったのだ。
(余談ながら、この同じ1994年、それまで貴重な古の血を引くとして命脈を保っていた北欧の小国“黄金の森”も、合衆国の手によって滅ぼされている)

 この地域で過ごした7年が、アンナ・Oに脱出の道を選ばせなかったとするのは間違った見方である。このカフカス戦争においては、どういうわけか天使兵は投入されず、通常戦力のみでの衝突となったのだ。
 天使兵を投入させなかった理由こそ――セラピア・パルマコンの存在である。合衆国は何らかの理由で(“総統”の血縁であるからか?)セラピアの確保をも目的とし、無差別に都市を粉砕する天使兵は投入されなかったと考えられている。
(ごく一部の神秘学者には、セラピアの存在そのものを恐れ、天使兵は介入できなかったとする説を唱える者もいる)

 ともあれ、アンナ・Oは軍事顧問として現地政府に協力を余儀なくされる。セラピアの存在が天使兵の介入を防いでいるのだとすれば、彼女が居なくなればそれで戦いは終わるのだ。――“決戦”を成し得なかったアンナ・Oにとって、これは望んだ戦いであったのか。バーミヤン地方から参じた“赤狼隊”を中核に、カフカス軍は“連邦”侵攻部隊に対して苛烈な反撃を加えていく。

 そして、伸び伸びと育った8歳のセラピアの前に投げ出されたのは、人と人とが殺し合い、死んで逝く過酷な現実であった。首都は何度も空爆に曝され何千もの市民が殺され、各地での“連邦”正規軍と“緑の聖母”を母体としたゲリラ組織との戦闘は、血で血を洗う凄惨さに満ちてゆく。
 ふわふわした性格の奥に、何よりも“生き延びること”への執着を持つセラピアの根源は、このカフカス戦争に求められるのかも知れない。

 戦いは2年ほど続き――1996年1月、“連邦”政府の要請でついに合衆国の天使核兵器(フーファイターの試作型もあったと言われる)が投入されてから、あっさりと決着がつく。カフカス全土への総攻撃は20万人以上の犠牲者を出し、戦線を支え続けた“赤狼隊”も、合衆国の天使核兵器群の物量に力尽き壊滅。8月の停戦合意という名の降伏を受け、11月に“連邦”軍は撤退する。


■脱出〜そして瑞穂基地へ
 だが、引き上げる“連邦”軍の捕虜に、セラピア・パルマコンとアンナ・Oの姿は無かった。10歳になっていたセラピアは、幾多の戦闘と敗走、転戦を経て母親にも似たタフさを身に着けていたのである。

 幼年学校で学ぶ年齢で実戦に参加し、銃の扱いを覚え、人を殺し、身近な人を殺され、敗走する――。瑞穂基地でのセラピアのあの性格も、どこからともなく出てくる銃火器も、撃っても当たらないとする銃の腕前も、遠山桂を躊躇い無く射殺した決断力も、狙撃に関する異様なまでの“勘”も……。この凄惨な経験によって培われたものかも知れない。

 セラピアとアンナ・Oの脱出劇には、前年より大陸での潜入任務に就いていたアクシア・リヒトヴィッツが大きく貢献したと思われる。彼女の最終任務は、終息に向かいつつあったカフカス戦争から2人をヤシマまで連れ帰ることだった。
 一行は南方に脱出し、アララト山を経由。カフカス戦争の空隙を突いて反天使同盟を掲げるゲリラ組織が政権を握ったバーミヤン地方からチベット、ホータンを経てコンロンへと至る。
 八坂機関の諜報活動によって彼女たちの動向を追い、密かに支援していた維馬篭代胤は、この機を逃さずメーヴェに回収を要請。陸軍情報部の若き俊英、羽村総司のお膳立てのもと、1997年――アクシア・リヒトヴィッツはセラピア・パルマコンとともにヤシマに無事帰還した。

 この逃避行の詳しい経緯については、関係者が皆一様に口を閉ざしているため不明のままである。
 ただ、結果としてアクシアは任務中に重傷を負うも、アンナ・Oから“黒い天使核”を受け継いだことで生存。ヤシマ帰還後はシュネルギア隊を率い、セラピアとともに戦うこととなる。
 羽村総司は、軍医としてやはり瑞穂基地に赴任。
 アンナ・Oの消息はこれを最後に途絶えたが――。彼女の遺志を継いだのだろうか。瑞穂基地には“赤狼隊”の生き残りである凄腕の女パイロット率いる支援飛行隊が配属されている。


記:2005.12.24
GF誌10期3号の記事に基づき修正:2006.07.04
見出しを追加:2006.11.09


エンゼルギア研究所/管理人:相馬斉遠