エンゼルギア研究所
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Last Update/2012.02.05


◇ 第72話『はじまりの、ことば』◇

「……返せって言っても返したげないよ?」
――大西藤花

 

今回予告/ハンドアウト/自己紹介/シーン1//
Setup-Opening/Motion-Emotion/Climax-Ending


今回予告

「大丈夫だいじょーぶ、あとで追いつくから」

1997年7月某日、荒天。
ヤシマ西岸、呪法船団航路にて――。

「本土帰ったらデートだかんねっ。て、あ、照れてる?」

天使兵と遭遇。
損害は以下の通り。
護衛部隊、撃墜、作戦中行方不明多数。

「それじゃ、ちょっといってきます」

及び、試作型機動兵器、及び乗員一名。

――あれから、幾らか時間が流れた。
早く、早く、何もかもを押し流すほど早く。

嵐の中で。
彼女の思いは、まだ、生きているのだろうか。
闇の中。
荒れ狂う水面を、無慈悲なる神霊が跳梁せるとも。

 エンゼルギア 天使大戦TRPG 第72話
 『はじまりの、ことば』

「――光、あれ」


シナリオハンドアウト
▼PC1 木路 日影  指揮官
 ダーザイン:【大西藤花からの純愛】
 陸軍研究所所属。メーヴェへと派遣された時、僅か十三歳。"天才"と呼ばれた少女。試作人間戦車を駆り、不安定な機体をものともせず、エース級の活躍を見せつける。
 ただ彼女は、その一点を除けば、少々マセてはいたものの、普通の女の子であった。それは、貴方がだれよりよく知っている。かつても、そしておそらく、これからも。
 1997年、ヤシマ近海。貴方は彼女に命を救われ――そして、彼女を喪ったのだ。

▼PC2 橘花9−2  完全機械化兵
 ダーザイン:【自己からの懐旧】
 調整槽の中でまどろんでいたころから、今まで。浮かんでは消えていく夢が、ある。
 自分でない自分が、ここでないどこかで、見知らぬ誰かと親しげに話している光景。
 自分でない自分が、ここでないどこかで、見知らぬ誰かのために、戦っている光景。
 幾度も幾度も、戦いとささやかな日常とを繰り返すうちに、それは只の夢になった。
 ……けれど、作られたばかりの胸にあったあの暖かさは、只の幻だったのだろうか。

▼PC3 内海 衛至  情報将校
 ダーザイン:【謎の嵐からの脅威】
 任務の一環で呪法船団に乗り組んでいた貴方は、八門結界影響下で嵐に見舞われた。そう、不自然な話ではない――船団の数隻が、いきなり動力を喪いさえしなければ。
 結界による動力封鎖と強風に、追跡機の一機も出せず。停止した船はそのまま消失。帰り着いた貴方を待っていたのは、遺失した呪法船の捜索と、原因究明の任だった。


自己紹介
日影:「木路日影。ヤシマ陸軍指揮官、階級は少佐だ」
日影:「いいか、初めに言っておく。貴様らには死ぬ自由は与えん」
日影:「『お国のために命を駆けて』? 『命に代えてもこの場は守る』? 下らん、戯言だ。命は替えがきかん。命を捨てて事を成そうなど臆病者の言訳だ」
日影:「……だから、貴様らは死なせん。明日へ命を繋ぐ事ほど、大事なことなどありましないのだからな」
日影:体中に傷を負い、片手もまた鋼へと置き換えている青年。
日影:苛烈な性格で、誰に対しても厳しい態度で臨むが、それは「誰にも死んで欲しくない」ということの裏返しでもあり、心根はとても優しい人物。
日影:過去はもっと朗らかで穏やかだったらしいが、現在のようになった経緯は不明。片腕を失うことになった事件が関係しているらしいが……
日影:ダーザインは【ヴィヴリオからの信頼/2】【自己からの侮辱/2】【大西藤花からの純愛/2】【橘花からの戸惑い/2】
日影:以上。今日は宜しくお願いします。

橘花:「はじめまして。私、橘花9−2と申します」
橘花:「あら、桜花姉さまをご存知なんですか? はい、私は姉様のデータを反映された機体、妹なんです」
橘花:「ふつつか者ですが、どうぞお見知りおき下さいな」
橘花:「これでも、多少はお役に立つんですよ?」
橘花:ヤシマ人風の外見をもつ、第九世代機械化兵。
橘花:#ダーザインは【小隊からの畏怖/2】【自己からの執着/2】【内海からの有為/2】。以上(オーバー)!

内海:「俺はヤシマ陸軍大尉。内海衛至だ」
内海:「ん? メーヴェ時代の話? そんな昔のことは忘れたなぁ」(へらっ)
内海:「今はいちおう、シュネルギア第2小隊の指揮を預かっている。小さい部隊だが、実力は兼ね備えてるつもりだよ」
内海:「ま、何より生き残ることが肝心さ。そのために、君にも協力してもらいたいところだね。……やってくれると期待してるよ?」
内海:初期ダーザインは【ヤシマからの信頼/2】【アクシアからの友情/2】【維馬篭からの有為/2】
内海:シナリオダーザインは【謎の嵐からの脅威/2】
内海:PC間ダーザインは【木路日影からの苛立ち/2】
内海:以上(オーバー)!


■オープニングフェイズ/シーン1 「一九九七年、七月二十日。晴天」
 シーンPC:日影。

GM:コンロン東岸を発った呪法船団は、ヤシマへの帰途にあった。
GM:どうにか稼動段階まで持ち込んだ試作兵器――“シュネルギア:アルファ”を伴って乗り組むのも、これで何度目になるだろう。
GM:それと同じ回数だけ、“彼女”ともまた乗り合わせている計算になるわけだが。
GM:アルファがまだ飛ばなかった頃から、陸での調整中も顔を突き合わせているのだから、この付き合いは大概長い。

GM/藤花:「いっやー、すごいいい天気だね!」
GM:――その彼女ときた日は、上部甲板の手すりに腰掛けて、吹く潮風に目を細めつつ、そんなことを抜かしているのである。
GM:パンツルックだから何かと心配はないにせよ、傍から見ていて危なっかしい。
日影:「ああ。お前の脳味噌と良い勝負だな」仏頂面で、一言。
GM/藤花:「あー、木路ひっどー! 私ののーみそが風洞実験器みたいな言い方に聞こえるー!」
日影:「実際そうだろう。普段はまだしも、毎度毎度無茶をして俺の肝を冷やしてくれている行動を生み出すのはこの頭だろう?」こんこんと、藤花の頭をノックして
GM/藤花:「うー」むくれる。
日影:「それと、手摺に座るな。危なっかしい」わきの下に手を入れてひょいと持ち上げ、おろす。
GM/藤花:「わ、いや、大丈夫だってばっ! そうじゃなきゃ、あの子なんて飛ばしてらんないもん」
GM:じたじたじた、と体をゆすって、強引に脱出。軽やかに着地。
日影:「お前に海の藻屑になられても困るからな。念には念をだ」ぐりぐりとまだ「生身」の右腕で頭を撫でる
GM/藤花:「む」猫か何かのように目を細める。
GM/藤花:「……それにしてもさ、よーやくここまで来たんだよね、……あの子も」
GM:一隻の甲板を占拠する格納ブロック――といっても、くぼんだ所をシートで隠しているだけだ――を見て、なんだか感慨深げに言う。
GM:最終的に求められるスペックには及ばないとはいえ、天使と戦うための牙――高出力型V機関と、S.Q.U.I.Dの改良の基礎は完成した。
日影:「……ああ、そうだな。これでようやく、だ。後は、もう少し技術が進んでくれれば」
GM/藤花:「この子の後継機ができたら、あいつらにも、負けないでいられるんだよね」
GM/藤花:「……ねえ、そうだよね、木路?」
GM:“実戦経験”のためにコンロンを転戦した。その間に見た光景は――結界に覆われたヤシマには縁の遠いものだ。
GM:天使兵撃墜スコア11、という常識外の“天才”とはいえ、それに慣れられたかといえば。
日影:「当然だ。俺達が今までどれだけ修羅場をくぐったと思っている?」
GM/藤花:「ええと、十一よりは多かったかなあ? 今回で……」ひーふーみー、と指を折って。
日影:「誇れ。お前は今、俺達の、いや、ヤシマの未来を作っている」
GM/藤花:「もっちろん! 私、自分の生き方誇ってないことなんてないもんね。たぶんだけど」えへん、とばかりに胸を張る。
日影:「よろしい。……そうだな、藤花、手を出せ」
GM/藤花:「?」
GM:お手、というカンジで、ひょい、と手を出す。
日影:その手に、刀の柄尻に結んでいたお守りをぽんと乗せる
GM/藤花:「え、これ、確かなんか大事なものだとか、木路言ってなかったっけ?」
日影:「死んだ母さんがくれたお守りだ。ものすごく大事なものだがお前にやろう」
GM/藤花:「……返せって言っても返したげないよ?」
日影:「返せなどとは言わん。お前一人死地に追いやって安全なところで指揮だけしている俺には不要なものだ」
日影:「せめて、このくらいはな」照れてそっぽ向き。
GM/藤花:「そんなことないと思うんだけどなー。ヤシマから出てくるだけで十分さー。……およ?」
GM:なんか、ちょっと人の悪そうな感じに笑って、
GM/藤花:「……ねーねー木路ー」
日影:「どうした」
GM/藤花:「ヤシマに戻ったらさ、ちょっと休暇もらえるとか言ってたよね? どっか、山の上にでも涼みに行かない? 夏だし」
日影:「山か……悪くないな。良いだろう。戻ったら行くとしようか、藤花」
GM/藤花:「……ちぇ、もう赤くないや。大人ってやだなー」ぷう。
GM/藤花:「でも、約束だからね。絶対だよ。ヤシマ男児に二言はないよね?」
GM:ひょこん、と小指を突き出したにぎりこぶし。
日影:「無い。男に、いや、俺に二言は無い」同じように、小指を出して、絡ませる。
GM/藤花:「よろしい。信じちゃうよ」
GM:青空を背景に満面の笑顔――
GM:――観ることが出来たのは、その日が最後だった。

GM:一九九七年、七月二十一日。――嵐。
GM:ヤシマ沖。八門結界影響圏より数カイリ地点。
GM:呪法船団旗艦艦橋。

GM:風鳴。
GM:雨音。
GM:波濤。
GM:雷鳴。

GM:爆音。

GM:serra,serra,serra,serra――。

GM:爆音。

GM:木の葉のように揺らぐ木路の目の前の甲板に、聖光の至近弾が突き刺さる。
日影:「ちぃ、見つかったか! 総員持ち場に着け! 戦闘要員は順次出撃!」
日影:外部の轟音に負けじと声を張りあげる
GM/管制官:「りょうか――」
GM:通信機から飛び込んでくる悲鳴。怒号。
GM/メーヴェ隊員:『クソ、機関が――、整備のヤツラ何を、うわあああああああっ!』
GM:爆音。
GM/管制官:「――敵天使兵のエーテル係数、なおも上昇中! 実体化止まりません……さ、3000を突破!」
GM:雷鳴に等しい聖光を撒き散らし、暴風に等しい衝撃波を撒き散らし――
GM:悪夢のように螺旋くれた白い巨影が、荒れ狂う黒い水面の上、漆黒の暗雲の下に現れ出でようとしていた。
GM:そう、出でようとしていた――のだ。
GM:メーヴェの精鋭を次々に屠り、大した打撃も受けぬ体でありながら、それは成長していた。
日影:「くっ……藤花少尉を呼べ! 出番のようだ!」
GM/藤花:『待ぁってましたっ!』
GM:こんなときでも無用に元気な声が――空電ノイズ交じりの通信から飛び込んでくる。
日影:「いいか、時間を稼ぐだけで良い! 適当に引き離したら帰還しろ! あと少しでヤシマだ、こんな所で落とされるな!」
GM:雷光で明滅する視界の向こう、覆いを払って、まだ不恰好な白い機体が立ち上がる。
GM/藤花:『大丈夫だいじょーぶ、あとで追いつくから。ぱぱーっと行って、片付けて帰るからさ!』
GM/藤花:『私と木路で育てたアルファだもん、あんなワケのわかんない安っぽいのになんて負けないって! 絶対!』
日影:「ああ、期待しているぞ、少尉」
GM/藤花:『お任せあれっ。……ナビシートが空っぽなのは、ちょーっと寂しいけどねー』
GM/藤花:『そ、れ、と。本土帰ったらデートだかんね。忘れないでよ?』
日影:「ばっ、馬鹿野郎! 時と場所を考えろ!」真っ赤になって怒鳴り返す。
GM/藤花:『あ、照れてる照れてる?』
GM:空電に紛れて聞こえないが、たぶん笑っている。
GM:――至近弾。
GM:爆音。
日影:「〜〜〜〜〜〜っ! とにかく! さっさと行って片付けて来い!」
GM/藤花:『ん、了解っ』
GM/藤花:『――じゃ、行ってきます!』
GM:離床。アペルギアの跳躍とは違う“飛翔”の機動を描いて、嵐の空へ、アルファが舞い上がる。
日影:「ああ、行って来い―――藤花」階級ではなく、名前で呼んで。

GM:一九九七年七月二十一日の木路日影の記憶は、この後五分ほどで途切れる。次に繋がるのは、翌々日。ヤシマ本土の軍病院での事である。
GM:艦橋への聖光の直撃弾。生存は奇跡的であったという。
GM:なお、この交戦による呪法船団への被害は、撃沈1、メーヴェ隊員に死傷者多数。
GM:ほか、試作型兵器一機、及びその乗員一名。
日影:「戻れと―――必ず戻れと、言っただろうが……!」満身創痍、利き腕すら失った重傷で、そう吼える。
GM:シーンエンド。


■オープニングフェイズ/シーン2 「一九九九年。ヤシマ西岸、八門結界効果圏内。呪法船団航路」
 シーンPC:内海。

GM:圧迫感を感じるほど青い空、ごく珍しく天気晴朗にして波穏やかなる旅路――
GM:であったのは、つい三十分ほど前までのことである。

GM:黒雲、暴風、激浪。耳鳴りがするほどの低気圧。
GM:やや速度に寄っているとはいえ、ヤシマの生命線として惜しみなく技術を投入された筈の呪法船が、木の葉のように揺れている。
内海:「――やれやれ、こりゃまた胡乱だね」
内海:下手な遊園地のアトラクションもかくや、という振動の中で平然と立っている。
GM/船員:「つーか、慣れてますなあ。陸部のかたと違いましたっけか? ……わあっ!」
内海:「気をつけたまえよー艦長。2年前、――“シュネルギア:アルファ”喪失時も、こんな感じに天気が推移したって聞いてるからね」
内海:ふっふっふ、と意地悪く軽い脅しを(笑)。
GM/船員:「話は聞いとりますが……。しかし、アレは確か天使兵がでたからだと」
GM:艦橋の電灯が明滅する。それどころか計器やら探知機類の画面まで。
GM/船員:「っつ、V機関不調ッス! 出力がオカシくなってるようで」
内海:「そういうことさ――。神の奇跡は時として天候すら変えうる……って、おいおい」
GM/船長:「機関部は何をやっとる! はよ呼び出せい!」
GM/船員:「は、いま木下が向かっとりますっ」
GM/船長:「向かっとるだと?」
GM/船員:「内線もどうも調子がオカシくなっとりまして、ノイズで潰れかけとる無線よりはマシですが」
GM/船長:「ええい、どうなっとるんだ、八門結界が誤動作でも起こしよったのかっ!」
内海:「艦長。船団周囲のエーテル濃度の再チェックを」
内海:冷静に告げる。
GM/船長:「……む? うむ、了解した、内海大尉。おい、霊圧系と霊探! 生きとるか!」
内海:「あまりにも符合しすぎてるんだなぁ、2年前の記録と――。たぶん“出る”よ、亡霊が」(肩を竦める)
GM:ひときわ激しい雷鳴が轟く。
GM:浮かび上がった僚船のシルエットがひとつ、ふたつ、明らかに異様な方向へ流されていく。
GM/船員:「霊圧計異常……ぶっ壊れたか? おいちょっと待て、“あさしお”、“なみかぜ”、何やってる!」
GM:猛烈な振れ幅で上下へ揺れている霊圧計の針――確かに見た限り、故障か何かとしか思えない。
内海:「――まずいな」
GM/船員:「“あさしお”、“なみかぜ”通信途絶! ノイズも帰りません。こりゃ……停まったか? まさか?」
内海:「恐らく、V機関そのものに干渉を受けたんだろう。――艦長、この船のV機関を緊急停止」
内海:「連中に捕まる前に、こちらから嵐に紛れる」
GM/船長:「……是非もないな。木下ァまだか! はよ通常機関の立ち上げ急がせろ!」
内海:「停止した僚艦の位置は分かるか?」>船員
GM/船員:「いや、……あかんです、電波と霊波の状態がイカれてる上に、この大時化じゃあ、どこへ流されるか」
内海:「そうか」(僅かに黙祷)「敵に鹵獲される前に、“処置”を実行できていることを祈るしかないね」
GM:因みに、“あさしお”の腹の中には、大陸から輸送されてきた"パーツ"が数点収められたままであり――。
内海:なにぃ(笑)<パーツ
内海:そりゃあまずいな……。GM、ひとつ要望が。
GM:何ですかな?
内海:ん、俺のアペルギアが稼動するなら、停止した僚艦を撃沈しに行きたいのだが(をい)。
内海:呪法船の機密漏れもまずいし、海に沈んだパーツなど後で回収すればいい。
内海:(ついでに、木路との喧嘩のネタを仕込みたい(笑))
GM:ヤシマの誇る八門結界を侮っちゃいけません。向こう数カイリじゃ、呪法船以外の機関なんざ火も入りませんぜ。(笑)
内海:だよねえ(笑)。
GM:かすかな振動が伝わる。結界内では滅多に立ち上がらぬ、通常機関の駆動音。
GM/船長:「……一隻でも多い本土帰還を優先する。通信、全力でがなれい!」
内海:「やれやれ、助かったか。……しかし、妙だね」
内海:艦橋から、嵐の向こう側を見通すように。
GM:――天使も飛べぬ筈の結界の空がある。
内海:「呪法船は機関が完全停止すれば自爆するように呪紋が編まれている。――それをわざわざ停めたということは」
内海:やはり狙いは、自爆したとしてもまず壊れないブロックに収められているであろう“パーツ”だろうか。
内海:と、推測しつつ。
GM:――本土帰還後、ろくに陸へ留まる暇もなく、遺失船の捜索命令が下った。
GM:シーンエンド。


■オープニングフェイズ/シーン3 「夢を見る」
 シーンPC:橘花9−2。

GM:培養層の中でまどろんでいたころから、見る夢がある。

GM:広大な、恐らくはヤシマではない大地の空で、強壮な天使と戦っている。
GM:不調を訴えるV機関を庇いながら、押し寄せる融合天使を阻止しようと必死になっている。
GM:嵐の中、絶望的な戦力差で戦いを挑み――結果は思い出せない。

GM:常に傍らにあるのは、白い人間戦車だ。

GM:シュネルギア開発計画に組み込まれる、その前提で作られ、刷り込まれた基礎記憶。誰かの戦闘記録。
GM:理性的に考えるならば、その一部……なのだろう。
橘花:「これは……シュネルギアのパーツ、ですわよね?」
橘花:小首を傾げて“うーん”と唸る、ドレス姿の完機ちゃん。
GM:言ってしまえば、ひどく初歩的な――特異な進化を遂げた現行のシュネルギアのものとは、普通過ぎるという点で明らかに違うが、そうだ。<シュネルギアの
GM:記憶をたどるたびに、少しずつ姿を変えていく。何の意味なのかと、夢の中の自分に、まさか聞くこともできない。
GM:発展の歴史を記憶に打ち込んであるのだ――と、ここまでならまだ、納得できないこともない。
GM:けれど。
GM:紺碧の空と紺碧の海の狭間を、戦うでもなく、胸を躍らせて飛ぶ感覚は。
GM:聖光で灼き払われた集落に、黒焦げのぬいぐるみを見つけて、頬に伝った涙の冷たさは。
GM:頭をやや乱暴に撫でる、暖かくて大きな掌の感触は。
GM:戦闘記録だと割り切るには、余りにも――。
橘花:「……なぜ。こんなに悲しいのかしら。 こんな記憶、私には。私には……」
橘花:ある筈がない。ありえない。
橘花:自分は瑞穂基地所属・電子戦仕様完全機械化兵 橘花9−2。
橘花:起動開始年数は1997年。そう、たった2年の“人生”しか歩んでいないのだから。
橘花:「でも……この懐かしい感覚は――――」
GM:――首筋に冷たい感触、血液が加熱する感覚。静脈から叩き込まれる覚醒薬剤。
橘花:「ッ!? ――待って。待って下さい。私には、――には、確かめたい事があるの!!」
GM:無理矢理引き戻される。引き戻されて――。
GM:目を開ければ、薄暗いハンガー。見慣れた故郷の風景。
GM/技術士官:「……意識は正常かね」
橘花:「……意識レベル、身体情報、ともにグリューン……ですわ」
GM/技術士官:「よろしい。橘花9−2、貴様は本日○八○○より、木路日影少佐の指揮下に入る」
GM/技術士官:「任務は行方不明の呪法船捜索。担当区間は八門結界内海域、詳しくは資料を参照しろ」
GM/技術士官:「以上。質問は」
橘花:「了解しました。これより、任務を開始します」
GM/技術士官:「よろしい」
橘花:すちゃっと敬礼。型通りに仕込まれた、まさに“機械的”なものをしてみせる。
橘花:「……そういえば。何か大事なことを忘れているような……。いいえ、それより任務が先ですわ、先」
橘花:「忘れているということは、情報の優先順位が低いということ。大した事、無いに決まってます」
橘花:逡巡を振り切って、新たな任務へと参りましょうか。
GM:――問いかけにも定義にも、答えるものは、ない。いまのところは。
GM:シーンエンド。


Setup-Opening/Motion-Emotion/Climax-Ending

エンゼルギア研究所/管理人:相馬斉遠