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Last Update/2012.02.05


◇ ヤシマ海軍の過去と現在 ◇

「新造した300m級の巨大戦艦10隻を1ヶ月で失ったのである」
――『エンゼルギア』第参章より

 

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ヤシマ海軍配置図(「この」瑞穂基地版)

■はじめに
 エンゼルギアにおいて、海軍といえばヤシマ海軍を指す。特に山陰地方出雲基地を拠点とする呪法船団護衛部隊“メーヴェ”は、(統一帝国軍との合同部隊ゆえにせよ)かのフリューゲル・ズィーガーやアクシア・リヒトヴィッツが所属していたことで有名だが、この例を引くまでも無く、瑞穂基地で間近に見られる陸空戦力と同様に、ヤシマ海軍もまたエンゼルギアの世界観を支える重要なファクターの1つである。
 かつての40年戦役で壊滅的な打撃を受け、また天使大戦の開戦後も甚大な損害を被ったことが予想されるヤシマ海軍だが、現在までに明かされた情報は思いのほか少ない。
 それらの情報を基に、もう少しだけ掘り下げて(あること無いこと付け足して)考えてみたのが本稿である。ただ、今回の目的はあくまでヤシマ海軍の概観考察であり、ミリタリー的に精緻を求めるコンセプトでは無い。
 このため、識者から見れば非常に甘い部分も多いと思われるが、肩の力を抜いて見てもらえば幸いである。


■ヤシマ海軍の没落と再建〜40年戦役概略
 40年戦役の開始時点までに、ヤシマ海軍は優れた練度と零式機械化兵を始めとする天使核兵器、加えて陸軍陰陽部との連携により、東南アジアから南方諸島を含む太平洋全域、さらに合衆国西海岸までを勢力圏に置いていた。
 イスカンダル沿岸からマウリア洋、及びメガラニカ周辺部も影響下にあったとは思われるが、ヤシマ軍の戦略目標が統一帝国と連携しての“連邦”及び“合衆国”の挟撃に置かれたため、この地域への目立った侵攻は行なわれていない。
 ともあれ、1941年冬に始まった太平洋方面の戦いは、1944年12月16日の日付変更線海域における合衆国太平洋艦隊の壊滅を以って終焉した。
 これ以降、1947年の合衆国十字軍による逆侵攻開始までの間、太平洋を我が海としたヤシマ海軍は合衆国本土への大規模輸送任務に主戦略をシフトしつつ、制海権維持を目的とした大幅な再編と、コンロンからの豊富な資源による大艦隊の編制をも行なっている。
 特に、ヤシマ海軍の覇権の象徴として計画された10隻の“高天原”級300m戦艦は、1945年5月の第2次ロッキー会戦以降、ヤシマ海軍の対天使戦力の切り札としても莫大な資源と資金が注ぎ込まれ、再建された合衆国艦隊に対し威風堂々と決戦を挑んだことで知られている。

 ――だが、結果は悲惨なものであった。
 当時の技術では止むを得ないとはいえ、決定力に欠ける対天使装備のみで天使兵と正面から交戦した結果、“高天原”級戦艦10隻は1ヶ月で全滅。さらに艦隊の中核となる主要艦艇とそれを運用する士官、熟練兵をも根こそぎ失ったヤシマ海軍は大幅な劣勢に追い込まれる。
 これを繕う方策の一つとして打ち出されたのが、陸軍も含めた女性への軍職の門戸解放であった。これまで戦地ではごく僅かな例外を除けばほとんど見られなかった女性兵の姿も、1950年代以降はそう珍しいことではなくなる。余談だが、海軍の整備兵として南方諸島を転戦した中島三郎が、妻となる幼なじみ葵と前線で再会したのも、このことと無縁ではない。
(さらに余談だが、女性への軍職の門戸開放は必然的に彼女たちの社会進出をも促し、参政権や労働権など各方面において、ヤシマ=統一帝国の男女同権は40年戦役を経て加速度的に進んだ。ヤシマにおいて男女共学が当たり前になり、共働きが珍しくなくなるのもこの頃からである)

 また、1950年代に実用化された第二世代人間戦車アペルギアの登場と、陸軍陰陽部の全面的な協力を得て、ヤシマ海軍は南方諸島全域を利用したゲリラ戦へと戦略を転換。天使兵と正面から戦うことを避け、複雑な地形と陰陽術を駆使した奇襲戦法は、通常兵力の磨耗しきった合衆国海軍を40年間足止めしえたとも言える。
 これが逆に、“高天原”級の建造に伴い内地で寧艦状態にあった“大和”級戦艦が鎖国以降も身命を永らえた理由ともなった()。前線で求められたのは大艦巨砲の権化ではなく、軽快軽量かつ隠密性の高い駆逐艦や潜水艦となっていたのである。
 40年戦役の中盤以降、ヤシマ海軍はできるだけ人的被害を抑え、広大な制海権を少しずつ削らせることで統一帝国崩壊時でも戦前までの領土を保つことに成功していた。また、陸軍陰陽部との連携が深まったことにより、ヤシマ全域を覆う八門結界の構築も比較的スムーズに進み、さらにウラジオストックなどから撤退する統一帝国の敗残兵の輸送にもヤシマ海軍は高い練度を見せたと言われている。


■鎖国期のヤシマ海軍
 1989年の八門結界構築による鎖国後、ヤシマ海軍の任務は主に3つに分かれた。1つは来たるべき決戦の刻に備えた戦力の維持向上、1つは動力を持たない船舶等による亡命、密入国の管理あるいは阻止。そしてもう1つが“メーヴェ”に代表される結界外との交易――呪法船団の運営である。
 これに伴い、1990年にヤシマ海軍は再度大規模な再編を実行。国土を囲む海域を十一の管区に分け、それぞれに艦隊を置いた(何故か第七艦隊は置かれていない。合衆国十字軍の正面戦力との混同を避けるため、“七”が天使に繋がる数字であるため、呪法船団が“ヤシマ海軍第七艦隊”であるためなどの説がある)。
 鎖国期において、陸軍がそうであるようにヤシマ海軍もまた、対天使戦闘の切り札となる兵器の開発を進めている。完全機械化兵やフライングユニット、シュネルギアといったいわゆる天使核兵器(エンゼルギア)の開発運用においては目立った実績が無いものの、対天使ミサイルの開発・運用やエーテルレーダーの性能向上、BvP504や飛影に搭載されているVTOL機構の開発など、目に見えにくいところでの貢献は計り知れない。
 また、13年の年月は旧式艦の近代化改装にも新規設計艦の建造にも充分な時間であり、イージス艦や軽空母といった合衆国の技術をも取り込んだ艦艇が正式配備され始めるのもこの時期である。
 もちろん、結界外部との交易を担った“メーヴェ”の活躍を忘れることは出来ない。特にアペルギア搭載型の呪法護衛船の運用は、陸軍だけでなく統一帝国軍の協力も得なければできないことであり、ヤシマ=統一帝国軍全体の連携を深める嚆矢ともなった。
(これも余談だが、瑞穂基地の運営に際し、実質上の司令官であるヴィヴリオ大佐は、メーヴェの根拠地である出雲基地のそれを大いに参考にした可能性もある)

■ヤシマ海軍の現在
 開戦直前のヤシマ海軍正規艦隊の状況については、次のとおり。
 編制には巡洋艦、駆逐艦、輸送艦、強襲揚陸艦など通常の海上戦力だけでなく、部隊によっては潜水艦や航空隊、軽空母、海兵隊なども含まれている。
 もちろんこれ自体、あることないこと想像の産物だが、特に開戦後〜に続く部分は「この」瑞穂基地の状況であり、実際どうなのかはまた別問題。
 
第一艦隊
 ヤシマ北方、神威方面海域の守備艦隊。
 統一帝国滅亡後、“連邦”経由で脱出する敗残兵らをウラジオストックなどから搬送した護衛部隊を母体とし、現在でも高い練度と良好な装備を維持している。
 40年戦役から鎖国時代、そして現在に至るまで樺太や千島列島経由での亡命、密入国者対策を一手に預かる精鋭でもあり、この方面での仕事も完璧に近いという評価を確立した。
 現在の艦隊司令は40年戦役末期にエーリッヒ・ハルトマンと親交のあった人物で、機会があればの話だが、瑞穂基地の面々には何かと協力してくれる。
 開戦後も大きな戦いは経験せず戦力を保持しているが、第二艦隊の実質的な解体に伴い、東北方面海域まで守備範囲が広がった。
 旗艦は長門級ミサイル巡洋艦“五稜”。
 
第二艦隊
 政宗を母港とする、東北方面海域の守備艦隊。
 比較的にしても直接的、間接的な脅威が他方面よりは薄いと考えられているせいか、新兵が優先的に配属される傾向にあるため、政宗に駐留する第一、第二戦隊及び神守島守備隊といった主力部隊以外は予備兵力的な性格が強い。
 開戦直後、ギガプラント2号棟の失陥を受けて合衆国十字軍の進行を阻止するべく編成されたヤシマ海軍聯合艦隊に、第二艦隊からもこれら主力部隊が後詰めとして参加。御神原沖海戦で壊滅した第三、第四艦隊の残存戦力の回収に貢献した。
 ――が、これが仇になり、この部隊はそのまま三笠港に留め置かれてしまう。後に残されたのは中軽量の駆逐艦と沿岸警備艇に、新兵中心の熟練度の低い部隊という有り様となったため、第一艦隊が守備範囲を広げる形で第二艦隊の残留部隊を指揮系統に編入。実質的に同艦隊は解体状態となった。
 なお、神守島も主戦力が引き抜かれたままとなっており、八門結界の維持にも微妙な影響を与えている。

 旗艦は長門級ミサイル巡洋艦“陸奥”。だが、現在は第三、第四艦隊の残存戦力を加えた三笠艦隊の旗艦扱い。
 
第三艦隊
 帝都湾に本拠を置く近衛艦隊を含む、ヤシマ海軍最強を謳われる実戦部隊。担当海域は関東近海のみと比較的狭く見えるが、これは天津島や御神原諸島、太平洋上のギガプラント2号棟など離島部も守備範囲に含まれるためである。
 主だった将官はいずれも1986年、結界完成直前に戦われた房総沖防衛戦の経験者で占められ、さらに帝都湾の近衛艦隊、三笠港を母港とする主戦隊、及び離島部の警護艦隊いずれもが熟練した乗員と最新鋭の装備を持っており、来たるべき開戦に備えて他艦隊と何度も合同演習を行なうなど、まさに最精鋭の名に恥じない艦隊であった。
 だが、開戦後、第三艦隊の運命は悲惨の一途を辿ったと言って良いだろう。
 帝都湾に駐留していた近衛艦隊は、直撃した呪法弾道ミサイルにより一瞬にして消滅。また島嶼部の警護艦隊及びギガプラント2号棟の防衛艦隊(空母を含む相当な戦力を保持していたと云われる)も、圧倒的な物量で攻め寄せるホイシュレッケに喰われ、僅か数隻の駆逐艦を残して壊滅した。
 この事態に、残された三笠港の第三艦隊主力は迫り来る合衆国十字軍の侵攻を阻止すべく出撃を決定。第二、第四艦隊の主戦力を加えた聯合艦隊を編成し、御神原諸島沖にて合衆国十字軍第7艦隊と激突した。
 この一大海戦に於いて、大規模戦闘においても天使兵に対する完全機械化兵及びフライングユニットの有効性が大いに実証され、またエース級のパイロットならば能天使級天使兵数体を撃破して生還しうるなど、通常戦力の向上も確認されたが、引き換えに第三、第四艦隊は壊滅。合衆国十字軍第7艦隊の主力艦艇にもさほどの打撃を与えられず終わっている。
 以降、戦力の大半を喪失した第三艦隊は、同じく壊滅した第四艦隊の生き残りに第二艦隊の主力を加えて再編され、関東方面守備隊三笠艦隊となる。
 事実上、これを以って第三艦隊は消滅となった。

 長門級ミサイル巡洋艦“高天原”(2代目)は、近衛艦隊の旗艦でもある。――が、呪法弾道ミサイルの帝都直撃により消滅。主戦隊から旗艦に繰り上げとなったネームシップ“長門”(2代目)も、御神原沖海戦で撃沈されている。
 
第四艦隊
 東海道から伊勢沿岸を担当する守備艦隊。
 その配置と特性上、第三艦隊の予備部隊としての性格が強く、装備も最新鋭のものはほとんど存在していない。それを理由としてか、他艦隊との交流や合同訓練は頻繁に行なわれており、他との連携に長じた部隊と言える。
 開戦後は第三艦隊とともに聯合艦隊を編成し、合衆国十字軍第7艦隊の侵攻を食い止めるべく御神原沖海戦に臨むが、その顛末は上記で述べたとおり。参戦した第四艦隊の残存艦艇は三笠艦隊に、参戦しなかった艦艇は第五艦隊の指揮下に組み込まれており、事実上、第四艦隊も消滅している。
 旗艦は、大和級改航空戦艦“尾張”。御神原沖海戦時、この艦は撤退する味方の盾となって最後まで戦場に留まり、主天使級天使兵の突撃を受けもろともに爆沈したという。
 
第五艦隊
 紀伊半島は熊野方面から四国南岸を担当する守備艦隊。
 第四艦隊と同じく予備部隊としての性格が強く、艦隊の半分近くが40年戦役で寧艦状態にあった巡洋艦や、南方諸島から引き上げてきた駆逐艦などを近代化改装したものであり、新造艦は第四艦隊と同じく少ない。
 これは新造艦が他の艦隊に優先配備された結果だが、第五艦隊は主力となる艦船だけでなく、乗組員も40年戦役末期まで南方諸島などを転戦していた猛者たちを引き継いだため、その士気と練度は高レベルを保っていると言われている。
 開戦後、主力の抜けた第三、第四艦隊の代わりとして、四国から伊豆半島沖までをフォローする体制を組むことで聯合艦隊の御神原沖海戦を支援するが、聯合艦隊の壊滅に伴い、なし崩し的に第四艦隊の残留部隊を編入した、ヤシマ南岸防衛の主戦力となってしまった。
 その後、御神原諸島に封印された合衆国十字軍第7艦隊に代わり進軍してきた十字軍第3艦隊に対処するため、三笠艦隊、第六艦隊と共に天津島沖海戦を戦うが、やはり天使兵相手に甚大な損害を出し、旗艦以下多数が撃沈されてしまう。
 これによって第五艦隊も最低限の沿岸警備能力を残し事実上解体。ヤシマ本土の太平洋ベルト沿岸を防衛する戦力は、開戦前の4個艦隊から1個艦隊半程度まで落ち込んでしまい、制海権確保に多大な問題を生じることとなった。

 旗艦は、大和級改航空戦艦“紀伊”。だが、この艦は天津島沖海戦の直前に神狩級ミサイル駆逐艦“弓羅”に交代し、V機関を外された上で九鬼海軍基地の防空砲台に転用されている。なお、“弓羅”は初陣となった天津島沖海戦で撃沈。
 
第六艦隊
 瀬戸内海を根拠地とする実験艦隊。
 他の艦隊は大なり小なり、現実の防衛線に直面する実戦部隊だが、この艦隊はそれらに人材を供給する教導艦隊を麾下に持つと共に、最新鋭の装備の評価や運用方法の研究確立をも担う、ヤシマ海軍の実験部隊としての側面も持つ。
 ことに美田島基地を根拠地とする教導艦隊は、対天使戦術の研究に余念が無く、完全機械化兵やシュネルギアとも連携した立体的な海戦さえ念頭に置いているとも言われる。
 また、第八艦隊及び出雲基地の後背地に置かれた艦隊でもあり、人材交流や人事異動も盛ん。特に消耗の激しい“メーヴェ”に所属する人員の休養や補充について大きな役割を持っている。
 その地形特性上、瀬戸内海一帯は巨大な造船工場であり、格好の訓練場でもあることから装備の質も抜きん出ており、教導艦隊の存在とも相まってヤシマ海軍最強の遊撃戦力としての側面も持つ、エリート部隊である。
 開戦後は四国を放棄した徹底的な焦土作戦に深く関わり、西ヤシマ防衛体制の再構築に貢献。また天津島沖海戦に臨んでは、三笠艦隊、第五艦隊と共に参戦。事前にシュネルギアとの合同演習を実施していたこともあってか、こちらは比較的軽微な損害で合衆国十字軍第3艦隊を撃破。さらに御神原諸島での封印が解けた十字軍第7艦隊との決戦(御神原諸島封滅戦)にも主戦力として参戦し、シュネルギア隊をよく支援して勝利に貢献している。
 実質上、ヤシマ海軍に残された最後の海上機動戦力であり、来たるべき合衆国十字軍第13艦隊との決戦に投入されることも間違いの無い部隊である。

 旗艦は、ヤシマ海軍再生の象徴ともされる大和級のネームシップ“大和”。
 
第七艦隊
 諸般の事情により欠番。
 
第八艦隊
 玄界灘からヤシマ海西部を担当する守備艦隊。
 母港は咲守市博多港だが、“メーヴェ”として知られる呪法船団護衛部隊が所属する出雲基地も所管している。その性質上、鎖国時期に対天使戦闘の実戦経験を積んできた唯一の部隊であり、また最も消耗が激しかった部隊でもある。
 ことに“メーヴェ”及び出雲基地の楽観的あるいは破天荒な空気が影響しているのか、艦隊の雰囲気も真剣ではあるが悲壮感とは縁遠い。これは後背地に置かれ、互いを補完しあう関係の第六艦隊ばかりか、遠く瑞穂基地にまでアクシア・リヒトヴィッツを主犯として影響を及ぼしている。
 瑞穂基地の首魁たるヴィヴリオ大佐もこれを黙認しているフシがあるが、統一帝国軍と良好な関係を保ち、また合同作戦が日常的なこの艦隊は、シュネルギア隊と最も相性の良い部隊のひとつと言えるだろう。
 また、この艦隊は所属艦のほとんどがアクシアやフリューゲルに危機を救われた経験があるため、瑞穂基地やシュネルギア隊には非常に好意的である。
 開戦後も以前と変わらず呪法船団護衛任務に傾注せざるを得ないため、大規模な戦闘には一切参加していない。合衆国十字軍の海上封鎖が、第3、第7艦隊の敗北によって緩んだため、以前よりも損耗率は落ちている。しかし、その分規律が緩んで情報漏えいやスパイの侵入可能性も上がっており、司令部は軍規の引き締めに余念が無い。(これには、同じく“メーヴェ”に所属していた荒崎憲吾が“天使派”テロリストと成り果てたことも影響しているとされる)。
 旗艦は雲海級駆逐艦“朝霧”。これは第八艦隊が艦隊行動よりも沿岸警備と呪法船団の護衛に特化しており、ミサイル巡洋艦が重要視されていないため。もちろん旗艦機能を付加するための改装は施されている。
 
第九艦隊
 北陸方面海域を担当する守備艦隊。
 常在戦場とも云える第八艦隊とは異なり、ヤシマ海沿岸部では大陸から最も遠い海域であるためか、ヤシマ海軍の正規艦隊でも抜きん出て影が薄い。一応、ヤシマ海に浮かぶギガプラント1号棟の防衛も担当しているはずなのだが、ある意味いちばん“緩んでいる”部隊であり、将兵や装備の質も、お世辞にも上々とは言い難い――とされる。
 その証左としてまことしやかに囁かれるのが、この海域が大陸からのスパイなどの流入経路になっており、かつヤシマからも“天使同盟”諸国への逃亡経路として使われている、という噂である。
 事実、テロ未遂事件を起こした“天使派”を追っていたヤシマ陸軍情報部が、第九艦隊の母港である越後港を最後に、彼らの足取りを掴めなくなる……ということがよくあるらしい。その後、大陸で密かに維持されているヤシマ=統一帝国の情報網にさえ足音が聞こえないと言われるが、確認しようも無いのが現状である。
 なお、1993年にヤシマ海上で確認された超巨大天使反応の迎撃に出た、フリューゲル・ズィーガー所属の第21飛行中隊の支援任務に当たったのは第八艦隊ではなく、この第九艦隊だった。もちろん1分で統一帝国空軍最強を謳われた中隊を全滅させるような敵には手出しせず、交戦記録も残していないが、ただ1人の生存者はきちんと救出している。
 開戦後も結界に綻びが無く、主戦場からも遠いため、艦隊の状況はさほど変化が見られない。元々余剰艦も少ない上、これでもヤシマ海に残されたギガプラント1号棟の防衛戦力であり、他の海域への派遣は困難との判断……らしい。
 旗艦は神狩級ミサイル駆逐艦“川中島”。
 
第十艦隊
 九州南部海域、及び奄美諸島を担当する守備艦隊。
 この艦隊は、良くも悪くもヤシマ海軍の正規艦隊では最も平均的とされる部隊であり、旧式艦と新鋭艦が仲良く舳先を並べる姿もよく見かける。
 開戦直後は、それゆえか呪法弾道ミサイルの着弾後、かなりの大混乱に陥った。もっとも、艦艇への被害はそれほどでも無かったため、当初の混乱が収まって以降は九州方面に展開するヤシマ陸軍第四軍と連携し、合衆国十字軍の上陸部隊と隼雄方面で激戦を繰り広げている。もちろん被害も軽くは無いが、第六、第十一艦隊の支援に加え、何故かこちらの戦線では強力な天使兵があまり出現しなかったことも併せて、どうにか艦隊としての体裁は保っている模様。
 御神原諸島封滅戦後、隼雄方面の一大反抗作戦にも全力参加。かなりの損害を出したが、合衆国十字軍の上陸部隊を撤退させることに成功した。現状、ヤシマ本土の太平洋ベルト沿岸を防衛する海上戦力のうち、艦隊としての戦力を保っているのは第十艦隊のみである。

 旗艦は神狩級ミサイル駆逐艦“阿蘇”。
 
第十一艦隊
 琉球方面海域を担当する守備艦隊。
 ヤシマ海軍の正規艦隊ではいちばん規模が小さく、第三艦隊の1/3程度の艦船で構成されている。だが、アジアの龍脈が結節する霊的要地たる琉球に駐留する艦隊として、その呪法戦力は他を圧倒しており、対天使戦闘でもかなりの存在感を示すのではとも言われている。
 また、第八艦隊の“メーヴェ”ほどではないが、台湾海峡方面や南方諸島と八門結界越しの小規模な交流を行なっており、その存在感は意外に大きい。
 開戦後は、結界が無事だったこともあり、従前の任務に加えて隼雄方面で戦う第十艦隊を直接、間接的に支援。戦線の維持と勝利に影ながら大いに貢献した。
 旗艦は神狩級ミサイル駆逐艦のネームシップ“神狩”。このイージス艦が最初に配備された艦隊もここであり、その重要性が伺える。
 
統一帝国潜水艦隊
 統一帝国から脱出してきたり、“第三の喇叭”後も世界の海を彷徨った挙句に流れ着いたりといったUボートの群れを、そのまま所管している艦隊。
 特に旗艦や母港が決まっているわけではなく、各艦長の判断で独自に正規艦隊に補給を求め、また作戦行動を行なうことが認められている。――その性質上、登録されたUボートには呪法船団と同じく八門結界を通過できる能力が付与されたと推測されるが、それらはすべからく拿捕の危地にあっては自爆を義務付けられているだろう。
 事実、ヤシマ鎖国後に“天使同盟”所属艦と交戦し、敗北したUボートは尽く自沈するとは、これらの国の海軍でまことしやかに囁かれている噂である。
 なお、ヤシマ側の記録で確認できるUボートは現在22隻を数えているが、これ以外にも秘匿されている艦、八門結界は越えずに支援のみを受けて七つの海を巡り続けている艦などが存在すると思われる。
 

記:2007.10.04



 大和級のうち、ネームシップである“大和”は合衆国西海岸から引き上げた後、40年戦役の期間中は瀬戸内海で寧艦状態にあった。鎖国期に大改装が行なわれ、今ならば天使兵相手でも戦える――とされる。現在は第六艦隊の旗艦だが、実質的にお飾りであり、帝族関係者等のコネで動員されることもあるらしい。
 弐番艦“武蔵”は南方諸島に置かれたままであったため40年戦役を継戦せざるを得ず、1960年代にレイテ沖で撃破された。余談だが、初代長門も同様に40年戦役中に戦没している。
 参番艦“信濃”は空母に改装されていたが、40年戦役前夜、天使核と陰陽術により強力なステルス能力を付与する実験に失敗し、伊豆半島沖で行方不明。
 四番艦“紀伊”及び五番艦“尾張”は、それぞれ佐世保と横須賀で建造中に“高天原”級戦艦の建艦が開始となり、一時放置される。その後、“高天原”級戦艦が全滅したため急遽航空戦艦として改造され、本土防衛戦力とされた。結局、40年戦役での実戦参加はないままに終わり、“大和”と同じく鎖国期間中に近代化改装を実施。それぞれ第五、第四艦隊の旗艦となる。
 なお、ヤシマ海軍は戦訓から対天使戦闘に小回りの効かない大戦艦は向かないと判断したため、これ以降は大和級戦艦も建造されなかった。“大和”が第六艦隊で実質上お飾り扱いされているのも、“尾張”撃沈後に“紀伊”が砲台転用されたのも、対天使戦闘での実用性が疑問視されている証左とする声が多い。
(――もっとも、秘密裏に対天使兵器を満載した大和級新造艦があるという、浪漫に満ちた噂が絶えたことも無いのだが)

■地図作成:相馬斉遠@エンゼルギア研究所
■地図素材:株式会社地理情報開発(フリー素材使用)
■参考資料:「エンゼルギア 天使大戦TRPG」p130より


エンゼルギア研究所/管理人:相馬斉遠