左の手首にかけておいた傘が、
なんだか鬱陶しくなって、

植え込みに、放り投げた、

軽くなった左腕を右手でさすりながら、

意識が遠のいてしまったようで、
足下に目線を落とす。

足下は、アスファルトとコンクリートの境目で、
盛り上がったアスファルトが、
コンクリートに浸食しようとしている、

たいして大きくもなく、無名の公園の
はずれの植え込みが、

降り止んだ雨の実績をいまだたたえる。

宗教団体の荘厳そうに作られた建物が、
いささかも心に訴えるものがなく、

湿度の高い空気がはなから、
口を経由せずに肺に送り込まれる。

ねばついた口の中が、
いぜんとして、気持ちを滞留させ、

眉間を人差し指でなぞっても、
心には、何も届かない。

あたりの空気と、
一度も違わないような生温かな風が、
まったく、気持ちに絡んでこない、

目の前にある歩道橋にあがれば、
何かが見えるのだろうか。

何も見えないのだろうか。

コートを腕にかけたい。